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こはる行政書士見習帖 〜 昭和に転生して許認可に振り回されると試験知識が骨身にしみます 〜  作者: 条文小説
〈民法 配点76点/300点〉 債権

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540/701

[民法・不法原因給付]法理編 こはるノート

挿絵(By みてみん)

 悪いことのために渡したお金は、返してもらえない。


 では。


 もっと悪いことをした人間が、そのお金を受け取っていたら?


 それでも、返してもらえないのでしょうか。


 そして。


 お金ではなく、土地や建物だったら?


 鍵を渡しただけで、もう取り戻せないのでしょうか。


 実は。


 民法には、こんな恐ろしい条文があります。


 ――不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。


 民法第七百八条。


 不法原因給付。


 たった一条。


 しかし。


 この一条を読み間違えると。


 自分の財産を失うだけでなく。


 悪党の言い分を、法律で正当化してしまうことになるのです。


 ◇


 昭和六十三年。


 夕方の片桐行政書士事務所。


 私は机に向かい、ノートを開いていました。


 表紙には、大きくこう書いてあります。


 ――こはるノート・民法編。


「……民法って、時々、悪党の味方に見えますよね」


 私が呟くと、相馬先輩が新聞から顔を上げました。


「いきなり何だ」


「不法原因給付ですよ」


「ああ」


「悪いことのためにお金を渡したら、返してもらえないんですよね」


「原則としてな」


「それって、受け取った側が得をしませんか?」


 相馬先輩は煙草をくわえました。


「昨日の黒崎みてえにな」


「そうです!」


 私は勢いよく頷きました。


 黒崎源治。


 駅裏の飲食店経営者。


 仕出し屋を営む西村澄江さんから、八十万円を借りた男です。


 ところが。


 借りたお金を賭博場の運営資金に使い、返済期限が過ぎても返さなかった。


 それどころか。


「民法七百八条だ! 違法な金だから返さなくていい!」


 などと言い始めたのです。


 ……。


 いや。


 あなたが、その違法な使い道を決めたんでしょう。


 しかも。


 澄江さんが貸付けを断ろうとすると、取引停止をちらつかせて圧力までかけていた。


「本当に腹が立ちました」


「そうだな」


「でも、黒崎は条文を知っていたんですよね」


「ああ」


「私、最初はそれで焦ったんです」


 七百八条。


 不法原因給付。


 確かに、条文の前半だけを読めば、黒崎の主張にも一見もっともらしいところがあります。


 しかし。


 片桐所長と相馬先輩が持ち出したのは、昭和二十九年八月三十一日の最高裁判決。


 当事者双方に不法な点があっても、貸主側の不法性が借主側に比べて極めて微弱な場合には、民法九十条と七百八条の適用を否定し、貸金返還請求を認めるという判断でした。


 私たちは、その判例と事実関係を整理した内容証明郵便を作成。


 澄江さん本人の名義で発送しました。


 すると。


 黒崎は弁護士に相談したあと、態度を一変させたのです。


 そして、八十万円を全額返済。


 澄江さんの仕出し屋には、新しい業務用冷蔵庫が入りました。


「……よかったですよね」


 私が言うと、相馬先輩は頷きました。


「ああ」


「でも、先輩」


「何だ」


「私、まだ分からないことがあるんです」


「何だよ」


 私はノートを開きました。


 そこには、三つの疑問を書いていました。


 不法な原因って、どこまで?


 給付したって、どこから?


 双方が悪い場合、どうなる?


