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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

死に損ないの深い陰は嘘にぬれる

作者:rnq
最新エピソード掲載日:2026/06/28
「おめでとう。お前は今日から最高の家畜だ」

 少年院の刑罰で合成肥料になりかけた少年、樫深蔭が送られたのは、寄生植物が人間に根を張り開花するための施設。肥料の原材料で終わるはずが、名前を返された彼は、保護個体である清澄靭の特級適合苗床として選ばれた。

 死に損ないの元受刑者 × 盲目の寄生種

 喰われるために生かされた少年と、彼を喰らって咲く少年。だが、二人が重ねていくのは、食事をして、点字を打ち、色を教え、白を集め、嘘を本物にしていく日常だった。

 清澄靭は、研究室で育てられた盲目の少年である。いずれ自分を喰らって咲く少年は深蔭に微笑む。

「知らないことを、一緒に探したい」

 深蔭は靭に、かぼちゃの黄色を教える。シーツ、カルピス、ソフトクリーム。目の見えない靭に、日常の中で少しずつ色の輪郭を渡していく。

 ⠡⠕⠐⠣⠀⠷⠡⠐⠫ (かたぎ みかげ)

 図書室で点字を独学し、自分の腕に名前を刻んだ。深蔭は、初めて自分の名前が誰かの笑顔を作るものになったことを知る。

 点字の練習で打ち間違えた文字を、靭は「うそという鳥の名前かと思った」と口笛で鳴き声を教える。間違いは、二人だけの白い鳥になった。

 この園では、寄生と愛の境界が壊れたまま教団を巻き込み咲いたペアがいた。体育館のステージで、自分を胞子ごと散らした生徒がいた。効率だけを突き詰め、感情を逃がしたペアがいた。誰もがそれぞれのやり方で開花していく。

 やがて深蔭は、全潜りの仕組みを知る。完全同調には脳を騙すだけでは足りず、魂の合意が必要と知った深蔭は、靭の終宿主になると宣言した。

「本気で俺を堕としにこい。二度と取り消せないくらいの本物に変えてみろ」

 靭は答える。「覚悟してね」と。

 啖呵を切った死に損ないの少年は、慈悲深い寄生種に内側から根を張られ、嘘も名前も、塗りつぶしてきたはずの過去も、少しずつ喰われていく。

 そして全潜りは、管理された手順を無視して、ある夜静かに完了した。外側からはひとりでも、内側では二人分の呼吸が続いている。
 終わりが決まっているからこそ、日常を大事にしながら雨の季節を待つ。彼らが名前や身体、言葉を互いの内側に根づかせ、開花する様子を最期まで見届けてください。

本作はカクヨム掲載版をもとに、表記を調整した改稿版です。作者本人による掲載です。
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