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式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第十三章 断罪
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十二 麗景殿にて

 麗景殿。


 潔子(ゆきこ)は、萩野と話していた。


「道顕様が、左遷されたそうですね」

「はい」


 萩野は、頷いた。


「これで潔子様も、安心して暮らせますね」

「萩野……」


 潔子は、萩野の手を取った。


「お前が、倒れたのもすべて、道顕様の策略だったのですね」

「はい」


「許せません」


 潔子は、涙を流した。

 萩野は微笑む。


「でも、終わりました」

「……もう、恐れることはないのですね」


「はい」


 萩野は強く、頷く。


「もう、何も恐れることはありません」

「中宮様も、弘徽殿にお戻りになられるでしょう。そうしたら――」


 萩野は潔子の言葉を途中で遮った。

 ひどく、珍しいことだった。


「無礼を承知でお尋ねいたします。潔子様は――中宮様のお戻りを願っておられますか」


 潔子は眼を瞬いた。

 そして、眉間にしわを寄せる。


「萩野」

「はい」


「私は中宮様を姉上のように思って、慕っているのですよ。私を救ってくださった、大切な方。そして、主上が一番大切に想っている方」


 萩野は溜息を吐く。


「ですから、余計にです。潔子様が後宮を取り仕切る絶好の機会。左大臣基隆(もとたか)様が見逃すはずがございません」


「だからこそ。今度は私が中宮様をお守りする番だわ」


 萩野はやれやれと(かぶり)を振った。


「お強くなられましたね」

「中宮様の、主上の、そしてお前のおかげよ」


 「であれば」


 萩野は潔子の前に手を付き、額づいた。


「萩野も腹を括って、今まで以上にお仕え申し上げますことを、ここに誓います」


 潔子は目を細めた。


「宜しく頼むわ。萩野」

「はい」


「頼りにしています」

「はい」


 主従は見つめ合い、微笑む。


 麗景殿を、涼やかな風が通り抜けていった。

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