[行政立法]法理編 こはるノート
夕方の片桐行政書士事務所は、昼間より法律がよく見えます。
電話が減る。
来客が途切れる。
机の上の書類が、ようやくただの紙に戻る。
そして私は、ノートを開いていました。
表紙には昨日書いた文字。
――行政立法。
その下に二つ。
法規命令。
行政規則。
そこで止まっています。
「……強そうなんですよね、この二つ」
向かいで帳簿をめくっていた相馬先輩が顔を上げました。
「何が」
「名前が」
「勉強しろ」
「してます」
しているから困っているんです。
行政立法。
文字だけ見ると、行政が国会に殴り込みをかけて、自分で法律を作り始めるような響きがあります。
もちろん、そんな話ではありません。
昨日。
大西工務店の大西さんは、市役所からこう言われました。
駅前再整備の仮設店舗工事には参加できない。
法人でなければならない。
従業員は十人以上。
過去五年間に市発注工事三件以上。
そして、その説明の後ろにいたのが、
「省令の考え方です」
という便利すぎる一言でした。
ところが確認してみると。
その三条件が国の省令に書いてあるわけではなかった。
市が自分で設けた選定基準だった。
つまり昨日の事件は、
「行政が作るルールは、全部同じ力を持つわけではない」
という話だったわけです。
私はノートの一番上に書きました。
行政立法。
「所長」
「何だ」
奥の机から片桐所長の声が返ります。
「行政立法って、一言でいうと何ですか」
「行政機関が定める一般的な規範だ」
「一般的な規範」
「個別の一人だけを相手にする処分とは違う。一定の人や場合に繰り返し適用されるルールだ」
なるほど。
私は書きます。
行政立法――行政機関が一般的なルールを定めること。
そして、すぐ横にもう一つ書きました。
ただし、法律を作るのは国会。
「ここが出発点ですね」
「そうだ」
日本国憲法では、国会が唯一の立法機関とされています。
法律。
たとえば建築基準法。
宅地建物取引業法。
こうした法律そのものを作るのは国会です。
では、行政立法は何なのか。
「法律の下請けですかね」
相馬先輩が鼻で笑いました。
「言い方」
「でも近くないですか?」
法律は、全部を細かく書ききれません。
たとえば、
免許を更新しなければならない。
と法律で決める。
でも、
何日前から申請できるのか。
どんな様式なのか。
何を書けばいいのか。
そこまで全部、法律本文に詰め込んでいたら、国会は細則だけで一年が終わりそうです。
「だから行政に細かいところを定めさせる」
私は言いました。
「そういうことだ」
所長が答えます。
法律という大きな骨組み。
その骨組みを動かせる形にする細かなルール。
それが行政立法。
ただし。
ここからが本番でした。
「行政立法には二種類ある」
私はノートに線を引きます。
法規命令。
行政規則。
「違いは?」
相馬先輩が聞きました。
「そこ、昨日分かった気になったところです」
「また“分かった気”か」
「現場で分かるのと試験で答えられるのは別なんです」
受験生にとって、これはかなり大事です。
現場では違和感を掴めても。
選択肢で、
A。
B。
C。
D。
と並べられた瞬間、人間の脳は簡単に裏切ります。
私はゆっくり書きました。
法規命令。
国民の権利義務に関わる、外部的な法規範。
行政規則。
行政組織内部を規律するルール。
「ざっくり言えば、役所の外まで法的に効くか、まず役所の中に向けられているかですね」
「そう考えればいい」
所長が言いました。
昨日の大西さんの事件に戻ります。
もし、
「法人でなければ駅前仮設店舗の工事をしてはならない」
という要件が、法律や法律に基づく法規命令にきちんと定められていたなら。
大西さんは、その法令の適用を受けます。
役所の気分ではない。
国民に対して法的な効果を持つルールです。
でも昨日の三条件は違った。
市が業者選定のために作った内部的な基準。
現実にはとても大きな影響があります。
選ばれなければ仕事は来ません。
でも。
だからといって、
