[会社法・株主平等の原則と例外]現場編 「社長の百株は特別だ」の嘘。配当ゼロの職人たちと、八百株を裏切ったワンマン社長の誤算
会社の株を持っていれば、誰でも平等。
そう聞くと、少し安心します。
けれど。
百株持っている人と、五百株持っている人。
二人がまったく同じ金額をもらえるとしたら。
それは本当に、平等なのでしょうか。
そして。
同じ株を持っているのに。
「お前は従業員だから配当なし」
「俺は社長だから特別扱い」
そんなことが許されるのでしょうか。
昭和六十三年。
片桐行政書士事務所。
その日の私は、会社というものが、案外、人間の好き嫌いで動こうとすることを知りました。
そして。
その好き嫌いを止めるために。
商法には、とても単純で、とても強力な考え方があることも。
――株主平等の原則。
たった七文字。
でも。
この七文字を甘く見た社長は。
最後に、自分の作った議事録を見て、真っ青になることになります。
「配当金が、ゼロなんです」
朝九時。
事務所を訪れた男性は、そう言いました。
「……ゼロ?」
私は聞き返しました。
「はい。会社は黒字なのに、私たちだけ、一円ももらえないんです」
男性の名前は、杉本和夫さん。
四十八歳。
町工場で旋盤工として働いている方でした。
指には、長年の仕事でできた傷。
爪の間には、洗っても落ちない油の跡。
その隣には、もう一人。
五十五歳の女性。
経理を担当している村井澄子さんです。
二人が勤めるのは、
――東浜精密工業株式会社。
自動車部品の加工を手がける、地元の小さな株式会社でした。
「私たち、従業員なんですが」
杉本さんが言いました。
「株主でもあるんです」
「従業員持株ですか?」
「ええ。会社を作るとき、みんなでお金を出しました」
なるほど。
中小企業では、よくある話です。
会社を立ち上げるとき。
社長一人では資金が足りない。
そこで親戚や知人、従業員にも出資してもらう。
会社が大きくなれば、株主も利益を受けられる。
そんな約束です。
「何株お持ちなんですか?」
「私は百株です」
「私は二百株です」
村井さんが答えました。
「ほかにも、創業時から支えている方が?」
「ええ。先代社長の奥さんが五百株持っています」
私はメモしました。
杉本さん。
百株。
村井さん。
二百株。
先代社長の妻、東浜春江さん。
五百株。
合計八百株。
「今の社長は?」
私が尋ねると、杉本さんの顔が曇りました。
「東浜剛三です。先代社長の弟で、今の社長です」
「何株ですか?」
「二百株です」
なるほど。
合計千株。
そのうち、社長自身は二百株。
残り八百株を、ほかの人たちが持っている。
「会社の株式は全部同じ種類ですか?」
私が聞くと、村井さんは頷きました。
「はい。創業以来、普通の株式だけです」
「それで、配当金が?」
「社長だけ、二十万円もらうと言い出したんです」
私は鉛筆を止めました。
「……二十万円?」
「はい」
「ほかの株主は?」
「全員ゼロです」
……。
え?
私は思わず顔を上げました。
「社長だけ?」
「そうです」
「同じ種類の株なのに?」
「はい」
「持っている株は、社長が二百株ですよね?」
「そのとおりです」
私は机の上に並んだ資料を見ました。
株主名簿。
会社の定款。
そして。
先日開かれたという株主総会の議事録の写し。
そこには、信じられない一文がありました。
――今期利益配当金二十万円については、代表取締役東浜剛三に全額を支給するものとする。
理由。
――社長としての経営努力を評価するため。
……。
ちょっと待ってください。
それ。
配当金なんですか?
社長への賞与ではなく?