「この三つを整理したいんです!」


 相馬先輩は、新聞を畳みました。


「……また勉強会か」


「もちろんです!」


「俺の休憩時間は?」


「民法に休憩時間はありません!」


「俺にはあるんだよ!」


 そこへ。


 奥から、片桐所長が声をかけました。


「相馬」


「はい」


「付き合ってやれ」


「……所長まで」


 よし。


 今日も強制勉強会、開催です。


 ◇


「まず、不法原因給付の意味です!」


 私はノートに大きく書きました。


 ――民法第七百八条。


 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。


「先輩。この条文、昭和六十三年と令和で同じなんですよね?」


「ああ。少なくとも今日使っている七百八条の文言は、昔からのものだ」


「やった!」


「何がだ」


「今回は未来の条文を持ち込まずに済みます!」


「お前は毎回、何と戦ってるんだ」


 未来の民法です。


 もちろん、口には出せません。


「では、不法原因給付とは何でしょう!」


 私は鉛筆を持ち直しました。


「不法な原因に基づいて、財産などを給付することです」


「そのまんまだな」


「まずは定義です!」


 たとえば。


 殺人を依頼し、その報酬として百万円を支払う。


 あるいは。


 賭博のために、金銭を交付する。


 また。


 法律上の配偶者がいる人が、愛人関係を継続することを条件として、不動産を贈与する。


「こういう場合、まず民法九十条が問題になります」


 私は六法を開きました。


 ――公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。


「昭和六十三年の民法九十条ですね」


「そうだ」


 相馬先輩が頷きました。


「令和の条文と、言い回しが少し違うんだっけ?」


「そうなんです!」


 私は説明しました。


 現代の民法九十条では、


 ――公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。


 と規定されています。


 昔の条文にあった「事項を目的とする」という部分が整理されています。


「でも、公序良俗に反する法律行為を無効とする考え方は、基本的に同じです」


「そういうことだな」


 ここで私は、二つの条文を並べました。


 民法九十条。


 公序良俗違反の法律行為は無効。


 民法七百八条。


 不法な原因のために給付したものは、原則として返還請求できない。


「この二つが組み合わさると、面白いことになるんです」


「面白い?」


「いえ、怖いことです!」


 たとえば。


 AがBに、違法な行為を依頼した。


 その報酬として百万円を支払った。


 ところが、Bは約束した行為をしなかった。


 Aは怒って言います。


「約束を守らないなら、百万円を返せ!」


 でも。


 その約束自体が公序良俗違反で無効だったら?