「国の法令が大西さんに法人化を義務づけていた」
ことにはならない。
「ここですね」
私は昨日の倉田係長の顔を思い出しました。
「役所の中で効いているルールと、国民を直接縛るルールを混ぜると危ない」
「そうだ」
所長の答えは短い。
だから私は、その横に大きく書きました。
誰に向けたルールかを見る。
「じゃあ次」
相馬先輩が勝手に進めました。
「法規命令の種類」
「急に講師みたいになりますね」
「答えろ」
はいはい。
私はページをめくります。
法規命令には、名前による分類があります。
政令。
内閣府令。
省令。
規則。
「政令は?」
「内閣」
「内閣府令」
「内閣総理大臣」
「省令」
「各省大臣」
「規則」
「各庁の長官や委員会など」
「まあいい」
「なんで先輩が採点してるんですか」
でも、ここは試験では基本です。
誰が制定するのか。
行政法では「誰が」がやたら大事です。
誰が処分した。
誰が委任した。
誰が規則を作った。
法律の内容より、まず名札を確認する癖が必要らしい。
「昨日、市役所の担当者が“省令”って言葉を出したから、大西さんは強く感じた」
私は呟きました。
「省令って言われると、なんとなく法律と同じくらい絶対に聞こえるんですよね」
「実際、法規命令なら外部的な効力を持つ」
所長が言いました。
「ただし、法律より上ではない」
「そこですね」
私は下線を引きます。
政令も省令も、法律の下にある。
法律と矛盾することはできない。
法律を超えて何でも決められるわけでもない。
「じゃあ、法規命令のもう一つの分け方」
所長が言いました。
来ました。
受験生が一度は混線するやつです。
執行命令。
委任命令。
名前が似ていないのに、なぜか混ざる。
私はまず、
執行命令。
と書きました。
「法律を実施するための細かい内容を定める命令です」
教材で見た例を思い出します。
宅地建物取引業法では、
免許の有効期間が満了した後も宅建業を続けたいなら、更新を受けなければならない。
と法律が定めています。
でも。
それだけでは申請時期が分からない。
「それで施行規則が、免許更新の申請時期を細かく決める」
「そうだ」
所長が頷きます。
「法律にある制度を実際に動かすための細目ですね」
私はノートに書きました。
執行命令。
法律を実施するための具体的細目。
「つまり法律が“更新しろ”まで言う」
「うん」
「行政側が“じゃあ申請はこの時期にしてください”と具体化する」
「そういう理解でいい」
なるほど。
ここまでは割と素直です。
問題はもう一つ。
委任命令。
「こっちが怖いんですよね」
「何が」
「新しい権利義務に関わってくる」
私は書きました。
委任命令。
法律から具体的な委任を受けて、新たな権利義務に関わる事項を定める命令。
相馬先輩が私のノートを覗き込みます。
「執行命令とどう違う」
「法律を実施するだけなのか、法律の委任を受けて新しい内容まで定めるのか」
「例えば?」
私は少し考えました。
教材にあった宅建業法の広告開始時期です。
建物を建築する前。
宅地造成工事を始める前。
宅建業者が好き勝手に広告してしまうと、まだ法的に実現できるか分からないものを売り出すことになります。
そこで法律は、一定の許可などが済む前の広告を制限しています。
そして法律の側で、
「その他、政令で定めるもの」
という形で、さらに必要な場合を政令に委ねる。
「その委任を受けて、政令が具体的な追加条件を定める」
私は言いました。
「そうだ」
「これが委任命令」
でも。
ここで最重要ポイントがあります。
「所長」
「何だ」
「法律は、“あとは行政が好きに決めてね”ってできますか」
「できない」
「即答ですね」
「白紙委任は許されない」
来ました。
白紙委任。
名前だけなら、かなり悪役っぽい。
私は大きく囲みました。
白紙委任は不可。
「どうしてです?」
「国民の権利義務に関することを、国会が何も基準を示さず行政へ丸投げしたら、国会が立法する意味がなくなる」
確かに。
国会が、
この分野は行政が適当に決めてください。