「これ、社長さんが勝手に決めたんですか?」
「そうなんです」
杉本さんが拳を握りました。
「俺たちは、給料が少なくても我慢してきました。設備が古くなれば修理して、休日も出て……」
声が震えます。
「先代社長が亡くなってから、今の社長に変わったんです。でも、会社は俺たちも出資して作った会社なんです」
「それなのに」
村井さんが続けました。
「社長は、私たちの株を紙切れみたいに扱うんです」
私は議事録を見つめました。
そこに書かれていたのは。
株主全員の利益ではなく。
一人の社長の都合でした。
「それ、駄目です!」
私は勢いよく立ち上がりました。
「会社法百九条です!」
杉本さんが目を丸くしました。
「かいしゃほう?」
「はい!」
私は得意になって言いました。
「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならないんです!」
完璧。
行政書士試験で覚えた条文です。
百九条一項。
株主平等の原則。
これこそ、今回の決定打。
「つまり!」
私は言いました。
「同じ種類の株式なら、原則として株数に応じた配当をしなければならないんです!」
ところが。
「……おい」
相馬先輩の低い声。
私は振り返りました。
「はい?」
「今、何法って言った?」
「会社法です!」
「会社法?」
「はい!」
「そんな法律、うちの六法に載ってねえぞ」
……。
あ。
しまった。
私は固まりました。
会社法。
平成十七年に制定され、平成十八年に施行された法律。
つまり。
昭和六十三年には。
存在しません。
「……商法です」
「何?」
「商法第二編です……」
相馬先輩は眉をひそめました。
「お前、また妙な条文を覚えてきたな」
「いえ、その、勉強熱心なもので!」
「勉強するなら今の法律を勉強しろ」
「はい……」
危ない。
未来人。
またやりました。
現代なら会社法百九条。
でも、ここは昭和六十三年。
株式会社の規律は、商法の会社編にあります。
ただし。
法律の名前が違っても。
株主を不当に差別してはいけないという基本的な考え方は、この時代にも存在します。
「でも先輩!」
「何だ」
「株主平等の原則自体はありますよね!」
「ああ」
「じゃあ今回の件は!」
「まず、定款と議事録を見ろ」
「……はい?」
「株主が誰で、何株持っていて、どんな決議がされたのか。そこを確かめろ」
片桐所長も口を開きました。
「こはる」
「はい」
「株主平等とは、全員に同じ金額を渡すことではない」
「……はい」
「まず株式を見ろ」
所長は定款を指差しました。
「同じ権利の株式なのか。それとも、異なる権利を持つ株式なのか」
私は定款を開きました。
東浜精密工業株式会社。
昭和五十四年設立。
株式譲渡には取締役会の承認が必要。
発行済株式総数。
千株。
種類の異なる株式についての定めはありません。
「普通の株式だけです」
「そうだ」
「じゃあ、配当を社長一人に集中させる理由はありません!」
「そのとおり」
相馬先輩が頷きました。
「ただし、もう一つ調べるぞ」
「何ですか?」
「その議事録だ」
先輩は紙を持ち上げました。
「本当に、株主総会で決まったことなのか?」
私は議事録を見ました。
そこには。
妙な数字が並んでいました。
株主総会。
出席株主。
東浜剛三。
一名。
出席株式数。
千株。
……。
あれ?
「先輩」
「気づいたか」
「社長は二百株しか持ってませんよね?」
「ああ」
「なのに、出席株式数が千株?」
「そうだ」
「ほかの八百株は?」
「そこだ」
相馬先輩がにやりとしました。
杉本さんが不安そうに言いました。
「俺たちは、総会なんか出てません」
「招集通知は?」
「来てません」
村井さんも頷きました。
「私もです。春江さんにも確認しましたが、何も届いていないそうです」
「委任状は?」
「書いてません」
「社長に議決権を任せましたか?」
「いいえ!」
私は議事録を見直しました。
出席株式数。
千株。
議決権行使。
満場一致。
……。
そんなはずがありません。
実際には、二百株を持つ社長しか出席していない。
それなのに。
千株全部が出席したことになっている。
しかも。
全会一致。
「これ……」
私は顔を上げました。
「議事録がおかしくありませんか?」
「おかしいな」
相馬先輩が言いました。
「かなりな」
片桐所長は無言で、議事録の一行に赤鉛筆を引きました。
――出席株式数 千株。
そして、もう一行。
――満場一致で承認可決。
「こはる」
「はい」
「会社が作った書面を、会社の事実と取り違えるな」
所長の声は静かでした。
「書いてあることと、実際にあったことは別だ」
私は頷きました。
議事録。
ただの記録ではありません。
株主総会で何が決まったのかを示す、重要な書面です。
その書面に。
実際には出席していない株主を、出席したことにする。
さらに。
全員が賛成したことにする。
それは。
会社の意思決定そのものを、偽っている可能性があるのです。
「社長は俺だ!」
翌日。
東浜精密工業の応接室。
私たちの前で、東浜剛三社長は怒鳴りました。
五十代半ば。
派手なネクタイ。
金色の腕時計。
応接室には、大きな革張りの椅子。
そして壁には、
――経営は決断なり。
という額。
……。
嫌な予感しかしません。
「行政書士が、うちの会社に何の用だ!」
剛三社長は机を叩きました。
相馬先輩は、落ち着いて言いました。
