表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

第4篇 「一周忌」(「昼と夜の交わり」より)

短めの短篇です。

登場人物2名で特になにも起きないちょっと暗めのお話です。


雲林院茜

破邪師の家系に生まれ育った。


真宮京介

茜のお目付け役。


 2016年12月27日 @東京都某所


 「璃孤(りこ)ちゃん…」


 杖を片手に黒服を纏った女は、黒服の男を連れ立ってそこに現れて、不器用に花を置いた。


 「…今でも考えるよ。本当にこれ以外に方法がなかったのか…ってね。」


 行き交う人々は、異様な光景に一度は振り返って、通り過ぎていく。


 「人は忘れる生き物だよ。だから、私も片時も離さず考えていたわけじゃない。」


 吐露した感情は懺悔か、懐古か、それとも…。


 「けど、この世界のほとんどの人の記憶から消えて、世界から生きた証まで消して、そしたら、もう…。」


 水滴が彼女の頬をつたってキラリと光った。


 「私たちが覚えてるしかないじゃないか…。」


 下唇を噛み締めて、掌に爪の跡が残るくらいに強く拳を握った。


 それから数分経っただろうか。


 「茜嬢(あかねじょう)、そろそろ…」

 「わかってる。」


  連れの男にそう声をかけられて、茜はぶっきらぼうに返事をしてから、手向けた花に背を向けた。


 「京介(きょうすけ)…、車を出して。」

 「承知しました、茜嬢。」


 茜は車の後部座席に、京介は車の運転席に乗りこんだ。


 「このまま本家に向かってもよろしいですか。」


 ミラー越しに京介の目線を受けて、茜は少し考えてから応えた。


 「…ん。けど、今晩はあそこで過ごしたくない。」


 「わかりました。近くの宿泊施設に。」


 茜は京介の返事を聞くと、窓から車外の喧騒を眺めた。

 あっという間に通り過ぎていく景色に、少し思うところがあったのか、ゆっくりと何度か瞬きをしながら、下唇を噛み締めた。


 2015年12月27日に生きた痕跡と共に消滅した友を悼んだ。

2015年の12月下旬にある大変なことが起こり、12月27日にそれらを終息させるための手段として、茜の友人は消滅しました。


この2人が登場するのは「昼と夜の交わり」の2章目です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