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べサニーは離婚を願う不憫な夫を今夜も愛している

作者:春風由実
最新エピソード掲載日:2026/06/23

「べサニー、私と離婚して貰えないだろうか?」

妻べサニーが寝室に入って来ると、絨毯の上に座り妻を待っていた夫テオドールは、毎夜同じように切り出した。

「君のためにならないから」
「無価値な私が夫では申し訳ないから」
「君には私なんかよりずっと素晴らしい相手がいるはずだ」
「私のような無価値な者を押し付けられて、君が可哀想だから」

毎夜微妙に変化する理由は聞き流して、べサニーは今夜も甘く囁く。

「旦那さま。夜は長いのですから。隣に座ってお話しいたしましょう?」
「わたくし、ご一緒してくださらないと泣いてしまいますわ」

夫婦でワインを飲み、夜も更けていけば──。

「べサニー、信じられるか?臣下の子どもに『馬鹿か?』と言った翌朝には、弟が王太子に決まっていた」
「べサニー、あの国の王家と貴族家は、一体何がしたかったのだろうか?」
「べサニー、あの国はどうやって存続出来ていたのだろう?」

そして翌朝に記憶が残らなくなる頃、夫は言う。

「べサニー。あの国が私に与えた幸運がひとつだけある。それは何だと思う?」


これはとある王国の貴族の娘べサニーが、ある日突然結婚することになった不憫過ぎる夫を愛でて、愛でて、愛でて、可愛がり、慈しむ日々の記録だ。

今夜も夫婦の語らいは、寝室で同じように始まった。

「べサニー。私と離婚して貰えないだろうか──」


※問題の相手は勝手に自滅して消えてしまったため、ざまぁの場面はありませんが、少しずつ話題に出て来ます。

※アルファポリスにも掲載中です。
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