閉会
「それでは、宴も酣ではございますが、最後に主催のゴリ坂様よりご挨拶をいただきます」
いつの間にかゴリラ化したホテルスタッフ(以下、ゴルフ)がステージに上がった俺の口元へ、マイクを差し出した。
「え~、まずは、作品をご投稿いただいた皆さま、そして作品をお読みいただいた皆さま、今回の企画にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございます」
ゴルフも頷きながら、俺の口元へさらにマイクを近づけてくる。
「え~、過去作品を可にしていたにもかかわらず、今回の企画のためにお時間を割いて数多くの新作を執筆していただけたこと、本当に嬉しく思います」
ゴルフは無言で、俺の口元にマイクをくっつけた。
そ……そんなに付けなくてもいいだろ。
「え~……」
俺はゴルフのほうをちらりと見るが、彼?は真顔だった。
……まあ、いいか。
「え~、今回で企画の開催は二回目となりますが、私がこうして企画を開催する理由は、たくさんの作品が、より多くの方に読まれてほしいと思っているからです」
するとゴルフは、俺の口元にマイクをさらに力強く押しつけてきた。
痛い、痛い、痛い……ちょっと待て。
何なん、ホント、何なん……。
ゴルフは俺をじっと睨みつけながら、何かを訴えている。俺は、その視線の意味を必死に読み取った。
『お前、コメディー作家なんだから、面白いこと言えよ! 何、真面目なこと言ってんだよ! ほら! “マチュピチュって、なんか可愛いですよね”とか言えよ!』
……聞こえた。
ゴルフの心の声が、はっきり聞こえた。
いや、言うの? ここで? この流れで?
「マチュピチュって、なんか可愛いですよね?」
シーン……。
誰も笑わない。会場が、完全に静まり返った。
で、ですよね~、そりゃそうだわさ……。
しかし、ゴルフは満足そうに頷き、俺の口元からマイクを離した。
え、良いの? これで良いの!?
いや、待て……最後の挨拶くらいは真面目にやらせてくれ。今のでしばらくは大丈夫なはず……。
「私自身、作品が読まれない辛さは知っています。『良い作品を投稿すれば読まれる』というのは、残念ながら間違いです。どんな作品にも、プロモーションは必要です」
すると、すかさずゴルフがマイクを俺の口元へ押しつけてきた。
い、痛い……。
さっきより強い。
何なんだ、このゴリラ……。
ゴルフは俺を睨みつけ、再び何かを訴えてくる。何なの……今度は何なの……?
『上手い例えで説明して!』
む、無茶振りですねぇ……。
「え~……」
俺は考える。
考えている間にも、ゴルフはマイクをぐいぐい押しつけてくる。
痛い痛い、マイクが俺の頬に食い込んでいる。
……考えろ。何か、それっぽい例えを。
「例えばですね。お母さんが作ったハンバーガーが、どこのお店よりも美味しかったとします」
ゴルフは動かない。
「でも、誰も食べに来ないですよね。あなたの家に……」
まだ動かない。
「そこで、あなたがクラスで、『ウチのカーちゃんが作るハンバーガー、めちゃくちゃ美味いんだぜ!』と宣伝したとします。そうすれば、クラスメートが興味を持って、食べに来てくれるかもしれません」
まだまだ動かない。
「さらに、近所のスーパーに『木村さん家のハンバーガー』という商品として並べたとしても、それだけでは、なかなか手に取ってもらえないでしょう」
ゴルフはマイクを押し付ける。
むしろ、さっきより強くなっている。
痛い、痛いよ~。
このままだと、マイクが俺の顔の一部になっちゃうよ~。そうなったら、俺の独り言がオフィス中に響き渡っちゃう。
「ケツ、痒い~」とか、言えなくなっちゃう……。
がんばれ……がんばれ、俺!!
「ケツ、痒い~」と言うために、ガンバルンバ!
「ですが、そこにポップが付いたら、どうでしょう?」
ゴルフの力が、ほんの少し緩んだ。
よし、食いついたぜ!
「『店員のイチオシ! めっちゃ美味い!』みたいなポップが付いていたら、気になって手に取ってみる人もいるはずです」
ゴルフの力が、さらに弱まる。
よし! いいぞ、俺!
イケイケ、ドンドン!!
「作品だって、それと同じです。どれだけ面白い作品でも、まず存在を知ってもらわなければ、読んでもらうことはできません」
マイクが、少し離れた。
よし! さすが、清坂、この調子だ!
「私がこうして企画を開催しているのは、そんな『読んでもらう機会』を少しでも増やしたかったからです」
俺は会場を見渡す。
「企画に参加してくださった作品を読んで、その作者様を知って、そして『この人、こんな作品も書いているんだ』と、別の作品にも興味を持ってもらえたら嬉しい。そんなきっかけを作りたくて、企画を開催しています」
だがゴルフは、さっきよりも強い力でマイクを俺の口元へ押しつけた。
「……っ!」
痛い……いだいって!
何で? 何でダメなの!?
俺、今、結構いいこと言ったよね!?
『面白いこと、言え!』
く……こいつ……、どうやら、俺を怒らせたようだな。仕方がない……、俺の最終奥義をお見舞いしてやるぜ!!
俺は両足を踏ん張り、両手の親指を立てる。
「はあああああああ、食らえ……」
そして、ゴルフに向かって、両手の人差し指を勢いよく付き出す。
「ゲッツ!!!」
シーン……。
こうして、ゴリラパーティーは幕を下ろした。
ゴリラー!!
至らぬ点も多々あったかと思いますが、作品をご投稿いだいた皆さま、作品を読んでいだけた皆さま、告知をしていただけた皆さま、この場を借りて御礼申し上げます。
本当にありがとうございます。
皆さまのおかげで、本当に楽しい一週間でした。
しばらくしてから(たぶん半年後くらい)、また違う企画を開催させていただこうと思います。
そして──
10月23日からは、しいな ここみ様の企画が始まります。そちらでお会いできるのを楽しみにしています。
サンキュー、ゴリラ!
ゴリラパーティー最高!!
ウッホ、ウッホ!