「株主から相談を受け、事実関係を確認しています。会社のお考えも伺いたい」
「株主?」
「杉本さんと村井さんです」
「あいつらか!」
社長は鼻で笑いました。
「職人と事務員だろ!」
「株主でもあります」
「だから何だ!」
……。
うわ。
この人。
本当に分かっていません。
「会社の金は、俺が稼いだ金だ!」
剛三社長は胸を張りました。
「取引先を回って、銀行から金を借りて、経営してるのは俺だ!」
「それは社長としてのお仕事ですね」
私が言いました。
「当たり前だ!」
「でも、株主としての権利とは別です」
「何だと?」
「社長だからといって、株主への配当を好きに決めていいわけではありません」
社長は笑いました。
「お嬢ちゃん」
「はい」
「会社ってのはな、教科書どおりに動くもんじゃねえんだよ」
……それは分かります。
でも。
「法律には従わないといけませんよね」
「法律?」
社長は大笑いしました。
「俺がこの会社の法律だ!」
出ました。
典型的なワンマン社長発言。
私は心の中で、赤鉛筆を三本折りました。
「だいたい!」
社長は続けました。
「株主は平等だなんて言うがな、社長と従業員が同じ扱いでいいわけねえだろ!」
私は答えました。
「経営上の役割は違います」
「そうだろ!」
「でも株主としての権利は、別です」
社長の笑みが消えました。
「何?」
「株主平等の原則は、社員としての立場や社長としての地位ではなく、株式の権利内容と数を基準にする考え方です」
「難しいこと言うな!」
「簡単に言います」
私は紙に数字を書きました。
百株。
二百株。
五百株。
「同じ権利の株式なら、一株当たりの配当額は同じように扱うのが原則です」
「……」
「社長が偉いから百株分を千株分として扱う、ということはできません」
剛三社長の顔が赤くなりました。
「だったら、定款で決めればいいだろ!」
その瞬間。
私は、はっとしました。
定款。
……そうだ。
現代の会社法なら。
非公開会社では、一定の事項について、株主ごとに異なる扱いを定款で定めることができます。
配当。
残余財産の分配。
議決権。
いわゆる、属人的な定め。
でも。
ここは。
昭和六十三年です。
「あ……」
私は思わず呟きました。
相馬先輩が横から言います。
「どうした、こはる」
「いえ……その……」
現代の会社法百九条二項。
これも、まだ存在しない。
しかも今回、そもそも定款には株主ごとの特別な配当の定めなどありません。
「社長」
相馬先輩が静かに言いました。
「定款には何と書いてありますか」
「は?」
「社長だけ特別な配当を受けると、書いてありますか」
「そんなもの、これから書けばいい!」
「今の定款には、ありませんね」
「だったら変更する!」
「定款変更にも、商法に従った手続が要ります」
先輩は剛三社長を見ました。
「それと、好きな内容を何でも書けるわけじゃありません」
「何だと?」
「会社の定款は、社長の落書き帳じゃねえんですよ」
……。
先輩。
今日も切れ味が鋭い。
剛三社長は顔を引きつらせました。
「そんなに言うなら、裁判でも何でもしろ!」
相馬先輩は表情を変えませんでした。
「その前に、一つ確認します」
「何だ!」
「株主総会の議事録です」
先輩が写しを机に置きました。
「出席株式数が千株となっていますね」
「ああ」
「実際に来た株主は?」
「俺だ」
「ほかの株主は?」
「来てねえ」
「委任状は?」
「……」
「ありませんか?」
「いちいち取ってられるか!」
……。
あ。
言いました。
「では、なぜ千株が出席したことになっているんですか」
先輩が尋ねました。
「何で満場一致なんですか」
社長は黙りました。
相馬先輩は続けました。
「実際の出席は二百株。ほかの株主は招集通知も受けていないと聞いています」
「だから何だ!」
「その議事録、本当に事実どおりですか?」
「……」
「議事録を作ったのは誰です?」
「経理に作らせた」
村井さんが小さく首を振りました。
「私は作っていません」
社長がぎくりとしました。
「別の者だ!」
「では、作成経緯を確認してください」
相馬先輩は議事録を指差しました。
「存在しない出席や賛成を記載したなら、問題は配当だけじゃ済みませんよ」
剛三社長の額に、汗が浮かびました。
でも。
「……帰れ」
社長は低い声で言いました。
「これ以上、うちの会社に口出しするな」
相馬先輩は頷きました。
「分かりました」
「えっ?」
私は先輩を見ました。
「帰るんですか?」
「ああ」
「でも!」
「必要な事実は聞いた」
先輩は立ち上がりました。
「社長。今後のことは、株主ご本人から書面でお伝えすることになります」
「勝手にしろ!」
剛三社長は吐き捨てました。
私たちは応接室を出ました。
工場の前では、旋盤の音が響いていました。
ガシャン。
ガシャン。
機械の前で働く職人たち。
油に汚れた作業着。
そこには、社長の言う「会社の金」を、本当に稼いでいる人たちがいました。
「先輩」
「何だ」
「あんなに偉そうなのに」
「ああ」
「社長って、二百株しか持ってないんですよね」
「そうだ」
「残りの八百株は、ほかの人が持ってる」
「そこが面白いところだな」
相馬先輩は笑いました。
「社長が一番偉いんじゃねえ」
「はい」
「会社のルールを守った奴が勝つんだよ」
私は頷きました。
そして。
この事件の本当の急所が、ようやく見えた気がしました。
その日の午後。
