表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第十三章 断罪
PR
113/118

十 それぞれの道

 それからまた、しばらくの時が経った。


 道顕邸の一角。

 顕子は、赤子を抱いていた。


合歓(ねむ)。……父上が、太宰員外帥(だざいいんがいのそち)に任じられた」


 顕子は、次子(なみこ)に言った。

 次子は静かに頷く。


「はい」

「……」


 顕子は、複雑な表情をしていた。

 果たして父は、大人しく大宰府へ向かうのだろうか。


 それとも――


「悲しくないと言えば、嘘になる。だが……」


 顕子は、赤子を見た。


「これで、この子を守れる。もう、父上の野望に、巻き込まれることはないのね」


 顕子は、微笑んだ。


「それだけで、十分。もしも、再び後宮へ上がることができないとしても――この子がいれば、私は生きていける」


 次子は、顕子を見た。


「中宮様……」

「なあに、合歓」


 次子は何とも言えない表情で顕子を見た。

 複雑な、何と言ったらいいのか迷っている顔だ。


 そう。

 父、道顕の左遷。


 顕子が再び宮中に上がり、中宮として在れるのかどうか。

 それは帝の心ひとつだ。


 顕子は微笑んだ。


「合歓」

「はい」


「もう、父上はいない」


 顕子の声が、優しくなった。


「お前が守りたかった想い人とも、もう何の気兼ねもなく逢えるわね」


 次子は眼を見開いて。

 涙が一筋頬を伝った。


「中宮様……」

「行きなさい、合歓」


 顕子は、優しく言った。


「お前は、ずっと耐えてきた。私のために、父上のために。――でも、もう縛られることはないのよ」


 顕子は、次子の手を取った。

 赤子が小さな手を添えた。


 顕子の笑みが、深くなる。


「逢いに行きなさい。お前の想う人のところに」


 次子の両目から涙がぼろぼろと零れ落ちる。


「中宮様……ありがとうございます」

「行きなさい」


 顕子は、微笑んだ。


「そして、幸せになりなさい」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