 普通なら。


 無効な契約に基づいて渡したお金は、返してもらえそうです。


 しかし。


「そこで七百八条です」


 私は赤鉛筆で囲みました。


 Aは、自分から不法な目的のためにお金を渡している。


 だから。


 原則として、そのお金の返還を請求できない。


「……ひどくないですか?」


 私が言うと、相馬先輩が首をかしげました。


「何がだ」


「Bが得するじゃないですか」


「結果として、そういう場合はある」


「でも、どうして?」


 相馬先輩は少し考えてから言いました。


「じゃあ、お前が裁判官だったとする」


「はい」


「人を殺してもらうために百万円払った奴が、裁判所に来た」


「はい」


「『殺人を実行してくれなかったので、報酬を返してください』ってな」


 ……。


 私は固まりました。


「……それ、裁判所に頼むことですか?」


「そういうことだ」


 なるほど。


 法律は。


 不法な目的を実現しようとした人間に、当然に救済の手を差し伸べるわけではない。


 自分で社会秩序に反する取引に関わったのなら、その結果として生じた不利益を自分で負うべき場合がある。


「つまり」


 私は言いました。


「不法原因給付の制度には、不法な行為をした給付者を法律で保護しない、という考え方があるんですね」


「そうだ」


 片桐所長が静かに言いました。


「裁判所を、不法な取引の後始末をする道具にさせない」


 私は、その言葉を書き留めました。


 ただし。


 ここで、一つ重要なことがあります。


「先輩。法律に違反していたら、何でも七百八条になるんですか?」


「ならねえ」


「ですよね!」


 七百八条の「不法」は、単なる法令違反すべてを意味するわけではありません。


 問題になるのは、公序良俗に反するような不法性です。


「たとえば、帳簿に載せずに現金を貸したら、それだけで七百八条ですか?」


「そんな単純な話じゃねえ」


「そうですよね」


 記帳していないことと、貸付けの目的そのものが公序良俗に反することは別の問題です。


 相手が後から違法な使い方をしたというだけでも、当然に貸付けが不法原因給付になるわけではありません。


 契約の目的。


 当事者の認識。


 給付に至った事情。


 そこを調べる必要があります。


「だから黒崎の『賭博に使ったから返さない』は、最初から乱暴だったんですね」


「そうだ」


「でも先輩」


「何だ」


「実際に不法原因給付になった場合でも、どんなときに『給付した』といえるか、問題になるんですよね?」


 相馬先輩が、にやりとしました。


「やっとそこまで来たか」


 ……。


 その顔。


 嫌な予感しかしません。


 ◇


「では、二つ目の論点です!」


 私はノートに大きく書きました。


 ――給付とは何か。


「先輩。給付って、お金や物を渡すことでしょう?」


「まあ、そうだな」


「だったら簡単じゃないですか」


「本当にそうか?」


「……え?」


 相馬先輩は、机の上に一本の万年筆を置きました。


「これを、お前にやる」


「えっ!」


「高級品だぞ」


「本当ですか!」


「ただし、不法な約束の報酬だとする」


「……急に怪しくなりましたね」


「俺が渡すから、受け取れ」


 私は万年筆を手に取りました。


「はい」


「それで、給付は終わったか?」


「終わりました!」


「そうだな」


 万年筆。


 つまり動産です。


 動産の場合は、原則として引渡しによって給付が完了したと考えられます。


「じゃあ、これは七百八条の問題になるんですね」


「不法な原因に基づく給付ならな」


「はい!」


 私はノートに書きました。


 ――動産は、引渡しが重要。


「でも、先輩」


「何だ」


「さっきの西村さんのお金も、給付ですよね」


「ああ。現金を実際に渡してるからな」


「ですよね」


 澄江さんは、黒崎に八十万円を交付しました。


 だから、金銭の給付自体はありました。


 しかし。


 それだけで七百八条が適用されるわけではない。


 給付の原因が、本当に公序良俗に反する不法なものだったのか。


 そこを別に検討する必要があります。


「なるほど」


 私は頷きました。


「給付があったことと、不法原因給付が成立することは別なんですね」


「そうだ」


 ここまでは、何とか理解できました。


 ところが。


 相馬先輩は、さらに言いました。


「じゃあ、建物をやる」


「……え?」


「今度は建物だ」


「また急に大きくなりましたね!」


「例えばだ」


 先輩は白紙に、四角い家を描きました。


 ……。


 これ。


 家ですか?


