表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第十三章 断罪
PR
114/118

十一 再会

 その日の夕刻。


 真薫の屋敷に、客が訪れた。

 簀子縁に腰を下ろしていた真薫は、客が来たとの雑色の声にうわの空で頷いた。


 少し腑抜けていたと言ってもいいだろう。

 大きな荷を下ろし、なんだかとても、肩が軽い。


 だが、それが却って落ち着かない。

 ふわふわとして、心許無い。


 足音が聞こえたが、視線は向けなかった。


「四郎様……」


 だが声を聞いて、真薫は驚いた。


(この声は……)


 弾かれるように顔を向けた。

 その視線の先に。次子(なみこ)が立っていた。


「なみ……」


 真薫は、息を呑んだ。

 幻かと思った。


「お久しぶりです、四郎様。――いいえ、真薫様」


 だが、次子は確かにそこに立って。

 涙を浮かべていた。


「次子殿、どうして……」

「中宮様が、背中を押してくださいました」


 次子は、微笑んだ。


「もう、道顕様の影に怯えることはありません。何の気兼ねもなく、真薫様にお会いできます」


 真薫は、何も言えなかった。

 ただ、次子を見つめていた。


 変わらない、優しい表情。

 しかし、以前よりも強くなった眼。


「真薫様……」


 次子は、一歩近づいた。


「長い間、お待たせしました」


 真薫は、ようやく言葉を見つけた。


「次子殿……待っていました」


 二人は、静かに見つめ合った。


 長い、長い時間が流れた後の、再会。


 真薫は、次子の手を取った。

 温かい。


 存在を、この手で確かに感じられる。


 痛くないように。

 それでも可能な限り強く、握り締める。


「次子殿……」

「はい」


「ずっと、待っていました」


 真薫の声が、震えた。

 次子は、微笑んだ。


「私も、ずっと……」


 二人は、抱き合った。


 もう、言葉は要らない。

 伝わる温もりに、涙が溢れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