魔王軍の雑用係
最新エピソード掲載日:2026/05/15
2度目は剣聖、3度目は賢者……。もう、疲れちまったんだよ」
暗黒の雲が渦巻く魔王城。その重厚な門を叩く一人の男がいた。
カイル、見た目は二十歳そこそこの青年。だがその魂は、三度の人生を経て、酸いも甘いも噛み分けすぎた「伝説の経験者」である。
「……次の方、どうぞ」
無機質な声に呼ばれ、カイルは面接室の扉を開けた。
そこに座っていたのは、額に角を生やした高慢そうな魔族の面接官だ。
「ええと、志望動機は?」
「はい。前職では責任ある立場にいたのですが、人間関係と過重労働に疲れまして。貴軍の『実力至上主義』という言葉に惹かれました。掃除、洗濯、荷物運び、なんでもやります」
カイルは嘘はついていない。
2度目の人生(剣聖)では、寝る間もなく魔物を斬り続け、
3度目の人生(賢者)では、結界の維持に24時間365日拘束された。
英雄とは名ばかりのブラック企業。それに比べれば、魔王軍の末端兵士の方が、まだ「定時」がありそうだと思ったのだ。
カイルは冷や汗を流した。バレてはいけない。もし正体が「あの時の剣聖」や「あの時の賢者」だとバレれば、即座に「勇者」として抹殺されるか、あるいは軍団長に昇進させられてしまう。
こうして、伝説の剣聖にして賢者カイルの、「絶対に目立ちたくない魔王軍スローライフ」が幕を開けた。
……なお、彼が翌日「賢者の浄化魔法」でトイレをピカピカにした結果、城中の魔族が「あまりの神々しさに失神する」という大騒動が起きるのだが、それはまた別の話である。
暗黒の雲が渦巻く魔王城。その重厚な門を叩く一人の男がいた。
カイル、見た目は二十歳そこそこの青年。だがその魂は、三度の人生を経て、酸いも甘いも噛み分けすぎた「伝説の経験者」である。
「……次の方、どうぞ」
無機質な声に呼ばれ、カイルは面接室の扉を開けた。
そこに座っていたのは、額に角を生やした高慢そうな魔族の面接官だ。
「ええと、志望動機は?」
「はい。前職では責任ある立場にいたのですが、人間関係と過重労働に疲れまして。貴軍の『実力至上主義』という言葉に惹かれました。掃除、洗濯、荷物運び、なんでもやります」
カイルは嘘はついていない。
2度目の人生(剣聖)では、寝る間もなく魔物を斬り続け、
3度目の人生(賢者)では、結界の維持に24時間365日拘束された。
英雄とは名ばかりのブラック企業。それに比べれば、魔王軍の末端兵士の方が、まだ「定時」がありそうだと思ったのだ。
カイルは冷や汗を流した。バレてはいけない。もし正体が「あの時の剣聖」や「あの時の賢者」だとバレれば、即座に「勇者」として抹殺されるか、あるいは軍団長に昇進させられてしまう。
こうして、伝説の剣聖にして賢者カイルの、「絶対に目立ちたくない魔王軍スローライフ」が幕を開けた。
……なお、彼が翌日「賢者の浄化魔法」でトイレをピカピカにした結果、城中の魔族が「あまりの神々しさに失神する」という大騒動が起きるのだが、それはまた別の話である。