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十一 道顕の呪詛
その夜。
道顕は、陰陽師を呼んだ。
道顕が特に厚遇する賀茂氏でも、安倍氏でもない。
法師陰陽師だった。
得業生として陰陽寮で学んだ経歴もなく、官人でもない。
市井で、呪詛を生業とする者。
ただ、市井では名の通った者だという。
特に呪殺にかけて、右に出る者がないそうだ。
道顕は、その法師陰陽師を前にして、命じた。
「源潔子を、呪詛せよ」
法師陰陽師は、頭を下げた。
「承知いたしました」
「懐妊しているという」
道顕は、続けた。
「その子を殺せ。流産させろ」
法師陰陽師は、静かに頷いた。
「本物の呪詛を行え」
道顕は、鋭い目で法師陰陽師を見た。
「まやかしで誤魔化したりしたら、どうなるかわかっておるな」
道顕は、金を差し出した。
大量の砂金だった。
「失敗は許さぬ」
「は」
法師陰陽師は、金を受け取った。
そして、深く頭を下げた。
「必ず、成し遂げます」
にやりと笑って。
法師陰陽師は、去った。
道顕は一人残された。
そして、声を立てて笑った。
狂気の笑い。
すべてが、壊れていく笑いだった。




