ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夫は毎晩、若い秘書を抱いて「寒い」と震えていた。壁に埋められた私が、ずっと背中に張りついているとも知らずに

短編
あらすじ
 夫の若い秘書が、社内チャットに一枚の自撮り写真を誤って投稿した。本当は若手社員だけで作った私的なLINEグループに送るつもりだったのだろう。けれど彼女は、うっかり会社のLINE WORKSの雑談チャンネルに投稿してしまった。写真の背景は、私と怜司の寝室だった。彼女は私のシルクのナイトウェアを着て、私が使っていたドレッサーの前に立っている。胸元は大きく開いていた。
 添えられていた言葉は、たった二行だった。
【怜司さんが、奥さんは今いないって】
【今夜、この寝室は私のもの】
 チャンネルは数秒だけ静まり返り、それから既読の数が一気に増えていった。誰かが意味ありげなスタンプを送り、別の誰かが冗談めかして、とうとう奥さんの座に収まったのかと聞いた。彼女が着ているナイトウェアが高価なものだと気づき、もう高梨家の主寝室に入り込んだのかと茶化す者もいた。
 桐谷莉奈は、すぐにもう一言付け加えた。
【怜司さん、今夜はずいぶん元気。でもずっと寒いって言ってて、私を抱いて離してくれない】

 私は黙って、そのメッセージが一つずつ浮かび上がるのを見ていた。怜司が寒がるのは当然だった。だって、私はずっと彼の背中に張りついているのだから。私の遺体は、彼によって主寝室のウォークインクローゼットの奥に作られた壁の中へ封じ込められて、もう三ヶ月になる。
 そこは、世田谷区にあるリフォーム済みの一戸建てだった。結婚後、怜司が購入した家だ。ここなら静かで、人目も少なく、私たちはやり直せる。そう言っていた。隣家とは塀と庭を挟んでいて、主寝室は二階にある。深夜の作業音も、水漏れの修繕だと言えば、誰も深くは聞かなかった。だから彼は私を殺したあと、ウォークインクローゼットの奥を石膏ボードで塞ぎ、継ぎ目をパテで埋め、その上から新しい壁紙を貼った。
 壁紙の糊とパテの匂いは、まだ完全には抜けていない。壁の内側は冷たく、息苦しい。私は毎晩、彼の首筋にぴたりと貼りついて息を吹きかけていた。寒くないはずがなかった。
Nコード
N7440ML
作者名
熾星
キーワード
BK小説大賞2 ダーク 超能力 怪談 サスペンス 復讐 ざまぁ 不倫 裏切り
ジャンル
ホラー〔文芸〕
掲載日
2026年 07月13日 17時00分
感想
0件
レビュー
0件
ブックマーク登録
1件
総合評価
52pt
評価ポイント
50pt
感想受付
受け付ける
※ログイン必須
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付ける
※ログイン必須
開示設定
開示中
文字数
14,928文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N4678MK| 作品情報| 連載(全48エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
【閲覧注意】これは、彼女たちの「悪行」の記録か、それとも「救済」の叫びか――。 親に売られた少女、夫の暴力(DV)に怯える妻、社会から透明人間のように扱われる女たち。 ――「どうして私ばかりが、こんな目に遭わなきゃい//
N1989MM| 作品情報| 完結済(全2エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
 悲劇ヒロインものの恋愛小説に入り込んで、まだ五分も経っていなかった。  私はもう、この物語に出てくる旧財閥系の御曹司が、どれほど理不尽な男なのかを思い知らされていた。  彼の幼なじみである白鳥唯花が、ほんの小さく//
N2098MM| 作品情報| 短編| ヒューマンドラマ〔文芸〕
 佐倉帆夏は、婚前のクルーズ旅行を一日早く切り上げただけだった。  それなのに、婚約者の黒瀬悠真は彼女に別れを切り出した。  沖縄航路のクルーズ旅行、最後の夜だった。窓の外の海は夕日に染まり、レストランには静かなピア//
N0768ML| 作品情報| 連載(全30エピソード) | 異世界〔恋愛〕
~スポットライトの裏側で、執着な大妖に愛を乞われる~ 京都郊外の撮影所で起きたワイヤー事故。 売れない脇役俳優・佐伯蓮は、主演俳優を救うために飛び出し、俳優生命を揺るがす傷を顔に負ってしまう。 もう終わりだ。 そう思//
N1940MM| 作品情報| 短編| ホラー〔文芸〕
 午前三時、知らない番号から電話がかかってきた。受話口から聞こえてきたのは、低く掠れた男の声だった。私が一生忘れられない、あの声だった。 「英子、会いに来てくれよ。俺たち、ずいぶん会ってないだろ」  その瞬間、全身の//
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