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五年で三十二回毒を呑まされた元毒見役

五年で三十二回毒を呑まされた元毒見役ですが、嫁ぎ先の食卓にも毒がございました ~毒と美食の大公家事件簿~

作者:0u0
最新エピソード掲載日:2026/09/15
毒見役を辞めた彼女が、辞めた技だけで人を救う話。

北のノルデン大公領。冬のあいだ閉ざされていた塩の道が開き、城下は祭りに沸いていた。その振る舞いの席で、隊商の頭が倒れる。土地の医師は「古い樽の事故だ」と言い、誰もが頷いた。この土地では、春のたびに何人かが倒れて、何人かは死ぬ。

けれど大公妃リーゼロッテだけは、その椀から立つ匂いを知っていた。焦がした杏子に似た、甘い香り。水では香らず、酒でだけ立つ毒。

「これは、事故ではございません」

かつて彼女は、五年のあいだに三十二の毒を呑まされた。その舌はもう、勝手には読まない。だから今は、確かめると決めて読む。

塩と燻煙が味を覆い隠すこの土地は、毒を隠すのにこれ以上ない場所だ。
そして彼女は、皿の先にいる人間を見る目を持っている。
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