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紅月楼奇譚――歴史に残らなかった恋たち

紅月楼に、最後の灯を。

作者:涼里
最終エピソード掲載日:2026/10/17
戦争が終われば、あなたは帰ってくると思っていた。

一九一七年、上海。
妓楼《紅月楼》を取り仕切る秦月華は、海を渡る男と恋に落ちた。

残されたのは、七通の手紙と「帰る場所」と刻まれた懐中時計。

戦争、革命、そして失われていく命。
帰らない男を待ちながら、彼女は女たちの愛と悲劇を見届けていく。

歴史には残らなかった恋がある。
それでも、確かに愛した人がいた。

激動の近代上海を舞台に描く、美しく残酷な悲恋群像劇。


【時代考証について】

本作は史実を背景にしたフィクションです。中国は一九一七年八月十四日にドイツとオーストリア=ハンガリーへ宣戦を布告しました。中国人労働者は参戦前から連合国側へ派遣され、欧州で輸送・土木・戦場の後方作業などに従事しています。一九一八年十一月十一日に休戦が成立しましたが、労働者全員が直ちに帰国したわけではありません。

一九一八年の世界的なインフルエンザ流行、一九一九年五月四日の北京での抗議運動、六月五日以降の上海での大規模なストライキ、六月二十八日の中国代表団によるヴェルサイユ条約署名拒否は史実に基づきます。

一方、紅月楼、陸承遠、秦月華をはじめとする人物とその個人的な運命、紅月楼の火災や閉楼は創作です。また、当時の中国人労働者の渡航経路や配属先、帰国時期は一様ではなく、承遠の経歴はその歴史的背景を踏まえた架空の設定です。
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