国民に義務を課すかどうかも。
どこまで制限するかも。
全部そちらで。
なんてことをしたら。
唯一の立法機関という看板が泣きます。
「だから委任は具体的でなければならない」
「そうだ」
所長が答えます。
何について。
どの範囲で。
どのような内容を。
行政に決めさせるのか。
法律側に、それなりの具体性が必要になる。
ここで私は、昨日の事件を思い出しました。
「つまり、もし昨日の市の三条件が、本当に省令に書いてあったとしても」
「うん」
「そこで終わりじゃない」
「そうだ」
「省令がそんな条件を決めていい根拠が法律にあるのかも見る」
相馬先輩が口の端を上げました。
「ようやく昨日の続きになったな」
本当にそうです。
昨日の私は、
「何という省令の、何条ですか」
までしか言えませんでした。
でも本当はもう一段ある。
その省令は、どの法律を根拠にしているのか。
その法律は、その内容を命令へ委ねているのか。
委ねているとして、その範囲を超えていないか。
行政法は、扉を開けるとまた扉があります。
迷路か。
「先輩」
「何だ」
「行政法って、根拠を聞いたら、その根拠の根拠を聞くんですね」
「嫌な性格になるな」
「行政法のせいです」
「責任転嫁するな」
でも、これはかなり大事です。
法律。
政令。
省令。
命令。
上から下へ、権限の鎖がつながっている。
その鎖の途中が切れていたら、
「省令だから当然」
とは言えない。
私はノートに書きました。
命令を見るときは、委任の根拠と範囲を確認する。
さて。
ここまでは法規命令。
次は昨日の事件により近い方です。
行政規則。
「こっちが、昨日の市の選定基準に近いんですよね」
「そうだな」
所長が答えます。
行政規則。
行政組織内部のルール。
国民の権利義務を直接規律する法規ではない。
「直接、ですね」
私はそこに二重線を引きました。
「またそこ気にするのか」
相馬先輩が言います。
「気にします。試験で“国民に影響しない”とか書かれたら怖いので」
行政規則は、役所内部のルール。
でも。
だから現実に国民へ何の影響もない、とは言えません。
昨日の大西さんが、その証拠です。
市役所内部で、
この条件を満たす業者を選ぼう。
と決める。
職員がそれに従う。
結果として、大西さんが工事候補から外される。
生活に直撃です。
「でも、その基準そのものが、大西さんに“十人雇え”という法的義務を課したわけではない」
「そうだ」
所長が言います。
「職員の行動を通じて、事実上の影響が出ることはある。だが、それと法規として直接国民を拘束することは別だ」
ここ。
試験で絶対に雑に覚えてはいけないところです。
私は書きました。
行政規則――国民を直接拘束しない。
ただし、行政の運用を通じて事実上の影響はあり得る。
「行政規則の例は?」
相馬先輩が聞きます。
「訓令。通達。それから審査基準、処分基準、行政指導指針」
「よし」
行政手続法で出てくる言葉まで帰ってきました。
審査基準。
申請に対する処分をするときの判断基準。
処分基準。
不利益処分をするときの判断基準。
行政指導指針。
同じ目的で多数の人に行政指導をするときの共通方針。
これらも、行政内部の運用を整える性格を持つ。
「訓令は?」
「上級行政機関が下級行政機関に対して、指揮監督のために出す命令」
「通達」
「訓令の内容を文書で示したものとして扱われるもの」
私は少し首を傾げました。
「試験では、訓令と通達は役所内部のルールとして押さえればいいですね」
「それでいい」
所長が言いました。
たとえば。
上の行政機関が下の部署へ、
この法律はこういう扱いにしなさい。
この場合はこう処理しなさい。
と指示する。
現場の職員にとっては重要です。
無視していい紙ではありません。
でも。
国民から見たとき、
「通達に書いてあるから、あなたに新しい義務が生じます」
とは、そのまま言えない。
「昨日、市に来ていた国の通知も、それだけで大西さんを排除する法律にはならない」
「そういうことだ」