片桐行政書士事務所。
私たちは、机いっぱいに書類を広げました。
定款。
株主名簿。
株券の控え。
株主総会議事録。
そして、会社の決算書。
「よし」
相馬先輩が言いました。
「こはる。まず数字を書け」
「はい!」
私はノートを開きました。
東浜精密工業株式会社。
発行済株式総数、千株。
株主。
杉本和夫――百株。
村井澄子――二百株。
東浜春江――五百株。
東浜剛三――二百株。
「じゃあ、一株当たりの配当を百円としたら?」
相馬先輩が聞きました。
「杉本さんは一万円です!」
「村井さんは?」
「二万円!」
「春江さんは?」
「五万円!」
「社長は?」
「二万円です!」
合計。
十万円。
私は大きく丸をつけました。
「じゃあ、配当総額が二十万円なら?」
私は計算しました。
一株当たり二百円。
杉本さん。
二万円。
村井さん。
四万円。
春江さん。
十万円。
社長。
四万円。
合計二十万円。
「なるほど……」
私は呟きました。
「社長だけ二十万円というのは、おかしいですね」
「だろ」
「同じ種類の株を持っているのに、社長だけ特別に扱っています」
「そうだ」
片桐所長が静かに言いました。
「ただし、気をつけろ」
「はい?」
「利益が出たからといって、必ず配当しなければならないわけではない」
「あ……」
「会社には、資金を残す必要もある。配当できる限度や手続もある」
私は頷きました。
そうです。
黒字だから、必ず配当。
それは違います。
会社は利益を内部に留保することもできます。
設備投資。
借入金の返済。
将来の事業資金。
必要なことは、たくさんあります。
でも。
「配当しないなら、適法な手続で配当しないと決める」
「そうだ」
「配当するなら、株式の権利内容に従って公平に扱う」
「そのとおり」
所長は頷きました。
「社長の気分で変えるものではない」
私はノートに書きました。
――平等とは、同じ金額ではなく、同じ権利を同じ基準で扱うこと。
なるほど。
これが株主平等の原則。
私は少し嬉しくなりました。
でも。
相馬先輩が言いました。
「まだ終わりじゃねえぞ」
「え?」
「配当だけじゃない。議決権もだ」
先輩は株主名簿を指差しました。
「一株一議決権で考えると、社長は?」
「二百です」
「ほかの三人は?」
「八百です」
「つまり?」
「社長は、全体の二割しか持っていません!」
「そうだ」
私は息を呑みました。
社長は、自分が会社そのものだと思っている。
でも。
株主としては、二割。
ほかの八割を、従業員たちと先代社長の妻が持っている。
「先輩」
「何だ」
「これ、社長が好き勝手に決められる構造じゃないですよね」
「ああ」
「しかも株主総会の議事録には、千株全部が出席したと……」
私は赤線を引かれた議事録を見ました。
千株。
満場一致。
……。
実際は二百株。
「所長!」
「何だ」
「これって、単に配当の不公平だけじゃなくて、株主総会の決議そのものが問題になりますよね!」
「そうだ」
所長は短く答えました。
「ただし、決議の不存在、取消し、無効など、どの問題になるかは、実際の手続と瑕疵を調べて判断する必要がある」
「はい」
「我々が裁判所の判断を代わりに下すわけじゃない」
「分かりました」
私は深く頷きました。
そして。
「だったら内容証明です!」
勢いよく言いました。
相馬先輩が笑いました。
「ようやく、うちの仕事に戻ってきたな」
内容証明郵便。
それは、相手を怒鳴りつけるための書面ではありません。
いつ。
誰が。
誰に。
どんな内容を通知したのか。
その内容を証拠として残すための仕組みです。
もちろん、書いたことが自動的に正しいと証明されるわけではありません。
だからこそ。
嘘を書いてはいけない。
法律上の結論を、根拠なく断定してはいけない。
そして。
本人の意思と事実を、丁寧に確認しなければならない。
「こはる」
片桐所長が言いました。
「株主ご本人たちに、通知の内容と意思を確認する」
「はい」
「それから原案を作れ」
「はい!」
私は机に向かいました。
差出人。
杉本和夫。
村井澄子。
東浜春江。
三名の連名。
宛先。
東浜精密工業株式会社。
代表取締役東浜剛三。
本文。
私は一行ずつ書いていきました。
――通知人らは、貴社の株主として、それぞれ百株、二百株、五百株を保有する。
――貴社の発行済株式は、同一内容の株式千株であり、定款上、特定の株主にのみ利益配当を集中させる旨の定めは認められない。
――しかるに、昭和六十三年某月某日付の株主総会議事録には、代表取締役東浜剛三に利益配当金二十万円全額を支給する旨の記載がある。
――当該取扱いについては、株主平等の原則との関係で、重大な疑義がある。
「うん」
相馬先輩が頷きました。
「続けろ」
「はい」
私は息を吸いました。
――また、右議事録には、出席株式数を千株とし、満場一致により承認可決した旨の記載がある。
――しかし、通知人らはいずれも当該株主総会に出席しておらず、議決権行使の委任もしていない。
――さらに、通知人らは招集通知を受領していない。
――よって、右議事録の記載は、通知人らの認識する事実と一致しない。
相馬先輩が言いました。
「そこだ」
「はい?」
「議事録が間違っていると言うだけじゃなく、何がどう違うかを書け」
「はい!」
「誰が出席していないのか。委任状があるのか。通知が届いたのか」
私は頷きました。
事実。
事実。
事実。
