- あらすじ
夫の九条拓真が交通事故に遭い、重い意識障害と診断されてから、彼が身につけている健康管理用のスマートバンドの歩数は、毎日ずっとゼロだった。
ところが最近、奇妙なことに気づいた。
毎晩午前二時になると、その数字が決まって二百歩だけ増えるのだ。
義母の九条雅子は、バンドが壊れているだけだと言った。義弟の九条悠斗は、夜中に身体の向きを変えた時の振動を歩数として拾っているのだろうと説明した。
実の父である榊原正臣まで、私を諭した。
「澪、この半年ずっと疲れてるんだ。そんな数字ばかり見て、自分を追い詰めるな」
私は何も言わなかった。
ある夜、午前一時に拓真のスマートバンドを外し、家のロボット掃除機に取りつけた。
翌朝、歩数は一万歩を超えていた。
雅子と悠斗がその数字を見た瞬間、二人の顔色が変わった。
その反応を見逃す前に、父が突然、私の頬を平手打ちした。
「いつまでこんなことをするつもりだ!」
「拓真はあんな状態なんだぞ。話すことすらできない人間を、これ以上どうして苦しめる!」
耳の奥で音が弾けた。
私は頬を押さえながら、それでも笑った。
なぜなら数時間前、私は見ていたからだ。
半年近くベッドから起き上がれないはずの夫が、真夜中に身体を起こした。
部屋の裏口を開け、庭の飛び石を渡り、そのまま離れへ向かって歩いていった。
亡くなった兄の妻――九条沙耶が暮らしている離れまで。
その距離を、私は自分の足で数えた。
ちょうど二百歩だった。- Nコード
- N7698MR
- 作者名
- 熾星
- キーワード
- シリアス 女主人公 裏切り 不倫 サレ妻 ざまぁ 財産争い 復讐
- ジャンル
- ヒューマンドラマ〔文芸〕
- 掲載日
- 2026年 09月02日 18時20分
- 感想
- 1件
- レビュー
- 0件
- ブックマーク登録
- 1件
- 総合評価
- 150pt
- 評価ポイント
- 148pt
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- 文字数
- 17,377文字
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