所長が言いました。
市は、
国から施工体制を適正にしろと言われた。
それを受けて、
法人。
従業員十人。
市工事三件。
という独自基準を作った。
でも、
国の通知。
市の内部基準。
国民を直接拘束する法規命令。
それぞれを混ぜてはいけない。
紙は紙でも、身分が違う。
「行政法って戸籍確認みたいですね」
私が言うと、相馬先輩が眉を上げました。
「どういう意味だ」
「見た目じゃなくて身分関係を確認する」
「余計分かりにくい」
「我ながら失敗しました」
さて。
ここから試験でよく狙われるところです。
「行政規則に違反したら、その行政処分は違法ですか」
私は所長に聞きました。
「直ちにはそうならない」
「来ました」
私は丸で囲みます。
行政規則違反=当然に違法、ではない。
「なぜです?」
「行政規則は、原則として行政内部の基準だからだ」
「じゃあ、たとえば処分基準に反した処分があっても」
「それだけで直ちに違法とは言い切れない」
「ただし?」
「法令違反や裁量の逸脱・濫用など、別の問題はあり得る」
なるほど。
ここも、
ゼロか百かで覚えると危険です。
内部基準に反した。
はい違法。
ではない。
逆も同じです。
「じゃあ、行政規則どおりに処理したら、その処分は必ず適法?」
「それも違う」
所長が言いました。
ですよね。
通達に従った。
審査基準どおりだった。
内部マニュアルどおり。
だから絶対適法。
そんな無敵カードはありません。
結局、外部との関係では、
法律。
法規命令。
行政法の一般原則。
裁量権の範囲。
そうしたものに照らして判断されます。
「昨日の市役所も同じですね」
「どういう意味だ」
相馬先輩が聞きます。
「市内部で三条件を決めていたからといって、それに従えば何でも適法になるわけじゃない」
「うん」
「逆に、そこから外したから即違法でもない」
「そうだな」
「大事なのは、その基準にどんな法的な位置づけがあって、具体的な行政判断が上位の法令に適合しているか」
「そこまで言えればいい」
少し嬉しい。
昨日まで、
法規命令と行政規則。
という二語を見ただけで眠くなっていた人間とは思えません。
人は、自分の仕事が取れるかどうかに直結すると急に賢くなるらしい。
大西さんの仕事ですけど。
私はノートを整理します。
法律。
国会が制定。
その下に法規命令。
政令。
内閣府令。
省令。
規則。
そして法規命令は、
執行命令。
委任命令。
に分けて考える。
執行命令は、法律実施の細目。
委任命令は、法律の具体的な委任を受けて権利義務に関わる新たな内容を定める。
ただし白紙委任は不可。
そして行政規則。
訓令。
通達。
審査基準。
処分基準。
行政指導指針。
行政内部のルール。
原則として国民を直接拘束しない。
違反しただけで直ちに違法になるわけでもない。
「……こうして見ると」
「何だ」
「行政法、階層社会ですね」
相馬先輩が笑いました。
「お前、そういう変な覚え方ばっかりするな」
「だって上がいるんですよ。法律が上にいて、その下に命令がいて、内部には通達がいて」
「人間関係みたいに言うな」
「でも誰が誰の下にいるか分かると、急に覚えやすいです」
所長が新聞を折りたたみました。
「それでいい」
「いいんですか」
「試験で間違えなければな」
雑に見えて合理的。
所長らしい。
私は昨日の大西さんの言葉を思い出しました。
法律で門前払いなのか。
市の判断で落とされるのか。
それは違うでしょう。
本当に、その通りでした。
結果が同じでも。
理由が違えば。
争い方も。
説明を求める先も。
次にできることも変わります。
法令そのものなら。
まず適用関係を見る。
省令なら。
法律の委任や根拠を見る。
内部基準なら。
なぜその基準を採ったのか。
どう適用しているのか。
例外や見直しの余地はないのか。
そうやって話を正しい場所へ戻せる。
制度の名前は冷たいです。
法規命令。
委任命令。
執行命令。
行政規則。
訓令。
通達。
どれも、人間の生活とは遠そうな字面です。
でも昨日。
