沙羅の木坂の家
ぼく唐木慎吾は、大学3年生でまもなく4年生になる。安定した職に就くために、本格的に就職活動に取り組まなければならない時期なんだけど、最近、路上ライブを始めた。ぼくのファンもそれなりについている。ぼくの父は生まれてすぐに失踪し、母もぼくが小学校に上がる頃に癌で死んだ。おばあちゃんが一人で苦労しながらぼくを育ててくれた。ぼくたちのおんぼろの家には不釣り合いなほど大きな沙羅の木があり、誰が呼び始めたか知らないけれど、ぼくの家の前の道は「沙羅の木坂」と呼ばれ、ぼくの家は密かに「幽霊屋敷」と呼ばれている。ぼくが大学一年生の時、おばあちゃんが脳梗塞で倒れ、しばらくして認知症になってしまった。まだらぼけになったおばあちゃんは、ベッドの中で自分の悲惨な過去を振り返っていた。ぼくはそんなおばあちゃんの世話を一人でしている。いわゆるヤングケアラーだ。それでも、なんとか奨学金とバイトで学業と大学生活を続けている。そんな時、ぼくは交通事故に遭い、入院してしまった。一人になったおばあちゃんを恋人の美由が面倒をみると言ったが、彼女も大学生なのでそれは無理だ。路上ライブに来ていたシャネルスーツを着た三枝未華子というキャリアウーマンが介護をしてくれることになった。三枝さんは我家に同居するようになった。三枝さんはぼくをプロのアーティストにしようと動き始めた。
ぼくは子供の頃から、父が母とおばあちゃんに殺されて、沙羅の木の下に埋められたという妄想を抱いている。最近、父と名乗る男が子供を連れて帰ってきて、同居するようになった。そして、優しいと思っていた母の過去が男によって暴かれていった。おばあちゃんのうんこの臭いのする我が家が、彼ら彼女たちの人生の最終避難所(アジール)であるかのように、訳ありの人間ばかりが集まって交差する。
ぼくは子供の頃から、父が母とおばあちゃんに殺されて、沙羅の木の下に埋められたという妄想を抱いている。最近、父と名乗る男が子供を連れて帰ってきて、同居するようになった。そして、優しいと思っていた母の過去が男によって暴かれていった。おばあちゃんのうんこの臭いのする我が家が、彼ら彼女たちの人生の最終避難所(アジール)であるかのように、訳ありの人間ばかりが集まって交差する。
0 予告
2023/07/29 22:00
1 路上ライブ
2023/08/01 00:00
2 女子高生の朱美
2023/08/02 00:00
3 シャネルスーツの女
2023/08/03 00:00
4 慎吾の生い立ち
2023/08/04 00:00
5 慎吾の妄想
2023/08/05 00:00
6 介護
2023/08/06 00:00
7 ヤングケアラー
2023/08/07 00:00
8 恋人
2023/08/08 00:00
9 三枝未華子の事情
2023/08/09 00:00
10 祖母の告白―1
2023/08/10 00:00
11 祖母の告白-2
2023/08/11 00:00
12 祖母の告白-3
2023/08/12 00:00
13 祖母の告白-4
2023/08/13 00:00
14 祖母の告白-5
2023/08/14 00:00
15 祖母の告白-6
2023/08/15 00:00
16 慎吾の交通事故
2023/08/16 00:00
17 未華子の同居
2023/08/17 00:00
18 美由の決意
2023/08/18 00:00
19 未華子の決意
2023/08/19 00:00
20 勇太の事情
2023/08/20 00:00
21 退院祝い
2023/08/21 00:00
22 慎吾の進路
2023/08/22 00:00
23 トミタケンゴ
2023/08/23 00:00
24 母の過去
2023/08/24 00:00
25 アジール
2023/08/25 00:00
26 大家族
2023/08/26 00:00
27 祖母の死
2023/08/27 00:00
28 飴玉
2023/08/28 00:00
29 一人去る
2023/08/29 00:00
30 富田の暴力
2023/08/30 00:00
31 新しい始まり
2023/08/31 00:00