法律の刃は、事実がなければ振るえません。
私は続きを書きました。
――通知人らは、貴社に対し、当該株主総会の招集手続、出席状況、議決権行使の状況及び利益配当決議の根拠について、書面による説明を求める。
――併せて、未実施の配当については、その適法性が確認されるまで実行を控え、議事録の記載及び必要な是正手続について再検討されたい。
私は最後の一文を書きました。
――なお、適切な対応がなされない場合、通知人らは弁護士に相談のうえ、株主総会決議の効力を争う手続その他の法的措置を検討する。
書き終えました。
「どうでしょう!」
所長が原案を読みました。
一行。
二行。
三行。
そして。
赤鉛筆が動きました。
「ここ」
「はい!」
「『配当金二十万円は全額株主に返還されるべきである』」
「あ……」
「まだ支払われていないのだろう」
「はい」
「ならば、返還ではない」
「そうですね……」
赤線。
「次」
「はい」
「『社長は必ず損害賠償責任を負う』」
赤線。
「これも駄目ですか?」
「今の資料だけでは断定できない」
「……はい」
「取締役の任務違反や会社の損害が問題になる可能性はある。だが、要件を確認せずに決めつけるな」
私は慌てて直しました。
相馬先輩が横から言いました。
「脅せば勝てると思うな」
「はい……」
「相手に本当に怖いと思わせるのは、怒鳴り声じゃねえ」
「……何ですか?」
「逃げられない事実だ」
私は書面を見直しました。
株式数。
定款。
議事録。
招集通知。
委任状。
配当金。
どれも、具体的なものです。
社長が、
「俺が法律だ!」
と叫んでも。
株主名簿の数字は変わりません。
それが。
少し、痛快でした。
ところが。
翌日。
事件は、思いがけない方向に動きました。
「こはる!」
相馬先輩が私を呼びました。
「はい!」
「社長が、こんなものを送ってきたぞ」
封筒の中には、一枚の紙。
タイトル。
――定款変更案。
私は読みました。
そこには。
――代表取締役である株主については、他の株主に優先して利益配当を受けることができる。
と書かれていました。
「……え?」
しかも。
下には社長の手書き。
――これで文句はないだろう。
私は固まりました。
……なるほど。
そう来ましたか。
社長は、自分に都合のいい条文を定款に書けば、問題が消えると思っているらしいのです。
「先輩」
「何だ」
「これ、現代ならちょっと考えなきゃいけない論点ですよね」
「現代?」
「あっ!」
私は慌てて口を押さえました。
相馬先輩が怪訝な顔をします。
「また訳の分からんこと言ってるな」
「すみません!」
でも、私は頭の中で必死に整理しました。
現代の会社法。
百九条二項。
非公開会社では。
配当を受ける権利。
残余財産の分配を受ける権利。
株主総会の議決権。
この三つについて、定款で株主ごとに異なる取扱いを定めることが認められています。
つまり。
現代なら、一定の条件と手続のもとで、株主ごとに違う権利を設けられる場合がある。
ただし、それも社長の独断で決められるわけではありません。
定款に適法に定める必要がある。
定款変更には、必要な株主総会決議がいる。
そして。
今回の昭和六十三年の商法に、現代の会社法百九条二項を持ち込むことはできない。
……。
ややこしい!
私は頭を抱えました。
「こはる」
片桐所長が言いました。
「何を悩んでいる」
「あ、いえ……」
「この会社の定款を変更するのに、誰の意思が必要だ」
「株主総会です!」
「そうだ」
「社長一人では変更できません!」
「うん」
「しかも、株主の権利に関わる重要な変更ですから、商法の要件に従った決議が必要です!」
所長が頷きました。
「そのとおり」
相馬先輩が株主名簿を机に置きました。
「で、社長は何株持ってる?」
「二百株です!」
「ほかの三人は?」
「八百株!」
「じゃあ、どうするつもりだろうな」
先輩が笑いました。
私は、はっとしました。
そうです。
社長は、会社の株式の二割しか持っていない。
定款を変更しようにも、残り八割を無視することはできない。
まして。
この定款変更案。
自分だけを優遇するための内容です。
「先輩!」
「何だ」
「これ、社長は自分の立場が分かっていないんじゃないですか?」
「ああ」
「会社の代表者であることと、株式の大多数を持っていることは別なのに!」
「そこだ」
相馬先輩は、定款変更案を指で叩きました。
「こいつは社長の椅子に座ってるうちに、会社まで自分のものだと思い込んじまったんだろうな」
私は書面を見ました。
――これで文句はないだろう。
……。
あります。
むしろ。
文句しかありません。
片桐所長は、短く言いました。
「この案も、資料として保存しておけ」
「はい!」
「ただし、今の定款と、まだ成立していない変更案を混同するな」
「はい!」
私は二つの書類を分けました。
一つは、現在の定款。
もう一つは、社長が勝手に書いた定款変更案。
紙に書いただけでは。
会社のルールにはならないのです。
三日後。
杉本さんたち三名の確認を受けた内容証明郵便が、会社に届きました。
その日の夕方。
片桐行政書士事務所の電話が鳴りました。
「はい、片桐行政書士事務所です!」
『……片桐さんはいるか』
低い声。
私はすぐに分かりました。
剛三社長です。
「少々お待ちください」
所長に受話器を渡しました。
「片桐です」
『あの……届いた書面のことで』
「はい」
