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ぼくは人間を食べない

作者:きなこもち
最新エピソード掲載日:2026/08/04
ゾンビに支配された終末世界。
生き残った高校生・相良隼人は、誰も見捨てられない優しさで仲間たちを導いていた。
一ノ瀬優花里もまた、助かった人より先に、助からなかった人のことを忘れられない少女だった。

そんな二人を、群れの外側から見つめる一体のゾンビがいる。
立花悟。
喋ることのできないその怪物は、人間だった頃の自我だけをわずかに残していた。
そして本能で知っている。
人間を“意思をもって食べれば”、自分の中に残った最後の人間性は崩れるのだと。

だから彼は食べない。
飢えに焼かれながら、誰にも知られないまま、人間たちが食われていくのを見ているだけのはずだった。

だが、隼人たちが何度も死地に追い込まれる中で、悟はついに介入してしまう。
群れの流れを逸らし、見えないところで命を拾い、表の物語から零れ落ちた死を見届ける。
その行動は人間たちには偶然にしか見えない。
ただ一人、優花里だけが気づき始める。
何度も現れるあの一体のゾンビは、何かが違うのではないかと。

拠点崩壊の夜、優花里が群れの中で孤立した時、悟は彼女を食える距離まで近づきながら、それでも噛まなかった。
代わりに群れの前へ立ち、逃げ道を作る。

喋れない。
名乗れない。
人間には見分けてもらえない。
それでも最後まで人間を食べないことで、自分を人間の側につなぎとめようとする怪物の物語。

これは、表の主人公が進むゾンビサバイバルの裏側で、
誰にも知られず命を守り続けた“もう一人の主人公”の記録である。
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