表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

黒い傘は、花嫁の手をひく。

作者:乾為天女
最新エピソード掲載日:2026/05/06
 東京で雑貨メーカーを辞めた賢人は、祖父が遺した灯町の傘修理店「黒瀬傘店」へ戻ってくる。店には古い伝票、雨漏り、修理待ちの傘が山ほど残り、賢人自身も失敗した過去から目をそらしていた。そんな梅雨入り前の夕方、駅前地下道で停電と強い雨が重なり、人の流れが止まる。そこで賢人は、高校時代に言葉を置き去りにしたまま別れた消防士・花と十年ぶりに再会する。

 花が人々を出口へ導く姿を見た賢人は、祖父の作業箱から、雨の夜に進む方向を示す未完成の黒い傘を見つける。外側は地味な黒、内側には反射材や蓄光の線が仕込まれ、暗い雨の中で人の視線を前へ向ける一本だった。賢人は花、町工場の叶一、消防士の海太、役場職員の晃煕、商店街の人々と試作を重ねる。笑われ、叱られ、時には衝突しながら、黒い傘は少しずつ「人を守る道具」へ近づいていく。

 一方で、花には翌年度の研修候補の話が届き、賢人には黒い傘の権利を買い取ろうとする会社が現れる。さらに雨天確認では安全紐の不備が見つかり、賢人は発明が人を助けるだけでなく、危険にもつながることを突きつけられる。逃げ続けてきた賢人は、今度こそ責任から目をそらさず、花に隣にいてほしいと言う前に、自分が灯町で何を作るのかを示そうとする。

 八月末の夏祭り。突風と豪雨で人々が歩道橋手前に滞る中、正式な試験導入として配られた黒い傘が開く。雨の夜に浮かぶ淡い光は、人々の足を前へ進ませ、賢人と花の止まっていた十年も動かしていく。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