後編
数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。
拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。
傲慢の代償、凍てつく地の底。
不法侵入、魔導具の窃盗未遂、そして過去に渡る数々の詐欺行為が白日の下にさらされた三世代の悪意は、領主の厳格な裁きにより、二度と陽の目を見ることのない北方の極寒鉱山での終身強制労働へと処されました。
そこは、彼女たちがかつて嘲笑い、踏みにじってきた「地道に生きる人々」の血と汗、そして凍てつく自然が支配する容赦のない世界でした。
発芽しない永久凍土の最下層。
「私は貴族の愛妾よ! こんな汚い場所にいるべき人間じゃないわ!」
最初の数週間はそう狂ったように叫び散らしていた彼女でしたが、看守たちの無慈悲な鞭と、何より「水分を凍らせる絶対零度の恐怖」が骨の髄まで染み付いていました。私たちが刻み込んだあの水の魔法のトラウマから、彼女は冷気を感じるたびに激しい過呼吸を起こし、ガタガタと震えるだけの老婆のようになっていきました。かつて男を品定めしていたその瞳は完全に光を失い、今はただ、凍った岩肌をツルハシで削るだけの人形へと成り果てています。
「聖なる癒しの魔法がある」「自分は特別で高貴だ」と現実逃避を続けていた姉を待っていたのは、最も過酷な現実でした。
私たちが沸騰させた水魔法によって負った足の火傷は、彼女に魔法の才能が皆無であったために癒えることはなく、鉱山の不衛生な環境も手伝って醜い傷跡として残りました。引きずりながら歩くその足は、彼女から「男を誘惑する美貌」という最後の武器を完全に奪い去ったのです。
周囲に媚を売って労働を免れようとしても、犯罪者しかいない鉱山では誰も彼女を相手にしません。それどころか、少しでもサボろうとすれば、他の囚人たちから容赦のない罵声と暴力を浴びせられる日々。
「どうして私がこんな目に……。私は悪くない、あいつらが、あの泥棒猫のガキどもが私を嵌めたのよ……!」
夜、冷たい配給のパンを齧りながら、彼女は呪詛のようにそう呟き続けています。しかし、その声に耳を傾ける者は誰もいません。ただ、自分が犯してきた裏切りのツケを、文字通り血を吐くような労働で支払わされる毎日が永遠に続くのです。
まだ六歳でありながら、大人を値踏みし、他人の大切なものを踏みにじることに悦びを覚えていた少女。彼女の歪んだ心根は、この極限の環境において、さらに悲惨な形で砕け散ることとなりました。
鉱山では、子供であっても容赦なく細い岩の隙間に入り込む炭鉱夫としての労働が課せられます。かつて母親や祖母から「お前は特別」「欲しいものは奪えばいい」と吹き込まれて育った彼女にとって、誰も自分を甘やかしてくれない、むしろ一歩間違えれば命を落とす暗闇の世界は恐怖そのものでした。
少女は、かつてのように泣き真似をして他人の同情を買おうとしましたが、ここでは涙など一滴の価値もありません。
「ママ、お腹すいたよ。おばあちゃん、助けてよ……!」
そう泣きついても、実の娘や孫にすら愛情を持たない姉と実母は、自分の配給を守るために少女を突き飛ばし、罵り合いました。
親世代が守るべき倫理を捨て、欲望のままに生きた結果、その血の呪いは最悪の形でこの幼い少女へと遺伝し、そしてその未来を完全に閉ざしたのです。彼女は、親への信頼を完全に失い、ただ飢えと寒さに怯えながら、暗い穴の底で泥にまみれて生きていくことしかできません。
彼女たちが北方の地で、自らの罪の重さに文字通り身を震わせている頃。
私たちの家には、今日も穏やかで心地よい風が吹いています。
母の愛情をたっぷりと受けた観葉植物は、窓際で青々と葉を茂らせ、リビングには温かい料理の香りが満ちています。
血の繋がりという独善的な免罪符を掲げ、我が家を侵食しようとした「忌むべきもの」たちは、もう二度と私たちの世界に戻ってくることはありません。私たちはこれからも、人知れず秘めた絶対的な水の魔法で、この大切な家族と穏やかな日常を永久に守り続けていくのです。
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