破邪師
雲林院家は代々破邪を行う家系である。
故にこの家に生まれたものの殆どが邪霊を見ることができ、邪念世界に干渉する力を持っている。
雲林院茜もまたこの家に生まれ、破邪師として育てられて十八年、今日もまた邪霊と向き合う。
「茜嬢、ここが件の祠です。」
前髪をセンターで分け額を出しているスーツの男が声を掛けた。
よくある黒スーツに見えるが、仕立てがしっかりとしていて、高級そうに見える。無地で濃紺のネクタイはタイピンを引き立てる。片手をズボンのポケットに入れて、釣り目で無表情に見える男は巷でイケメンと呼ばれる類。
「確かに辛気臭いですわね。わたくしも気分がいいわけではありませんもの。」
茜嬢と呼ばれた彼女はお嬢様のような口調で答えた。
年不相応のステッキは黒い手袋で操られ、高貴な雰囲気を醸し出す。黒いコートは立襟で留め具が前に三つほどある。目と目の間に少しだけある前髪に触覚のような両サイドの髪、尾のような一つにまとめられた髪は程よい癖があって光が当たると茶色く見える。紐のリボンで飾られた馬の尻尾はゆらゆらと揺れていてつい目で追いかけてしまう。
「ここに件の一家が足繁く通っていたようで、一家は此処を成績などが上がるラッキーポイントと思っていたそうです。」
男は眉間に皺を寄せながら、説明し、無表情を崩して心配するような眼差しで茜を見た。
「心配なさる必要はなくてよ。京介、わたくしはもう子供ではないといつも言っておりますのに、そんな目で見ないでくださいまし。邪霊などボクが正面からブッ飛ばすから気にしなくていいから。」
京介と呼ばれた男より前に走り出て勢いよく振り返ると笑って言った。
そんな様子に京介はふっと笑って目尻が下がる。
「お嬢様、仮面、はがれてますよ。」
京介が指摘すると、茜は手袋を付けた手を自分の頬に当てて、しまったという顔をした。
十年以上茜の世話係をしている京介には仮面を被る意味などないだろうに慌てて繕う。
「気の所為ですわよ。もう、思いっきりやっていいのよね?」
茜は誤魔化しつつ、京介に確認をとる。
彼女はお嬢様を目指しているが、実際はとても好戦的なのだ。既によく分からない口調になっている茜を微笑ましく思いながら返事を返す。
「結界で民間人が迷い込まないようにしていますので問題ありません。」
京介は無表情に戻って報告した。
<次回>「一つの負傷も許されない」同日投稿