 どう見ても、段ボール箱です。


「何だ、その顔」


「いえ、独創的な建物だなと」


「文句言うなら自分で描け!」


「すみません!」


 先輩は咳払いをしました。


「ある男が、不法な目的で女に家を贈ったとする」


「はい」


「鍵を渡して、住ませた」


「はい」


「これで給付は終わりか?」


 私は勢いよく答えました。


「引渡しがあったので、終わりです!」


「本当に?」


「……あ」


 しまった。


 さっきの万年筆と、同じように考えてしまいました。


 建物。


 不動産。


 そして。


 登記。


「先輩」


「何だ」


「不動産は、登記が問題になりますよね」


「そうだ」


 相馬先輩は、にやりと笑いました。


「では、ここからが本番だ」


 ◇


「こはる」


 片桐所長が、古い判例集を開きました。


「はい」


「不法原因給付でいう『給付』は、単に物を一時的に預けたり、使わせたりすることとは違う」


「はい」


「相手に、終局的な利益を与えたといえることが重要だ」


 私はノートに書きました。


 ――給付=終局的な利益を与えること。


「終局的……」


 難しい言葉です。


 でも、意味は分かります。


 たとえば。


 家の鍵を渡して、一晩泊めた。


 それだけで、家を贈与したことにはなりません。


 逆に。


 家を完全に譲るつもりで引き渡し、必要な手続まで済ませた。


 それなら、相手に終局的な利益が移ったと考えやすい。


「つまり、相手に利益が最終的に渡ったかどうかを考えるんですね」


「そうだ」


 片桐所長が頷きました。


「ただし、不動産は登記の有無で結論が変わることがある」


「そこです!」


 私は鉛筆を握り直しました。


「未登記と既登記ですね!」


「そうだ」


 所長は判例集の一ページを開きました。


 昭和四十五年十月二十一日。


 最高裁判所大法廷判決。


「こはる。まず、未登記建物だ」


「はい!」


 ある男が、不法な原因によって、未登記の建物を女性に贈与した。


 建物は、まだ誰の名義でも登記されていない。


 男は、その建物を女性に引き渡した。


 女性は住み始めた。


 ところが、男は後になって気が変わりました。


「やっぱり返せ!」


 ……。


 何とも身勝手な話です。


「さて」


 相馬先輩が聞きました。


「この場合、男は建物を取り返せるか?」


 私は考えました。


 未登記。


 建物を引き渡した。


 不法な目的。


 ……。


「給付があったので、原則として返還請求できない?」


「正解だ」


「やった!」


 私は思わず拳を握りました。


 未登記建物については、判例上、引渡しだけで七百八条の給付があったと認められます。


 だから。


 不法な原因によって建物を贈与し、引渡しを済ませた男は。


 原則として、その建物の返還を請求できないのです。


「でも所長」


「何だ」


「不法な贈与契約なら、民法九十条で無効ですよね」


「そうだ」


「無効なら、建物の所有権は男に残っているんじゃないですか?」


 所長が頷きました。


「いい疑問だ」


 おお。


 褒められました。


「契約が無効だから、所有権に基づいて返還を請求する。そう考えたくなるな」


「はい!」


「だが、それを許すとどうなる」


 私は少し考えました。


「七百八条の返還禁止を、所有権という別の理屈で回避できてしまいます」


「そうだ」


 なるほど。


 不当利得として返せない。


 でも所有権に基づけば返せる。


 そんなことになったら。


 七百八条の意味がなくなってしまう。


「最高裁は、そこを許さなかったんですね」


「そうだ」


 未登記建物を不法な原因で贈与し、引渡しを終えた場合。


 判例は、贈与者が所有権に基づいて返還を請求することも認めません。


 さらに。


 その反射的効果として、建物の所有権は受贈者に帰属するとしています。


「……ええっ!」


 私は思わず声を上げました。


「無効な贈与なのに、所有権が受け取った人に帰属するんですか!」


「判例はそういう処理をしている」


「すごいですね……」


 法律は、単に契約が有効か無効かだけでは終わらない。


 既に行われた給付を、どのように扱うのか。


 そこまで考えているのです。


「ちなみに」


 相馬先輩が言いました。


「その後、贈与した男が勝手に自分名義で保存登記をしたらどうなると思う?」


「えっ」


「未登記建物を引き渡した後だ」


 私は考えました。


 給付は既に終わっている。


 七百八条によって返還請求できない。


 所有権も、判例上は受け取った側に帰属する。


「……後から保存登記しても、取り戻せない?」


「そうだ」


 最高裁は、贈与者が後から自分名義の所有権保存登記をしても、それによって権利を取り戻せるわけではないとしています。


 むしろ、受贈者から保存登記の抹消を求められ得る。


「怖っ!」


「何がだ」


「一度引き渡したら、後から登記しても駄目なんですね!」


「そういう場合があるってことだ」


 私はノートに大きく書きました。


 ――未登記建物は、引渡しで給付。


 ――後から給付者名義の保存登記をしても、原則として取り戻せない。


「これは試験に出ますね!」


「お前は何でも試験に結びつけるな」


「受験生ですから!」


 私は胸を張りました。


 しかし。


 相馬先輩は、そこで人差し指を立てました。


「じゃあ次だ」


「はい!」


「既登記建物」


 ……。


 来ました。


 昨日の電話相談。


 まさに、この論点です。


 ◇


「今度は、最初から登記されている建物だ」


 相馬先輩が言いました。


「はい」


「男が不法な目的で、女に建物を贈与した」


「はい」


「鍵を渡した」


「はい」


「女は住み始めた」


「はい」


「だが、所有権移転登記はしていない」


 私は頷きました。


 つまり。


 建物の登記名義は、まだ贈与者の男のまま。


 しかし。


 現実には、受贈者の女性が住んでいる。


「これ、昨日の相談と同じですね」


「そうだ」


 片桐所長が、別の判例集を開きました。


 昭和四十六年十月二十八日。


 最高裁判所第一小法廷判決。


「この判例が重要だ」


 私は身を乗り出しました。


「結論は?」


「既登記建物については、引渡しだけでは、七百八条の給付があったとはいえない」


 ……!


