ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『お前の薬草遊びと茶飲み友達など無価値だ』と言われ離縁しました。翌月、全商会が夫との取引を止めました——私は今、隣国王宮の薬草茶室で働いています

あらすじ
冬の茶は、すぐに冷める。
けれど、冷えたのは茶ではなく、
あなたの言葉だった。

---

「薬草遊び」
「茶飲み友達」
「役に立たない女」

笑い声の混じる広間で、
私は静かに離縁状を受け取った。

湯気は細く揺れ、
やがて見えなくなる。

まるで、
あの日の私の居場所のように。

---

あなたは知らなかった。

眠れぬ商人に、
胃を痛めた老侯に、
長旅に疲れた使節に、

どの葉を、
どの温度で、
どの順番で淹れていたかを。

知らなかった。

香りひとつで、
人の怒りが和らぐことを。

一杯の茶で、
止まりかけた交渉が動き出すことを。

---

だからあなたは捨てた。

温室を。
薬草を。
積み重ねた季節を。

「雑草だ」と笑いながら。

乾いた土の匂いだけが、
冬空に残った。

---

翌月。
港から船が消えた。

商会は扉を閉ざし、
招待状は途絶え、
屋敷から人の気配が消えていく。

静かだった。

恐ろしいほどに。

崩壊とは、
雷のようには来ない。

誰も茶を飲みに来なくなる。
それだけで、世界は終わる。

---

今、私は隣国の王宮にいる。

朝露を含んだミント。
眠りを守るカモミール。
月明かりに香る銀月花。

私は今日も、
誰かのために茶を淹れる。

戦を避けるために。
涙をこぼさぬために。
人が、人でいられるように。

---

「本当の茶飲み友達ですね」

そう笑う声に、
私はようやく気づく。

大切なのは、
誰に価値を決められるかではない。

誰の心を、
温められたかだ。

---

春の庭園。
白い湯気が空へ昇る。

もう、
この茶が冷めることはない。

Nコード
N9463ME
作者名
かおるこ
キーワード
キーワードが設定されていません
ジャンル
異世界〔恋愛〕
掲載日
2026年 05月16日 09時23分
最終掲載日
2026年 05月19日 06時22分
感想
1件
レビュー
0件
ブックマーク登録
33件
総合評価
316pt
評価ポイント
250pt
感想受付
受け付ける
※ログイン必須
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付ける
※ログイン必須
開示設定
開示中
文字数
45,765文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N0572MG| 作品情報| 完結済(全11エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
AIで描かれた絵。 AIで書かれた文章。 AIで作られた音楽。 それを、まるで自分ひとりの才能だけで生み出したように語る人が増えている。 「全部、自分で作りました」 そう胸を張る人もいる。 けれど本当は、何千何万//
N0547MG| 作品情報| 連載(全6エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
お金持ちは 「いくら持っているか」より 「どう生きるか」を大切にする 見栄のために使わず 未来のために育てる 今日の快楽より 明日の自由を選ぶ 人を押しのけるより 人に価値を与えることを考える 時間を粗末にせず //
N0495MG| 作品情報| 完結済(全11エピソード) | 異世界〔恋愛〕
魔力灯が落ちた夜、 あなたはようやく知ったのでしょう。 この屋敷を照らしていたのが、 私だったことを。 誇らしげに掲げていた爵位も、 磨き上げた銀食器も、 貴族たちの笑顔も。 すべて、 契約という細い糸で吊られてい//
N6825MF| 作品情報| 完結済(全28エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
1Kの境界線 「身元保証人は?」 窓口の若い声が、 私の六十七年を、一枚の書類で区切る。 子どもはいない。妻は逝った。 ただそれだけのことが、 この街では「リスク」という名に変わるらしい。 まだ足は動く。 指先は機械の//
N3360MF| 作品情報| 連載(全11エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
憐れみの神エピメニスの涙  天上の神々が黄金の蜜酒に酔い痴れる夜、 オリュンポスの隅で、ひっそりと涙を流す神がいた。 その名はエピメニス、人の「報われぬ祈り」を司る神。  彼は夜風に乗り、地上へと静かに舞い降りる。 //
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