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昼間は私を冷酷に追い詰める最恐宰相。けれど夜、私の窓辺に現れる仮面の男の正体が彼だと気づいたとき——あまりに必死な「嘘の理由」と、三年分の溺愛を知った。

作者:九十九 文
最終エピソード掲載日:2026/06/04
三年前から、夜になると仮面の男が窓に来る。

名前を聞いても「言えない」と言う。素性を聞いても「通りすがりだ」と言う。それでも来る。他愛ない話をして、行き詰まった夜は夜明けまで隣にいて、また消える。

慣れてしまった。この時間だけが、息のできる場所だった。

一方、昼間の王宮では若き宰相グスタフが、私の部署の権限縮小を提言していた。理由も説明もなく、廊下ですれ違いざまに一言だけ告げて、そのまま歩き去る冷たい男。会ったこともないのに、嫌いになった。

そしてある夜の合同会議で——宰相の声と、仮面の男の声が、重なった。

三年間分の夜が、一瞬で別の形になった。

昼間、私を冷たく追い詰めていた男が。
部署を標的にしていた男が。
何も映していない目で通り過ぎていた男が。

毎晩、私の窓に来ていた。

「夜に来ていたのは——何のためですか」
「会いたかった。それだけだ」

三年間の昼と夜が繋がったとき、残酷さにも、優しさにも、全部に理由があったと知った。

「昼間の顔で、言えますか。夜と同じことを」

仮面も、夜も、もういらない。
昼間の光の中で聞く「会いたかった」は、三年分の夜より、ずっと——。
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