「登記が必要なんですか!」


「そうだ」


 所長が頷きました。


「所有権移転登記まで済ませる必要がある」


 私はノートに書きました。


 ――既登記建物は、引渡し+所有権移転登記。


「つまり、引渡しだけなら?」


「七百八条の給付は、まだ完了していない」


「だから、返還を求められる余地があるんですね!」


「そうだ」


 私は、思わず両手を上げました。


「分かりました!」


「まだだ」


 相馬先輩が言いました。


「え?」


「昨日の相談者が、必ず建物を取り戻せると決まったわけじゃねえぞ」


「あ……」


「そもそも贈与の不法性はどうだったのか。他の権利関係はないのか。事実を調べる必要がある」


「はい」


「それに、七百八条の給付が未完成というだけで、建物明渡しのすべての要件が自動的に揃うわけじゃねえ」


 なるほど。


 判例の結論だけを暗記して。


「既登記で移転登記がないから、絶対に返せ!」


 そんなふうに言ってはいけないのですね。


「ただ」


 私は言いました。


「少なくとも、七百八条の給付が成立したかどうかについては、未登記建物と既登記建物を区別する必要があります」


「そうだ」


 私はノートを整理しました。


 未登記建物。


 引渡しで給付。


 既登記建物。


 引渡しと移転登記で給付。


 動産。


 引渡しで給付。


「これなら覚えられます!」


 相馬先輩が笑いました。


「じゃあ、確認するぞ」


「はい!」


「既登記建物。移転登記済み。まだ鍵は渡してない」


「……給付は完了していません!」


「なぜだ」


「引渡しがないからです!」


「よし」


「では逆に!」


 私は言いました。


「既登記建物。鍵を渡して、相手が住んでいる。でも移転登記がない」


「どうなる?」


「七百八条の給付は未完成です!」


「正解」


「未登記建物なら?」


「自分で答えろ」


「引渡しで給付です!」


 私は得意になりました。


 ふふふ。


 不法原因給付。


 少しずつ見えてきました。


 ところが。


 片桐所長が、静かに言いました。


「こはる」


「はい」


「では、なぜ未登記と既登記で違うと思う」


 ……。


 私は止まりました。


「えっと……」


 なぜ。


 確かに。


 どちらも建物です。


 鍵を渡して住ませる。


 現実の利用状況は同じ。


 それなのに。


 なぜ、給付の判断が違うのでしょう。


「……登記があると、所有権を移す手続が残っているから?」


 所長が頷きました。


「そうだ」


 既登記建物では、贈与者名義の登記が残っている。


 したがって、引渡しだけで、受贈者に終局的な利益を与え終わったとは評価しない。


 一方。


 未登記建物では、もともと移転すべき既存の登記名義がない。


 そのため、引渡しによって給付が完了したと考える。


「なるほど……」


 私は鉛筆を止めました。


「単なる形式の違いじゃないんですね」


「そうだ」


「相手に終局的な利益が移ったかどうか。その判断に、登記が関係してくる」


 片桐所長が頷きました。


「そこを覚えておけ」


 ◇


「さて」


 相馬先輩が新聞を畳みました。


「次が一番大事だな」


「はい!」


「西村さんの八十万円だ」


 私は姿勢を正しました。


 あの事件。


 私たちが内容証明を作った理由。


 そして。


 民法七百八条を振りかざす黒崎に対して、最高裁判例を示した理由。


「先輩」


「何だ」


「七百八条には、ただし書がありますよね」


「ああ」


 私は読み上げました。


 ――ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。


「これは、不法な原因が受け取った側にだけある場合ですね」


「そうだ」


 例えば。


 AがBにお金を渡した。


 しかし、その不法な仕組みを作ったのはBであり、A自身には不法な原因が認められない。


 そのような場合には、七百八条による返還禁止は働かない。


「では」


 私は質問しました。


「Aにも少し不法な点があったら、どうなります?」


 相馬先輩は、例の判例集を開きました。


「昭和二十九年八月三十一日だ」


「はい!」


 最高裁判所の判決。


 貸金消費貸借契約の成立経緯に、不法な点があった事案です。


 貸主側にも、多少の不法があった。


 借主側にも、不法があった。


 しかし。


 貸主の不法性は、借主の不法性と比べて極めて微弱だった。


「そこで最高裁は?」


 相馬先輩が聞きました。


「民法九十条と七百八条の適用を否定しました!」


「そうだ」


「そして、貸主からの貸金返還請求を認めました!」


「正解」


 私は頷きました。


 ここ。


 今回の事件の最大のポイントです。


 単純に、


「貸主にも不法がある!」


 と言うだけでは足りない。


 当事者双方の不法性を比較する。


 そして。


 貸主側の不法性が、借主側と比べて極めて小さいならば。


 貸主を保護すべき場合がある。


「でも、先輩」


「何だ」


「それって、七百八条のただし書を広く解釈しているんですか?」


 相馬先輩が顔を上げました。


「いい質問だ」


 おお。


 今日は、よく褒められます。


「厳密には、昭和二十九年の判例は、九十条と七百八条の適用を否定して、貸金返還請求を認めている」


「はい」


「だから、ただし書の文言にそのまま当てはめるだけじゃねえんだ」


 私はノートに書きました。


 ――ただし書。


 受益者のみに不法な原因がある場合。


