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残滓に響く妖精の囁き  作者: 勇氣


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メール

 海老川教授が僕を呼んでいます。何か見つけたらしいので、行ってみます。


 件名:rainy days

 送信日時:2020.12.20.19:45


 こちらはあいかわらず雨期です。突然襲ってくるスコールは、しばしばテントの中まで水浸しにしてしまうほか、日本の梅雨のように、小雨が一日中、しとしとと降り続けることもあります。鬱陶しいこと、このうえもありません。

 「二季の歌」というのを作りました。


 雨期を愛する人は、心も憂き人。泥土に潜む鰐のような僕の友達。


 続きはいずれ、乾期になってから。

 我々は今、カミナワ族の集落の西の端にテントを張って生活しています。先日、海老川教授が、集落の北はずれで、焼け焦げた小屋の残骸のようなものを発見しました。すでにその上を、ツタのような植物が幾重にも覆っていたので、すぐそばを通ったこともあったのに、今まで気がつかなかったのです。

 我々は、カミナワ族は、これまで文明社会とほとんど接触がなかったと聞いていたので、かなり意外に思ったのですが、三年ほど前から約一年間、オマキザルを研究していたアメリカ人の夫妻が、ここにいたそうです。

 どうやら、二人とも死亡したらしいということでした。この件に関しては、ただでさえ饒舌とはいえないカミナワ族の口が急に重くなり、詳しい事情はわかりません。海老川教授が、小屋の残骸からバッグに入った遺品らしきものを見つけたので、一応中身を調べてから、しかるべきルートを通じて遺族に返却してあげたいと思っています。

 死というものはまったく、我々の行く手のどこに転がっているか、わからないものですね。

 それではまた。

 件名:who's sho

 送信日時:2020.12.21.9:02


 今日は少し、我がアマゾン探検隊のメンバーについて紹介してみたいと思います。


 総勢は、入れ替わりもありますが、常時十五名ほどです。そのうち、ほぼいつも行動を共にしているのは、僕を含めた五人です。

 まず、もっとも強烈なキャラクターを持っているのは、文化人類学の海老川武教授でしょう。

 御年五十五歳になりますが、学生時代からずっとフールドワークを続けているせいか、細身の身体には今でも若者をしのぐパワーが溢れています。そのため、この人と一緒に行動していると、僕などは過労死しかけます。

 真っ黒に日焼けし、頬は肉を削ぎ落したようにこけていて、眉間には、笑っているときでさえも、彫刻刀をいれたような深い皺を刻んだままです。常に自分を厳しく律し、何物をも恐れないという信念の人です。

 大学の同級生だったという奥さんと、二人の年頃の娘さんがいるのですが、この十年ほどはずっと別居しているそうです。

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