『弁護士に見せたんだが……』
私は耳を澄ませました。
『その……株主平等ってやつは、本当にあるのか?』
「当時の商法の下でも、認められている基本原則です」
『……そうか』
社長は黙りました。
それから。
『同じ株を持っている人間に、俺だけ特別に配当するのは、まずいって言われた』
所長は答えました。
「本件の定款と株式の内容を前提にすれば、当然検討すべき問題です」
『それから……』
「はい」
『議事録が……』
社長の声が、小さくなりました。
『出席してない株主を、出席したことにしているのは、かなり問題だと』
私は相馬先輩を見ました。
先輩は黙って煙草を消しました。
『弁護士には、株主総会決議の効力を争われる可能性があると言われた』
「そうですか」
『それに、取締役としての責任まで問題になることがあるって……』
所長は、落ち着いて聞いています。
『もし会社に損害を与えたら、俺個人の責任になることもあるんだろ?』
「個別の事実と法律上の要件によります。必要であれば、引き続き弁護士に相談されるのがよいでしょう」
『……』
沈黙。
長い沈黙。
そして。
『……配当の件は、撤回する』
私は思わず背筋を伸ばしました。
『まだ金は動かしてない。二十万円の支払いも止めた』
「そうですか」
『議事録も……事実と違うところを確認する』
「その経緯についても、適切に確認なさってください」
『それで……』
社長は、ためらうように言いました。
『杉本たちには、どう伝えればいい?』
「ご本人たちに、事実と今後の方針を書面でお伝えになるのがよいでしょう」
『……分かった』
電話が切れました。
私は拳を握りました。
「所長!」
「何だ」
「折れましたね!」
「ああ」
「社長、折れました!」
相馬先輩が笑いました。
「まだ全部終わったわけじゃねえぞ」
「……はい!」
「議事録の誤りをどう整理するか。株主総会を適法に開き直す必要があるか。そこも確認しなきゃならねえ」
「はい!」
「配当するかどうかも、株主総会で適法に決める話だ」
私は頷きました。
そうです。
内容証明一通で、魔法のようにすべてが解決するわけではありません。
でも。
社長の独断は、止まりました。
そして。
それが何より、大きかったのです。
翌週。
東浜精密工業では、弁護士の助言も受けながら、問題の総会手続について確認が進められました。
事実と異なる議事録の記載は、適切な方法で整理することになりました。
例の二十万円の配当は実施されず、定款変更案も取り下げられました。
そのうえで。
会社は、改めて適法な手続に従い、利益配当を検討することになったのです。
結局。
今期は設備更新を優先し、配当を見送る方針について、株主たちが説明を受けました。
私は最初、少し残念に思いました。
だって。
杉本さんたちは、配当をもらえなかったのですから。
でも。
「それでいいんです」
杉本さんは、そう言いました。
「え?」
「会社のために金を残すなら、俺たちは納得できるんです」
その手には、新しい設備の購入計画書がありました。
「古い旋盤が、そろそろ限界でしてね」
杉本さんが笑いました。
「買い替えてくれたら、若い連中も仕事がしやすくなる」
「……そうなんですね」
「俺たちが怒ったのは、金をもらえなかったからだけじゃないんです」
杉本さんは、ゆっくり言いました。
「社長だけが株主みたいに扱われたことが、悔しかったんです」
私は黙りました。
村井さんも頷きました。
「私たちも、会社の一部なんです」
その言葉に。
私は胸が少し熱くなりました。
社長。
従業員。
役員。
職人。
経理担当。
肩書きは違います。
仕事の内容も違います。
給料も違う。
責任も違う。
でも。
同じ権利内容の株式を持っているなら。
株主としての地位まで、社長の好き嫌いで変えられてはいけない。
そこを守るのが。
株主平等の原則なのです。
「ところで」
村井さんが、少し笑いました。
「社長、最近おとなしくなったんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。前は何でも『俺が決める!』だったのに」
杉本さんも笑いました。
「この前なんか、設備のことで俺たちの意見を聞いてきましてね」
「へえ!」
「『この旋盤、まだ使えるか』って」
私は思わず笑いました。
「あの社長さんが?」
「ええ」
杉本さんは、少し照れくさそうに言いました。
「まあ、急にいい社長になるとは思ってませんけど」
「はい」
「でも、会社は一人のものじゃないって、少しは分かったんじゃないですかね」
私は頷きました。
そうかもしれません。
商法は、社長を懲らしめるためだけの法律ではありません。
会社を、誰か一人の欲望で壊さないためのルール。
そこには。
働く人も。
出資した人も。
会社にお金を貸した人も。
取引先も。
たくさんの人が関わっています。
だからこそ。
会社は、一人の人間の気分で動かしてはいけないのです。
二人が帰ったあと。
私は机に向かっていました。
目の前には、四人の株主を書いたメモ。
百株。
二百株。
五百株。
二百株。
私は、もう一度計算してみました。
「……面白いですね」
ぽつりと呟くと、相馬先輩が顔を上げました。
「何が」
「株主平等って、最初は全員同じ扱いにすることだと思ってました」
「違っただろ」
「はい」
私はノートを指差しました。
「百株の人と五百株の人は、株数が違うから、配当額も原則として違う」