 ――昭和二十九年判例。


 双方に不法な点があっても、給付者側の不法性が受益者側より極めて微弱な場合には、九十条・七百八条の適用を否定する。


「なるほど!」


 私は頷きました。


「試験でも、この二つを区別したほうがよさそうですね」


「そういうことだ」


「それから!」


 私は続けました。


「貸主の不法性が少し小さいだけでは、駄目なんですよね」


「ああ」


 相馬先輩が頷きます。


「極めて微弱、だ」


 この言葉。


 重要です。


 例えば。


 AとBが共同で違法な事業を計画した。


 二人とも十分に事情を理解し、積極的に関わった。


 そこでAがBに百万円を交付した。


 後になって、Aが、


「Bのほうが少し悪いから返せ!」


 と主張した。


 これだけで、返還請求が認められるわけではありません。


「不法の程度が、少し違う程度では足りないんですね」


「そうだ」


「給付者側の不法性が、受益者側に比べて極めて小さいことが重要」


 私は赤線を引きました。


 極めて微弱。


 極めて微弱。


 極めて微弱。


「……三回書いたな」


 相馬先輩が呆れました。


「試験に出そうですから!」


「紙がもったいねえ」


「合格のための投資です!」


 私は胸を張りました。


 そして。


 西村さんの事件を思い出しました。


 澄江さんは、帳簿外の資金だと知りながら貸しました。


 その点について、どの程度の不法性が認められるかは慎重に考える必要があります。


 一方で。


 黒崎は、貸付けを求める際に取引停止をちらつかせた。


 受け取ったお金を、賭博場の運営資金に使った。


 そのうえ、返済を拒むために七百八条を持ち出した。


「だから、事情を丁寧に整理したんですね」


「そうだ」


「黒崎のほうが悪い、と叫ぶだけではなく」


「うん」


「誰が何を知っていたか。どのようにお金を貸すことになったか。どちらにどんな不法な事情があったのか」


 片桐所長が頷きました。


「そうだ」


 そして、私たちは思い出さなければなりません。


 内容証明を送ったからといって、裁判での勝訴が確定したわけではない。


 まして、すべての貸金について、この判例が当然に使えるわけでもない。


 重要なのは。


 具体的な事実に、判例の判断枠組みを当てはめること。


 黒崎は、その危険を理解したからこそ、自分の意思で返済に応じたのです。


 ◇


「ところで、こはる」


 片桐所長が言いました。


「はい」


「民法九十条と七百八条の関係は整理できたか」


「はい!」


 私はノートを開きました。


「九十条は、公序良俗に反する法律行為を無効とする規定です」


「うん」


「七百八条は、不法な原因によって既に給付したものの返還を、原則として認めない規定です」


「そうだ」


「つまり、契約が無効かどうかと、給付したものを取り戻せるかどうかは、別の問題なんです!」


 片桐所長が頷きました。


「その区別が重要だ」


 私は思いました。


 受験生の頃。


 無効という言葉を聞くと、つい考えてしまいました。


 無効。


 つまり、初めから効力がない。


 だったら、全部元に戻る。


 そういうイメージです。


 でも。


 不法原因給付は違います。


 契約が無効だからといって、常に元どおりにできるとは限らない。


「ここで、現代民法との違いもあります!」


 私は勢いよく言いました。


「また未来の話か」


 相馬先輩が顔をしかめました。


「大事なんです!」


 現代の民法には、百二十一条の二があります。


 無効な行為や、取り消された行為に基づいて給付を受けた場合の原状回復義務。


 この規定です。


「でも、昭和六十三年には、まだ百二十一条の二がありません!」


「そうだな」


「当時は、不当利得などの規定や判例上の考え方によって、原状回復を検討していたんですね」


「そうだ」


 そして。


 現代の百二十一条の二があっても、七百八条が消えたわけではありません。


 無効な契約について原状回復を考える場合にも、不法原因給付による返還制限が問題になることがある。


「つまり!」


 私は言いました。


「令和の民法では、原状回復の一般的なルールが明文化されました」


「うん」


「でも、不法な原因による給付については、七百八条の特別な問題が残っている」


「そのとおりだ」


 私は赤鉛筆で線を引きました。


 令和の知識を、そのまま昭和に持ち込まない。


 でも。


 昭和の判例を理解すると、現代の民法も見えてくる。


「民法改正って、昔の法律を全部捨てたわけじゃないんですね」


 私が言うと、所長が頷きました。


「そうだ」


「昔から積み重ねられてきた考え方を、明文化したり整理したりしている部分もある」


「うん」


 私は、少し嬉しくなりました。


 転生してから。


 何度も、現代の条文を使いそうになりました。


 契約不適合責任。


 消滅時効。


 意思能力。


 成年後見制度。


 そして今回の、百二十一条の二。


 そのたびに、相馬先輩に怒られました。


 でも。


 昔と今の違いを知ることで。


 法律の仕組みが、前よりずっと分かるようになってきた気がします。


 ◇


「では、確認問題です!」


 私は勢いよく立ち上がりました。


 相馬先輩が嫌そうな顔をしました。


「何でお前が出題するんだよ」


「勉強会ですから!」


「勝手に決めるな!」


 私は構わず続けました。


「第一問!」


 不法な目的で、AがBに現金百万円を実際に交付した。


 双方が、その不法な目的を十分に理解していた。


