世話係
俺は空を仰いで茜が任務を終わらせたことを悟った。
成功したということは、死んではいないということだろう。
俺は一息ついた。
茜は平然とこの仕事を当たり前と思っているが、毎度毎度の仕事で死の危険に晒されなければならない仕事が世の中の普通なはずがない。
俺が毎度の仕事で肝を冷やしていることなど、茜は知らないのだろう。それでも憂鬱になりながらも、俺が彼女を止めることなどできないから、板挟みになって頭を悩ませる。
そして、彼女から離れることも、また自分にとって無理な話だと理解している。
茜が向こうから此方に向かってくるところが見えた。
遠目で見る限り、怪我はしていないようだ。ただ、少し左脚をいつもよりもひきずって歩いているように見える。転んだか、使いすぎたか、どちらにしても、俺は眉を顰める。
深傷というわけではなさそうだが、無傷というわけにもいかなかったようだ。
俺はズカズカと茜に近づいた。
「茜嬢、怪我されたようですね。」
「京介、わたくしは怪我なんてしてないわ。今回は相手の攻撃は一度も受けていないもの。」
「なら、言い方を変えます。左脚、いつもより引きずっていますが、どうされましたか?」
「いや、それは…その…。ちょっと調子に乗ったといいますかねぇ…」
茜はバツが悪そうに目をそらして口籠った。
「別に私は怒っていませんよ。ただ、何事もなかったように装うのはどうかと思っただけです。」
俺は少し屈んで茜の膝の裏と背中に手を支えて横抱きにした。
茜は一瞬驚いてすぐに頬を膨らませた。
「急に持ち上げるのはやめてって言ってるでしょ?それに、ボクは一人でも歩ける!おーろーしーてー!」
茜は顔を真っ赤にして離れようと足掻いて、目を俺から逸らして「恥ずかしいじゃない。」と言った。
それも俺から見れば微笑ましいのでより降ろしたくなくなる。その行動がより自分を下さなくさせているとは気づいていないのだろう。
「ジタバタしないでください。落ちますよ。」
俺が茜をじっと見て揺らがないとばかりに言うと、何をやっても無駄だと悟ったのか、茜は暴れるのをやめてじっとした。
しかし、それでも納得はいかないのか、目を逸らしてだんまりを決め込んでいる。
「………車までだからね。」
妥協案とばかりに茜がボソリとつぶやいた。
それ以上は許さんとその声は言っている。
俺の中でもそれで構わないと思っていた。だからこそ心から笑顔でこう答えるのだ。
「承知しました。」
ーー俺の大事なお嬢様。
<次話>「向かう先は」同日投稿予定