「そうだ」
「でも、同じ種類の株なら、一株当たりの取扱いは平等」
「ああ」
「そして、違う内容の株式なら、その権利の違いも考える」
「そうだな」
私は頷きました。
株主平等。
単純な言葉。
でも。
ただの「みんな同じ」ではありません。
株式の内容。
株式の数。
この二つを見る。
そこを間違えると、今回の社長のように。
会社を、自分の財布だと勘違いしてしまうのです。
「先輩」
「何だ」
「ちなみに、種類の違う株式なら、配当が違うこともありますよね?」
「あるな」
「じゃあ、最初から権利の違う株式を発行していたら、今回と同じ結論にはならない場合もありますよね」
相馬先輩が頷きました。
「そうだ。ただし、定款や商法の手続が必要だし、何でも自由に決められるわけじゃねえ」
「なるほど……」
私は少し考えました。
種類株式。
株主平等。
定款。
議決権。
配当。
これらは、全部つながっている。
そして。
現代の会社法には、さらに面白い仕組みがあります。
非公開会社で、定款によって株主ごとに権利を変えるという例外。
配当。
残余財産。
議決権。
でも。
その制度は、この昭和六十三年には、まだありません。
私は思わず呟きました。
「……会社法百九条二項って、すごいんですね」
「何?」
相馬先輩がこちらを見ました。
「い、いえ!」
「また変な法律か?」
「何でもありません!」
「お前なあ……」
相馬先輩はため息をつきました。
片桐所長が、奥から静かに言いました。
「こはる」
「はい!」
「定款とは、何のためにある」
「会社の基本的なルールを定めるためです!」
「では、株主総会とは」
「株主が、会社の重要な事項について意思決定する場です!」
「そうだ」
所長は帳簿を閉じました。
「会社を作るときには、多くの人の力を借りる」
「はい」
「昭和の株式会社なら、発起人も七人以上必要だ」
「そうですね」
「取締役も三人以上、監査役も必要になる」
「はい」
「だから、人数だけそろえようとする者もいる」
私は頷きました。
現代なら。
一人で株式会社を作ることもできる。
取締役も一人で足りる会社がある。
資本金一円でも設立可能。
でも、この時代は違います。
株式会社を作るだけでも、多くの人が必要になる。
そして。
最初は形だけのつもりでも。
本当に出資して株主になれば、そこには法律上の権利が生まれる。
「今回の社長も」
私は言いました。
「会社を作るときには、ほかの人にお金を出してもらっていたんですよね」
「そうだ」
「なのに、会社が大きくなったら、その人たちを邪魔者みたいに扱った」
所長が頷きました。
「人の金で会社を作っておきながら、その人の権利を忘れる者はいる」
私は黙りました。
その言葉が、妙に重く感じられました。
「でも」
所長は続けました。
「商法は忘れない」
……。
私は思わず顔を上げました。
「誰が何株持っているか」
「はい」
「その株に、どんな権利があるか」
「はい」
「その権利を、どう扱うべきか」
所長は、株主名簿を指差しました。
「そこに、社長の好き嫌いを持ち込むなということだ」
私は頷きました。
なるほど。
たった千株。
小さな町工場。
社長の椅子。
従業員の作業着。
見た目の立場は違っても。
株主名簿に書かれた数字は、誰のものでも同じ重さを持っています。
百株は、百株。
二百株は、二百株。
五百株は、五百株。
社長だから、勝手に千株にはならない。
それが。
株主平等の原則なのです。
「ところで、こはる」
相馬先輩が言いました。
「はい?」
「さっきの計算、もう一回やってみろ」
「はい!」
「一株当たり百円の配当。百株の人は?」
「一万円!」
「二百株なら?」
「二万円!」
「五百株なら?」
「五万円!」
「よし」
私は得意になりました。
「簡単ですよ!」
「じゃあ、社長が二百株持ってて、自分だけ二十万円もらうって言ったら?」
「駄目です!」
「何でだ」
「同じ内容の株式なのに、株数に応じた公平な取扱いをしていないからです!」
「よし」
私はにっこり笑いました。
完璧。
今日の株主平等。
もう忘れません。
「じゃあ」
相馬先輩が続けました。
「会社に利益が出たら、株主は必ず配当をもらえるか?」
「……いいえ!」
「ほう」
「利益が出ても、必ず配当するとは限りません。配当の可否や手続は商法に従って判断します!」
「よし」
先輩が笑いました。
「少しは分かってきたな」
「褒めましたね!」
「調子に乗るな」
「褒めましたよね!」
「やかましい」
私は笑いました。
でも。
今回の事件は、かなり勉強になりました。
株主平等の原則。
最初は、試験に出るだけの言葉だと思っていました。
でも。
現実には。
社長一人が利益を独占しようとする。
ほかの株主の出席を偽る。
自分に都合のいい定款を、後から作ろうとする。
そんな問題を止めるために使われる。
しかも。
法律の名前が変わっても。
会社の基本的な仕組みが変わっても。
その根っこにある考え方は、受け継がれている。
だから。
昔の商法を学ぶことは、現代の会社法を理解することにもつながっているのです。
そのとき。
事務所の電話が鳴りました。
「はい、片桐行政書士事務所です!」
『あのう……』
年配の男性の声。
『会社の株のことで、相談したいんですが』
「はい。どうされました?」
『私、会社を作るときに名前を貸しただけなんですけどね』
……。
名前を貸した?