 Aは後から返還請求できるでしょうか。


「原則として、できねえ」


「正解!」


「俺が間違えると思うなよ」


「では第二問!」


 AがBに、未登記建物を不法な原因で贈与した。


 建物は引渡し済み。


 移転登記は存在しない。


 給付は完了しているでしょうか。


「している」


「正解!」


 昭和四十五年十月二十一日の最高裁大法廷判決。


 未登記建物は、引渡しによって七百八条の給付があったと認められます。


「第三問!」


 既登記建物を不法な原因で贈与した。


 引渡しは済んでいる。


 しかし、所有権移転登記は未了。


 七百八条の給付は完了しているでしょうか。


「してねえ」


「正解!」


 昭和四十六年十月二十八日の最高裁判決。


 既登記建物については、引渡しだけでは足りません。


 所有権移転登記も必要です。


「第四問!」


 私はノートをめくりました。


「双方に不法な事情があります。でも、貸主側の不法性は借主側と比べて極めて微弱です。貸金返還請求は、必ず七百八条によって禁止されるでしょうか?」


「禁止されるとは限らねえ」


「正解!」


 昭和二十九年八月三十一日の最高裁判決。


 貸主の不法性が借主と比較して極めて微弱である場合、民法九十条と七百八条の適用が否定され、貸金返還請求が認められることがあります。


「第五問!」


 私は満面の笑みで言いました。


「昭和六十三年の民法百二十一条の二には、何が書いてあるでしょう!」


 相馬先輩が、にやりとしました。


「そんな条文はねえ!」


「正解です!」


「お前が昨日間違えたやつだろ!」


「復習は大事です!」


 私は笑いました。


 すると。


 片桐所長が静かに言いました。


「こはる」


「はい」


「最後に、私から一問」


 ……。


 来ました。


 所長の問題。


 これは、気を抜けません。


「不法原因給付を考えるうえで、一番大切なのは何だ」


 私は少し考えました。


 条文。


 判例。


 給付。


 登記。


 不法性の比較。


 いろいろな知識が頭の中を駆け巡りました。


 でも。


 最後に思い浮かんだのは。


 新しい冷蔵庫の前で、嬉しそうに笑っていた澄江さんの姿でした。


「……その法律が、何のためにあるのかを考えることです」


 私は答えました。


 所長が、少しだけ顔を上げました。


「続けろ」


「七百八条は、不法な行為をした給付者を、法律が安易に保護しないための規定です」


「うん」


「でも、受け取った側の不法性が圧倒的に大きい場合にまで、機械的に返還を拒むのは、公平ではありません」


「そうだ」


「だから、条文の言葉だけでなく、具体的な事実と判例を確認する必要があります」


 所長は、ゆっくり頷きました。


「それでいい」


 私は、ほっと息を吐きました。


 ◇


 窓の外は、もう薄暗くなっていました。


 私はノートの最後のページを開きました。


 今日のまとめです。


 不法原因給付。


 最初は、怖い制度だと思いました。


 悪いことのために渡したものは返せない。


 それだけ聞くと、受け取った側が得をする、理不尽な法律に見えることもあります。


 でも。


 人を殺すために払った報酬を、裁判所が当然に取り戻してくれる。


 そんな社会も、おかしい。


 かといって。


 弱い立場の人間に圧力をかけ、不法な目的に関係する金を貸させておきながら。


「違法だから返さない」


 という理屈を、無条件に認めるのもおかしい。


 民法は。


 その両方を考えているのです。


「……よし」


 私は鉛筆を握りました。


 そして、最後に一行を書きました。


 ――不法原因給付は「不法な原因」と「終局的な給付」を確認し、返還の可否は受益者側の不法性も見て判断する。


「できました!」


 私はノートを掲げました。


「どうですか!」


 相馬先輩が覗き込みました。


「……長えな」


「えっ!」


「一行に詰め込みすぎだ」


「大事なことが多いんです!」


「もっと短くしろ」


 私は考えました。


 そして。


 もう一行、書き直しました。


 ――不法な給付は原則返らず。ただし、給付の完成と不法性の比較を忘れるな。


「これならどうですか!」


 相馬先輩は、しばらく見つめました。


「……まあ、いいんじゃねえか」


「褒めましたね!」


「気のせいだ」


「またそれですか!」


 私は笑いました。


 でも。


 この一行は、きっと忘れません。


 黒崎の八十万円。


 未登記建物。


 既登記建物。


 そして、最高裁判例。


 全部、この一行につながっているからです。


 ◇


「さて、こはる」


 相馬先輩が立ち上がりました。


「はい?」


「今日の勉強会は終わりだな」


「はい!」


「じゃあ、机を片付けろ」


「……え?」


「六法も棚に戻せ」


「はい」


「床も掃け」


 ……。


 またですか。


「先輩!」


「何だ」


「私、今すごく大事なことを勉強したんですよ!」


「だから?」


「不法原因給付です!」


「知ってるよ」


「ということは!」


 私は箒を指差しました。


「もし先輩が、私に不法な目的で掃除をさせた場合!」


「……は?」


「私は、その給付について返還請求できない可能性があるんです!」


 相馬先輩は、しばらく黙りました。


 そして。


「……何を返してもらうんだ?」


 ……。


 私は止まりました。


「えっと……」


「床から、掃除した埃でも返してもらうのか?」


「……!」


 盲点。


