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第5篇 「帰省」(「魔女の弟子と劣等学級」より)

「魔女の弟子と劣等学級」からの年末年始の過ごし方に関するお話です。


ある学園でのお話。

I 組(劣等学級)は、不合格者を出さないという学園のウリによりつくられた不遇なクラス。学園は生徒が根を上げて退学することを望んでいる。よほどの理由がなければ、クラス発表の時点で辞退するため、ここにいるのは他の学園に入ることを家族やなんらかの事情によって許されなかった者に限る。


<1年生>

ジゼル…主人公。魔女の死をきっかけに街に出てなし崩しに学園に入学。魔女以外と関わったことがなく成長したために常識がない。

アリス…学園への入学という名目で家から追い出された。家では虐待を受けていた。シンデレラ的。

ランバート…回復・結界などの支援系統に強い適性を示す。色々あって入学という名目で家を追い出された。

ジェラルド…第2王子。興味好奇心でこのクラスで指導を受けている。配属はS組。


<講師>冒険者パーティー"ウォッカ"…主に貴族出身者で構成されるパーティー

グレン…"ウォッカ"のリーダーでしっかりしている。魔道具製作が専門。

ジーク…魔法を得意とする。メンバーの中で一番腹芸が得意。「〜っす」と話す癖がある。

リラ…超パワーの物理攻撃専門。脳筋だが、話し方は丁寧で物腰柔らかい。ちっちゃくて小動物的。

ルツィ…自称天才の魔法使い。自信満々だが怪我するのが嫌いで戦闘になると大泣きする。だが、強い。


強さは…

"ウォッカ"パーティー>ジゼル≧"ウォッカ"個人>>>>>>>ジゼル以外の1年>>>>>>>>>>>>他の生徒

 それは、何気ない言葉だった。


 「そういえば、お前たちは帰省するのか?」


 ジェラルドは訓練の合間にそう尋ねると、微妙な空気が漂い始めた。


 「……」


 アリスとランバートは気まずそうに黙り込み、ジゼルは首を傾げた。


 「……お前よ。」

 「…王子はさ、デリカシーって知らないんすか?」

 「……ないわぁ。天上天下唯我独尊★天才★ルツィたん☆でもそれはないわぁー。」


 上から、グレン、ジーク、ルツィである。

 なお、リラは魔物を片っ端から狩っていて外出中である。


 「キセイ??」


 「あ゛〜、ランバート、ジゼルに帰省の意味をって無理そうだし、ジーク…」


 いつも、ジゼルへ常識を教えているランバートに振ろうとしたが、


 「ジゼルちゃんってば、帰省の意味も知らないんだ?」

 「チッ」


 「…も、ダメそうだな。」


 一触即発の空気が流れて、グレンは諦めた。

 この2人は初対面からなんか殺伐としている。


 (喧嘩するほど仲がいいってことだろうが…)


 これでは、説明にならない。


 「大丈夫★ちゃんとルツィたんがっ!!」

 「論外。」


 ルツィが引っ掻き回す前にグレンはルツィを止めた。


 「なんでよぉ」キャピ☆


 「仕方ないから、俺が説明するか…するしかないのか…」


 ここまでくると、諦めの境地か、グレンが説明した。


 「いいか、帰省ってのは…俺らは今ここで住んでるが、元の家は違うだろ?んで、その家、実家に一時的に帰ることをいうんだ。実家ってのは…お前でいう、魔女と暮らした家だな。」


 「ジッカ…。皆にも実家ある?」


 そこでグレンは返答に困りつつ、答えた。


 「まぁ、あるやつとない奴がいるが。一般的に子どもの頃生まれ育った家、両親が住んでいる家をいうよな。」


 子どもの質問というのはときに残酷である。

 大人は変に誤魔化そうとしたり、気を遣ったり、揉み消そうとするからか、答えに困る質問がある。


 そうたとえば…

・なんで〇〇君/ちゃんってお母さんいないの?

・赤ちゃんってどうやってできるの?

・おじさん/おばさんってパパ/ママより年上なのになんで子どもがいないの?

など…


 悪意ないが故に怒ることができない、そんなデリカシーに欠けた質問はよくある。

 そう、子供は残酷である。


 ジゼルは世間を知らないという意味では、そんな赤子と変わらない。


 「なんで急にジェラルドはそんな話をした?」


 「あ゛ーーーー、そりゃ、一般的に、あくまで一般論だが、年末年始は帰省して顔を見せて挨拶するって通例があるからだ。」


 「ネンマツ??」


 「そこもか⁉︎」


 グレンはツッコミを入れながら、丁寧に説明した。


♦︎割♢愛♦︎


 「戻りましたよー!!」


 そこで魔物狩りに出ていたリラが帰ってきた。

 担いでいる武器がでかい。


 「あらあら、どうしてジェラルドさんが詰められているのですか?」


 興味深そうに、正座させられている自国第二王子を見下ろした。

 他の面々は通常通り動いているように…みえる。


 「…こいつがデリカシーのない質問しやがったからだ。同じ質問をジゼルがしても特に何もしなかっただろうが…」


 「なるほど。王子さまが理解せずに無邪気になんてありえませんもんね?潰します?」


 笑顔でリラは武器を構えた。


 「いや、流石にやめといてやれ。」


 「で、なんて質問したんですか?」


 武器を下ろしてからグレンにそう質問した。


 「年末だが帰省しないのかって質問しやがったんだ」


 「あーーそれは有罪ですね。」


 リラはそうサラッと言った。


 「あぁ。ここにいる面々は家族関係で問題がある者ばかりだ。俺らを含め、特にランバートやアリスは家を追い出された結果、ここに居着くことになったんだ。」


 (アリスについては、ランバートの密告から虐待の可能性も上がってる。)


 その言葉は胸の中にしまって、グレンは続けた。


 「お前自身も王族だ。血縁関係のしがらみも多いんだろう。だからこそ、そういうところに何気なくあの質問はない。」


 真剣な会話なら兎も角、適当な会話…雑談で出す話題ではないのだ。


♦︎♢♦︎


 結果、第二王子ジェラルド以外は帰省しないことが判明した。


 なんてことはない、彼らの年末の過ごし方。

ルツィのテンションのせいで★が乱舞しています。

こんなはずじゃなかった…

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