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からだのことば ─ 体の声がきこえる ─

あらすじ
 血液が、体の外を流れている。
 透明なチューブの中を、赤い液体がゆっくりと巡っている。東崎総合病院・血液浄化センター。十六床のベッドに、十六人の患者がいる。それぞれの腕に針が刺さり、それぞれの血液が機械を通って、また体に戻っていく。週に三回、一回四時間。この機械がなければ、彼らは生きていられない。
 その機械を動かすのが、臨床工学技士だ。
 新人CE・柏木陽介は、入職初日に扉の前で三分間立ち尽くした。「三分も?」と同期の三浦桜に突っ込まれながら、ようやく扉を開ける。瞬間、複数の匂いが来た。機械の唸り。アラーム音。チューブの中を流れる赤。そして「なくてはならん仕事や」と右手を振る、透析歴十二年の田中さんの笑顔。
 先輩CE・真田浩二は怖い。口が悪く、褒めない。しかし患者の前では誰よりベッドサイドを離れない。初日に彼は言った。「生化学を知らないCEは、地図を持たずに工場の中を歩き回っているのと同じだ」
 地図とは何か。体という工場の、細胞レベルの地図。なぜ血液は体の外に出られるのか。腎臓は本当は何を守っているのか。カリウムが上がると、心臓に何が起きるのか。pH7.08という数字の向こうで、患者の体の中では何が起きているのか。
 養成校で習った生化学の知識が、透析室の患者たちの声と数字に触れるたびに、別の顔をして立ち上がってくる。論理で考える陽介と、感覚で核心に触れる桜。凸凹の二人が、真田の背中を追いながら、体の言語を少しずつ手に入れていく。
 体は、黙っていない。
 血液の中に数字を置き、信号を出し、化学反応で語り続けている。その声が聞こえるようになったとき、機械の向こうにいる人間が、初めて見えてくる。
 臨床工学技士の仕事と生化学の知識が、患者の生きた声と繋がっていく医療お仕事小説。
Nコード
N3516MG
作者名
智有 英土
キーワード
集英社小説大賞7 男主人公 女主人公 和風 現代 職業もの 群像劇 日常 お仕事小説 医療 臨床工学技士 医療従事者 医療小説 生化学 病院
ジャンル
ヒューマンドラマ〔文芸〕
掲載日
2026年 05月28日 18時00分
最新掲載日
2026年 06月04日 18時00分
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文字数
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