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『星砂の降る船で』 桜井ジン

作者:如月あげは
最終エピソード掲載日:2026/03/25
ささやかなことではございますが、浦和探偵事務所の所長・桜井ジンが、ときおり書き記しております小さな物語のひとつでございます。
舞台は、定まらぬ空のどこか。絶え間なく降り続く星砂の上を、一艘の古い宝船が、音もなく進んでいます。船に乗るのは、七柱の神様――だいちゃん、えびやん、べにたん、ほてい、ロクさん、びしゃん、おじい。けれど彼らは、威厳に満ちた存在とは少し異なり、忘れっぽく、すぐに拗ね、ときに見当違いなことを口にします。船がどこへ向かっているのか、その行き先を、誰ひとりとして正確には知りません。
それでも、船は止まることなく、ゆるやかに進み続けます。日々、ささやかな困りごとが訪れます。お供えが足りなくなり、濃い霧に視界を奪われ、突然の嵐に揺られ、ときには大きなクジラが船体に触れていきます。神様たちは、そのたびにうまく対処することができません。言い合いになり、黙り込み、整った答えに辿り着くことは、ほとんどありません。
それでも、誰かがお茶を淹れます。誰かが、ぽん、と小さく音を鳴らします。誰かが、何も言わずに甲板を掃き始めます。そうしたささやかな振る舞いの積み重ねの中で、船はまた、わずかに前へと進みます。
大きな出来事が起こるわけではございません。何かがきれいに解決することも、多くはございません。それでも、同じ船の上で過ごす時間の中に、言葉にならない何かが、少しずつ積み重なってまいります。
もし、この宝船の上で、ひとときでもご一緒いただけましたなら。人生が急に変わることはないかもしれませんが、どこかで少しだけ、肩の力を抜いていただけるような時間となりましたなら、幸いに存じます。どうか、お手すきの折に、そっとお開きください。
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