残滓に響く妖精の囁き
最新エピソード掲載日:2026/04/21
2020年末、考古学者である「私」の元に届いた一通の手紙が、全ての発端だった。手紙の主は、大久保さん——40代のライター。首都近郊の賃貸マンションで一人暮らしを始めた2012年12月頃から、彼は奇妙な物音に悩まされるようになった。深夜、リビングの仕事机で原稿を書いていると、背後の和室から「さっ……さっ……」という小さな音が聞こえてくる。まるで誰かが畳の上を箒で掃いているような、乾いた擦過音だ。振り返れば音は止む。暗闇の和室には何もない。コンピュータの画面に和室を映し、監視していても音は鳴らない。しかし、背を向け、仕事に集中した瞬間に、再びその音が忍び込んでくる。ゆっくりと、右から左へ、左から右へ——まるで力のない誰かが、億劫そうに同じ場所を何度も往復して掃いているかのように。大久保さんは一人暮らしだ。部屋を探しても、そんな音を立てるものは何もない。それでも耳を澄ませば、それは確かに畳を撫で、払い、擦る音に聞こえる。機械的で、リズムは一定。そこにいるはずのない「誰か」は、暗い和室の片隅で、ただ淡々と箒を動かし続けている。やがて彼の想像は、勝手に膨らんでいく。その「誰か」はおそらく女で、人生に疲れ果て、虚ろな目をした中年の女性。心はどこか遠くにあり、身体だけが習慣的に箒を往復させている——そんな病んだイメージが頭から離れなくなった。ある夜、試しに和室を撮影した写真には、説明のつかない小さな光の玉が二つ、ぼんやりと写り込んでいた。たったそれだけの、ささやかな物音。
しかしその音は、夜ごと静かに大久保さんの神経を蝕み、いつしか「家に何かいる」という確信へと変わっていった。考古学者である「私」が、この手紙を受け取ったことで、二十年前の文通で繋がった因縁が再び動き始める——。
しかしその音は、夜ごと静かに大久保さんの神経を蝕み、いつしか「家に何かいる」という確信へと変わっていった。考古学者である「私」が、この手紙を受け取ったことで、二十年前の文通で繋がった因縁が再び動き始める——。
発端
2026/04/14 14:12
不可視の同居人
2026/04/14 15:38
(改)
構造的共鳴と炭黒の夜
2026/04/14 18:51
呪詛の沢
2026/04/15 08:53
メール
2026/04/21 13:54