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『君の洗濯物が乾くまで』

作者:赤虎鉄馬
最新エピソード掲載日:2026/06/21

【深夜1時、名前も知らない『お兄さん』と私の、30分間のモラトリアム】
「しっかり者のお姉さん」という都合のいいレッテルを貼られ、会社で理不尽にすり減る毎日を送るOLの私。
限界を迎えた夜、私が逃げ込む場所は、街の片隅にある24時間営業のコインランドリーだった。
乾燥機が回る、わずか30分間。
そこで毎日、全く同じ時間に遭遇する、スーツ姿の寡黙な『お兄さん』。
彼はいつも同じ微糖の缶コーヒーを飲み、いつも同じ、少し端の擦り切れた一冊の恋愛小説を読んでいた。
お互いの名前も、仕事も、何も知らない。
だから私は心の中で彼を『お兄さん』と呼び、彼は私のことを『お姉さん』と呼ぶ。
ただそれだけの、他人の関係。
けれど、乾燥機が回る無機質な音と、彼がページをめくる微かな紙の音、そして差し出される缶コーヒーの温もりだけが、ボロボロになった私の心を無条件に宥めてくれた。
名前を知らないからこそ、一番素の自分を見せ合える。
このまま、この穏やかな時間がずっと続くと思っていた。
――あの夜、彼がベンチに一冊の文庫本を置き忘れていくまでは。
それが、私たちの「名前のない30分間」が静かに狂い出す始まりだった。
本に隠された秘密。彼が毎晩そこにいた本当の理由。
そして、徐々に狭まっていく二人の距離の先にある、残酷なカウントダウンとは……?
すり減った日常の隙間で、私たちは確かに救い合っていた。
大人の、苦しくて、愛おしい、名前を持たないラブストーリー。
「お姉さん、僕が毎晩ここにいた理由、本当は気づいてたでしょう」
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