十三 式部省にて
道顕の大宰府行きの日取りが決まった。
多くの供を引き連れ、下るという。
だが、噂では道顕は正気を失い、もはや普通の状態ではないという。
右大臣として内裏を仕切っていた者が、呆気ない最後だ。
公卿も貴族も、思い思いに口さがなく、言い募る。
もはや道顕の脅威は無いのだ。
次の右大臣になるのは、現左大臣の源基隆だろう。
そうなると、次は基隆の天下。
麗景殿女御潔子が皇子を産めば、源氏の世となるかもしれない。
それとも、弘徽殿中宮顕子は寵愛を受け続け、顕子こそが皇子を産むかもしれない。
そうなれば、次は藤原氏長者である藤原顕実の天下。
まだ五位蔵人ではあるが、帝の信頼はいまだ篤い。
今日までの措置から察するに、おそらく連座は無いだろう。
中宮は中宮のまま。
五位蔵人は、次の除目で出世するかもしれない。
なればこそ。
立ち回りをよく考えなければ。
貴族たちは挙って動き出していた。
式部省。
定明が真薫に言った。
何気ない話をするように、軽く。
軽くを心掛けて。
それでも、声が少しだけ震えた。
「終わりましたね」
「はい」
真薫は、微笑んだ。
「定明殿のおかげです」
「いえいえ」
定明は、照れくさそうに笑った。
「僕、強くなれましたかね」
「はい」
真薫は、頷いた。
「とても、強くなりました」
定明は、にっこりと笑った。
「これから、もっと強くなります。呪詛を排除して、人を守る。両方やりますよ、僕は」
真薫は、微笑んだ。
「一緒に、頑張りましょう。怪異雑掌の仕事、これからもご助力願います」
「はい! お任せあれ」
軽やかな笑い声が響いた。
兼遠が、遠くで唇の端を引き上げる。
長かった彼の十八年にも、やっと。
幕が下りたのだ。




