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陛下の毒と、捨てられた薬師

作者:月代
最終エピソード掲載日:2026/07/06
「毒に強いだけの、無教養な女だ」――婚約者である第二王子アルフレートのその一言で、毒味役セラフィーナは婚約破棄され、十年勤めた王宮を追放された。

けれど誰も知らない。過去に王家を襲った三度の毒殺未遂を、密かに見抜いて防いだのが彼女だったことを。彼女は毒味役という下働きの立場に甘んじながら、実は誰よりも毒と薬に通じた本物の薬師だったのだ。

彼女を捨てた王宮では、ほどなく異変が起きる。宴の席で倒れる貴族。診断できぬ宮廷医。広がる原因不明の毒――安全装置を自ら手放した国は、静かに綻び始めていた。

一方、追放されたセラフィーナに手を差し伸べたのは、隣国の若き王リヒトだった。彼は長年、誰にも解けぬ毒に蝕まれていた。セラフィーナはたった一晩でその正体を見抜き、彼を救ってみせる。

「君を手放した国は愚かだ」――リヒトは静かに笑い、そして言った。「だが、もう二度と返さない」

毒味役ではなく、一人の薬師として。初めて正当に評価される日々。やがて彼女を「連れ戻す」ためにアルフレートが現れるが、それは彼自身の無能と嘘が、白日の下に晒される瞬間でもあった。

戻る理由なんて、もうどこにもない。

暴力ではなく、信用と実力で。奪われた尊厳を、彼女は自分の意思で取り戻していく。静かで痛快な逆転劇と、尊重から始まる溺愛。

全5話完結。
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