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式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第十三章 断罪
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九 道顕の破滅

 その夜。


 清涼殿。


 道顕が、呼ばれた。


「道顕」

「はい、主上」


 道顕は、頭を下げた。

 彼はまだ、何も知らない。


 帝は、裏帳簿を見せた。


「これを、見よ」


 道顕は、差し出された裏帳簿を見た。


 最初は何のことだかわからなかった。

 しかし、文字を追う内に、段々と血の気が引いていくのがわかった。


 手が、震えた。


「これは......」

「お前の、策略だな」


 帝の声は冷たかった。


「呪詛を用い、多くの者を害した。維時、行斉、光保、保規……。そして先日は、ついに潔子(ゆきこ)を害そうとした」


 帝の目が、鋭くなった。


「すべて、お前の仕業だ」


 道顕は、何も言えなかった。

 ただ、震えていた。


「弁明はないのか」


 道顕は呻いた。

 すべて知られた。


 最も貴き存在に。

 最も知られてはならぬ存在に。


 いずれ、己の血を引いた子が、着くべき座にある存在に。


 それもこれも――


「……すべて、源氏のせいだ」


 道顕の声が、かすれていた。

 既に(たが)は外れていた。


 あとは、溢れ出るだけだった。


「源氏が、外戚になろうとしている。それを、阻止しようとしただけだ。我が一族の、そう、我が一族の繁栄のために……」


 帝の拳が震えた。


「ひいては帝の……」

「黙れ」


 言い募る道顕に一喝する。


「お前のしたことは、許されぬ。多くの者が苦しんだ。多くの者が死んだ。すべて、お前の野望のためだ」


 帝は、立ち上がった。


「藤原道顕」


 そして宣言した。


「右大臣の職を解く。そして、大宰員外帥(だざいいんがいのそち)として、大宰府に赴任せよ」


 道顕は、崩れ落ちた。


「そんな……左遷とは……」

「当然だ」


 帝は、冷たく言った。


「お前の罪は、重い。本来ならば、もっと厳しい処罰を下すべきだ。――しかし、中宮顕子のことを思い、この処分とする」


 道顕は、何も言えなかった。

 ただ、崩れ落ちていた。


 抜け殻のようだった。


「去れ」


 帝は、冷たく言った。

 道顕は蔵人たちに引きずられるように、退出した。


 すべてが、終わった。


 過ぎ去ってしまえば、なんとも呆気ない。

 藤原道顕の破滅だった。


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