 それは盲点でした。


「そもそも、事務所の掃除のどこが不法なんだよ」


「それは……」


「俺に掃除を頼まれたのが嫌だってだけだろ」


「ぐっ……!」


 片桐所長が、帳簿を閉じました。


「こはる」


「はい」


「七百八条を使う前に、不法な原因があるのか確認しろ」


「……はい」


「なければ、問題にならん」


 ……。


 完敗です。


 相馬先輩が大笑いしました。


「ほらな!」


「何ですか!」


「条文を覚えたばかりの奴ほど、何にでも当てはめたがるんだよ!」


 ……。


 その言葉。


 どこかで聞いたことがあります。


 あ。


 黒崎です。


 民法七百八条を覚えたから。


 自分の借金にも使えると思い込んだ。


 私も今。


 掃除をしたくないから。


 七百八条を使おうとしていました。


 ……。


 規模は違いますが。


 発想は、ちょっと似ています。


「……分かりました」


 私は箒を手に取りました。


「掃除します」


「最初からそうしろ」


「でも先輩!」


「まだ何かあるのか!」


「先輩が私に万年筆をくれるって言った件!」


「あ?」


「さっき、動産の給付の例で渡しましたよね!」


「例え話だろ!」


「でも、実際に引渡しを受けました!」


「だから何だ!」


「返す必要があるか、民法を調べてみます!」


 相馬先輩が、慌てて万年筆を見ました。


「待て待て!」


「何ですか?」


「俺は不法な目的でお前に万年筆をやるつもりなんかねえぞ!」


「じゃあ、七百八条は使えませんね!」


「当たり前だ!」


「では、普通の贈与として有効かどうかを検討しましょう!」


「勘弁してくれ!」


 私は笑いました。


 相馬先輩も、最後には笑いました。


 片桐所長が、静かに言いました。


「こはる」


「はい」


「法律を使って人を困らせるな」


「……はい」


「人を守るために使え」


 私は、万年筆を相馬先輩に返しました。


「分かりました」


 その言葉が、胸に残りました。


 民法七百八条。


 不法原因給付。


 決して、優しいだけの条文ではありません。


 ときには、財産を失った人に対しても、返還を認めない。


 厳しい法律です。


 でも。


 その厳しさが、社会の秩序を守っている。


 そして。


 その厳しさを悪用しようとする人間に対しては、判例の積み重ねが歯止めになることもある。


 私は、ノートを閉じました。


 窓の外。


 夕暮れの町に、家々の明かりが灯っています。


 そのどこかで。


 西村澄江さんは、明日の弁当の仕込みをしているのでしょう。


 新しい冷蔵庫の前で。


 娘さんと一緒に。


 いつものように。


 民法は、教科書の中だけにあるわけではありません。


 八十万円の借金にも。


 一軒の建物にも。


 一本の万年筆にも。


 そして、人の弱さにつけ込もうとする悪意にも。


 その効力が及びます。


 だからこそ。


 条文を一つ知っただけで、すべてを理解したつもりになってはいけない。


 民法九十条。


 民法七百八条。


 昭和二十九年八月三十一日。


 昭和四十五年十月二十一日。


 昭和四十六年十月二十八日。


 それぞれの条文と判例が、少しずつ違う角度から、公平とは何かを問いかけているのです。


「こはる!」


 相馬先輩の声が飛びました。


「はい!」


「ノートを眺めてねえで、掃除しろ!」


「今、復習してたんです!」


「復習は後だ!」


「先輩!」


「何だ!」


「私、今日ようやく分かりました!」


「何がだ!」


「法律って、悪い人を罰するだけじゃないんですね!」


 相馬先輩が、少しだけ真面目な顔になりました。


「……ああ」


「悪いことに関わった人を、どこまで救うべきなのか。その線引きも考えているんですね」


「そうだな」


 私は笑いました。


 そして、箒を動かし始めました。


 不法原因給付。


 返せないものがある。


 取り戻せるものもある。


 その違いは、単に相手が悪人かどうかでは決まらない。


 給付は終わったのか。


 不法な原因はどこにあったのか。


 当事者双方の不法性は、どれほど違うのか。


 それを一つずつ調べる。


 法律とは、そういうものなのです。


 私はノートの最後の一行を、もう一度思い出しました。


 ――不法な給付は原則返らず。ただし、給付の完成と不法性の比較を忘れるな。


 よし。


 完璧。


 ……と思った、その瞬間。


「こはる!」


「はい!」


「その万年筆、まだお前の机にあるぞ!」


 私は、そっと振り返りました。


 机の上。


 黒い万年筆。


 ……。


「あっ」


「返したんじゃねえのか!」


「返したつもりだったんです!」


「引渡しが終わってねえじゃねえか!」


 ……。


 なるほど。


 法律上の給付も。


 掃除も。


 口で終わったと言うだけでは、終わらないことがあるようです。


 私は慌てて万年筆を手に取りました。


「先輩!」


「何だ!」


「今度こそ、お返しします!」


「最初からそうしろ!」


 昭和六十三年。


 片桐行政書士事務所。


 今日の民法も、なかなか手強い相手でした。


 でも。


 これだけは、もう間違えません。


 不法原因給付。


 その条文は、悪党に財産を与えるためのものではない。


 不法な取引に法律の力を貸すべきかどうか。


 その難しい問いに、向き合うための規定なのです。

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