その区別があったから。
大西さんは、
「法律だから終わり」
の場所から、
「では、うちの実績を見てください」
の場所まで戻ってこられた。
制度の冷たさが、人を助ける。
最近、その意味が少し分かるようになってきました。
「相馬先輩」
「何だ」
「試験に出そうな引っかけ、最後に確認していいです?」
「勝手にしろ」
「じゃあ一問目」
私は指を一本立てました。
「行政規則は国民にまったく影響を与えない」
「誤り」
「理由」
「直接法的に拘束しないだけで、行政運用を通じて事実上の影響は出る」
「正解」
「何でお前が採点してんだ」
二本目。
「行政規則に違反した行政処分は、当然に違法となる」
「誤り」
「理由」
「行政規則違反だけで直ちに違法とは言えない」
三本目。
「委任命令なら、法律が“必要な事項は命令で定める”とだけ書けば、何でも決めてよい」
「誤り」
「白紙委任は駄目」
「四本目」
「省令に書いてあれば、法律の根拠を確認する必要はない」
「誤り」
「法律による委任や根拠が必要になる場合がある」
「五本目」
「執行命令は、法律を実施するための具体的な細目を定める」
「正しい」
「すごい」
「殴るぞ」
「褒めたのに」
所長が言いました。
「最後に昨日の事件を一行で書け」
「はい?」
「大西さんの件だ」
私はノートの最後を開きました。
昨日の事件。
市役所。
駅前再整備。
省令。
通知。
市独自基準。
大西工務店。
十人。
三件。
法人。
そして。
「法律みたいなものだから無理です」
その空気を、私たちはほどいた。
少し考えて。
私は書きました。
――「役所が決めた」ではなく、「誰を縛る、何に基づくルールか」を見る。
相馬先輩が横から覗き込みます。
「まあまあだな」
「評価が渋い」
所長も一度だけノートを見ました。
「もう一行」
「まだですか」
「命令について」
私は考えます。
そして、その下へ書き足しました。
――省令を見つけても終わりじゃない。その省令を支える法律まで遡る。
所長が頷きました。
「それでいい」
窓の外では、駅前工事の音がもう止んでいました。
夕方の商店街。
シャッターを閉める音。
自転車のベル。
遠くで電車が走る音。
明日、大西さんは施工実績の写真を持ってくるそうです。
パン屋。
喫茶店。
商店街の屋根。
二十年分。
それで仕事を取れるかどうかは分かりません。
でも。
少なくとも、
存在しない「省令の壁」に追い返されることはなくなった。
ルールは、人を止めるためだけにあるんじゃない。
どこまで止めていいのかを、権力側に示すためにもある。
だから。
法律があり。
その下に命令があり。
内部には行政規則がある。
全部同じ「決まり」に見えても。
同じではない。
私はノートを閉じました。
「終わりました」
「じゃあ片づけろ」
相馬先輩が言います。
「たい焼き残ってません?」
「ない」
「え」
「食った」
「私、一個しか食べてませんけど」
「一人一個という内部基準だろ」
「先輩は何個食べたんです?」
「二個」
「違反してる!」
「内部基準違反だけで直ちに違法とはならないんだろ?」
私は固まりました。
こいつ。
今日の授業を最悪の方向に応用しました。
「所長!」
片桐所長は帳簿から顔も上げませんでした。
「相馬」
「はい」
「明日の茶菓子代、お前持ち」
「何でですか」
「処分だ」
「処分基準は?」
「今作った」
「それこそ駄目でしょう!」
私は吹き出しました。
行政規則に違反しても、直ちに違法とは限らない。
それは確かです。
でも。
人のたい焼きを勝手に食べれば。
少なくとも事務所では、かなり高い確率で不利益処分が待っている。
行政書士試験には、たぶん出ません。
私はノートの端に小さく書き足しました。
――行政立法より先に、自分のたい焼きは自分で守ること。
そこだけは。
法律より実務の方が、ずっと分かりやすいのでした。
以下に私の作品へのリンク貼ってます。是非、手に取って頂ければと思います。また、ついでに評価ブックマーク頂ければ幸いです。




