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Hand to Heart 【side A】  作者: 亨珈
霍乱
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【番外小話】青空に恋して

【第105回フリーワンライ参加作】

お題:火と炎/飛べない鳥/青空に恋した月/1人と独りは違う/満員電車

上記より3つ使用。

深夜の真剣文字書き60分一本勝負


今回は加筆なし、時間内に仕上げたものを句読点など微修正しました。

「飛べない鳥は、滅びゆく定めなんかね」


 業間休みに、窓ガラスを開け放ちながら辰史が零した言葉は、生温い風に拡散せず下の植え込みに落ちていった。


「てーと、ドードーとか?」


 世界的に有名なファンタジー小説にも出てくる生き物は確か実在したはず、と周一郎が斜め後ろから辰史を囲うように腕を伸ばして転落防止の柵に手を突くと、空を見上げたまま辰史は体を硬くした。


「ヤンバルクイナとかキウィとかな」

「待て待て、まだ絶滅してねえ」

「鶏はしないだろうな」

「あー。まあ、本人?たちには歓迎しかねる理由でな」


 卵と肉が旨いから、とは口に出さずに、周一郎は怪訝そうにそっと辰史を窺う。

 細い眉のあいだに皺を寄せたのは一瞬、見つめていなければ気付かなかったささやかさで、辰史が憂いていたと知るが、それが何に起因するものかは判らない。

 全館冷暖房管理されている校舎でいつまでも窓を開け放しているのも憚られ、辰史を促して樹脂サッシを閉めたが、その視線がまだ遠くに投げられているのを見て、その先にあるものを探してしまう。


「太陽が空にある時間ってわかりやすいじゃん?」


 外を見たまま問われて、「ま、そうだな」と周一郎は頷いた。

 件の恒星は、自分たちから見てやや左に位置している。


「でもさ、月って夜じゃなくても空にあるだろ。見えにくいだけで」

「おお、今朝も見たな」


 寮から校舎までの短い通学時間に二人で見上げた真白な三日月を思い出す。

 今日の辰史は、言い方が遠回しだ。


「長く空にあるのに、存在感は薄いんだよな」


 そこはかとなくしんみりした様子の辰史は、普段より儚く感じられる。

 朝、確かに見えたはずの月が空に溶け消えてしまったように、朧な存在感。


「恋してるのかもよ、空に」


 囲い込んだまま背後から体を寄せると、辰史は息を呑んだ。


「太陽みたいに自分では輝けないから、せめて少しでも長くいたいんだよ青空に」


 茶化すでもなく、辰史は静かに吐息する。同意のように。

 いつもなら吹き出しているはずの、臭い台詞に。


「青空に恋する月、ってタイトルにしよう」


 くっそさみいポエム、と笑った顔が泣きそうに見えて、このまま抱き締めることができればどんなにか、と周一郎は目を細めた。

 抱え込み漏らさないでいる不安を消してやりたい。けれど、自分はそこまで受け入れられてはいないと知っているからこそ。

 不用意な言葉はかけられない。

 この学び舎から巣立つ際に隣にはいないだろうと予測するからこそ、尚更。

 そばに居たいと思い、欲する、希求するこの気持ちがいちばん不確かであると自覚し、戒めるのだ。


 大丈夫、おまえは一人で立てる。

 独りと一人は違うと、おまえは理解している。一人で立ててこそ、大事なひとに頼ることを自分に許せるから。

 


機会があれば参加させてもらっています。

なるべくお題を沢山消化したいのですが、まだまだですね。

PCがご臨終で、スマホ執筆&投稿になります。

今回は、お題から閃いたのがこの二人だったのでこちらにくっつけてみました。

ストーリーの更新ではなくて申し訳ないです(涙)

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