古城の主 その2
「本日は取材に応じていただき、大変ありがとうございます。」
マイクを持った東洋風のリポーターがクリーグラン氏に感謝の言葉を伝えた。
「ところで、今日はどのようなご用件で?」
「あなたの所有するこの別荘の様子を、ぜひ取材したいと思いまして。」
「それはまた、変わったことを。」
「そうでもないですよ。現在、連載企画『セレブの別荘、そのすべてをご覧に見せましょう!』を始動しようというところでして、記念すべき一人目にはあなたを是非と。」
「なるほど……。私でよければ、どうぞ取材していってください。大歓迎ですよ。」
クリーグラン氏とその秘書、そしてリポーターとカメラマンは城の中に入っていった。
「大層古い建物ですね。」
「えぇ。なんとも、古代からあった洞窟を今現在のような形にしたのだとか。」
「なるほど。妙にところどころ歪んでいるところがあるのはそのせいですか。ところで、お聞きしたいのですが、洞窟っていうことは、かなり奥が深いのでは?」
「そうだな、私もまだ一番奥までは行ったことがないんですよ。」
「では、初公開ということで、今から行ってみませんか。」
クリーグラン氏はしばらく悩んでから、ゆっくりとうなずいた。
城の奥の扉を開くと、そこから先は岩肌の見える洞窟があった。
「意外ですね。電気が通っているのですか。」
洞窟内は裸電球がオレンジ色に照らしていた。
「以前の所有者がそのままにしていたのだろう。いつ崩れるか分からぬものだ。今は業者に耐久工事をお願いしているのだ。だから私はまだ行ったことがないんだよ。」
「そういうことでしたか。何か面白い発見があるといいですね。」
4人はさらに奥へと進んでいく。
しばらく歩くと、木の扉が現れた。
「これは?」
「さぁな?私にも分からん。何しろ、鍵がないんでな。中に入れないんだ。」
「気になりますねぇ。もし、よろしければ、この中に入れることになったら、私たちに連絡をいただけますか?」
「うむ、わかった。」
「本日は本当にありがとうございました。」
取材にきた二人は去っていった。
クリーグラン氏はポケットから鍵を出し、扉を開ける。
教会のようにずらりと長椅子が並ぶ、そしてその奥には、神々しく輝く巨大なクリスタル。
まだ、公表されるわけにはいかないな。
そう、特別な客向けに開催するオークションの日までは……。