私は鉛筆を握り直しました。
『株主になっているらしいんですが、何だか会社のほうで揉めていまして……』
「はい」
『社長から、株主総会に出たことにしてくれって頼まれまして』
……。
またですか。
『委任状にもハンコを押してくれって言われたんですが、これって、あとから問題になりませんかね?』
私は相馬先輩を見ました。
先輩も、こちらを見ました。
「先輩」
「何だ」
「また、株主総会です」
「聞こえてる」
「しかも、名前貸しです」
「分かってる」
「昭和の株式会社って、こういう相談が多いんですか?」
相馬先輩は苦笑しました。
「発起人を七人そろえるところから苦労する時代だからな」
「ですよね……」
「ただし」
先輩は、私を指差しました。
「名前を貸しただけって言葉を、そのまま信用するなよ」
「え?」
「本当に出資したのか。株式は誰が引き受けたのか。名義だけなのか。書類はどうなってるのか」
「……はい」
「そこを調べなきゃ、株主としての権利も責任関係も見えてこねえ」
私は頷きました。
なるほど。
今回の事件では。
実際にお金を出して株主になった人たちが、社長に無視されました。
でも次は。
名前を貸しただけだと主張する人。
その人が、本当に株主なのかどうか。
そこから調べなければならない。
会社の世界。
思った以上に、複雑です。
「こはる!」
相馬先輩の声が飛びました。
「はい!」
「相談票を取れ!」
「はいっ!」
私は受話器を握り直しました。
「まず、会社を設立されたときの事情を教えていただけますか?」
昭和六十三年。
商法の世界は、今日も欲望と書類でいっぱいです。
社長は偉い。
役員は偉い。
創業者は偉い。
そんな言葉が飛び交う会社でも。
株主の権利は、肩書きだけで決まるわけではありません。
株式の内容。
株式の数。
定款。
そして、適法な株主総会の手続。
そこを確認するだけで。
社長の一言では動かせないものが、見えてきます。
私は机の上の株主名簿を、もう一度見ました。
杉本和夫。
百株。
村井澄子。
二百株。
東浜春江。
五百株。
そして。
東浜剛三。
二百株。
社長は二百株。
ほかの人たちは八百株。
会社を支えているのは、社長一人ではありません。
私はノートの端に、一行だけ書きました。
――株主の平等は、肩書きではなく、株式の内容と数で決まる。
よし。
これなら忘れません。
だって。
「俺が会社の法律だ!」
と怒鳴った社長が。
自分の持株数を突きつけられた途端。
あんなに静かになったのですから。
……商法って。
案外、痛快です。
ただし。
現代の会社法には、もう一つ面白い秘密があります。
非公開会社では、一定の条件のもとで、株主ごとに配当や議決権などを変えられるという例外。
平等なのに。
違う扱いを認める。
……どういうことでしょう?
その仕組みは、昭和の私が手にしている六法には、まだ書かれていません。
だからこそ。
現代の会社法では、なぜそんな例外まで認められるようになったのか。
私は、それをきちんと整理してみたくなりました。
「相馬先輩!」
「今度は何だ!」
「株主平等の原則って、例外を勉強するともっと面白くなりそうです!」
「まず今の原則を覚えろ!」
「覚えました!」
「本当か!」
「百株なら一万円! 二百株なら二万円! 五百株なら五万円!」
「配当の前提を言え!」
「同じ内容の株式で、一株当たり百円の配当が適法に決まった場合です!」
「よし!」
「先輩!」
「何だ!」
「私も株を持ってみたくなりました!」
「その前に給料を貯めろ!」
「……!」
……なるほど。
株主になる前に。
まず、出資するお金が必要なのでした。
残念ながら。
株主平等の原則は、見習い行政書士の財布まで平等に増やしてくれる制度ではないようです。
以下に私の作品へのリンク貼ってます。是非、手に取って頂ければと思います。また、ついでに評価ブックマーク頂ければ幸いです。




