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心残りー水の境界ー

作者:san
最終エピソード掲載日:2026/11/06
の冬の夜更け。難病の症状が現れ始めて足取りがおぼつかない主人公は、無人駅から家へと続く雪解けの田園風景を一人歩いていた。家に通じる道の分岐点にある水路へ差し掛かったとき、主人公は恐ろしい光景を目にする。そこにいたのは、頭に皿を載せ、全身が緑色でクチバシと甲羅を持った、怒りの形相で頭から水をかぶる本物の「河童」だった。
幼少期に読んだ妖怪の知識から、尻子玉を抜かれて命を落とす危険を感じた主人公は激しい恐怖に襲われる。狭い道ですれ違わなければならず、踏ん張る筋力もない自身の体を自覚しながらも、畳んだ傘を刀に見立てて鹿児島伝承の「示現流」の一の太刀で立ち向かうイメージを練り、ポーカーフェイスで完全無視を決め込んで横切ろうと決意する。
接近するにつれ、妖怪「サトリ」のように思考を読まれているのではないかという不安や狼狽が過るが、自らの存在を「宇宙の塵」と割り切り、意を決して至近距離を通り抜ける。河童は皿への水流を止め、冷酷な眼光で主人公を睨みつけ水面に足を浸していたが、襲いかかってくることはなく、主人公は無事に家へ帰り着くことができた。
妻に半泣きで報告するも最初は信じてもらえず、それ以来その場所を避けるようになった主人公。やがて月日が流れ、田園や水路はアスファルトで塞がれ、主人公も車椅子生活となった。昔を懐かしむ主人公は、すみかを奪われていく河童の憤りや、あるいは病で弱っていた自分を河童が見逃してくれたのではないかという思いに馳せながら、かつて「水の境界」だったその場所を散歩するのだった。
夜更けの帰宅
2026/11/06 11:43
記憶
2026/11/06 11:44
勝算
2026/11/06 11:45
月日は流れる
2026/11/06 11:50
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