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結ばれなかった恋にも、幸せな結末はある。 ~それでも僕たちは、何度でも出会い直す~  作者: なごやかたろう


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17/21

第十七話 本がつないだ一日

文化祭当日。

朝から校舎はいつもとは違う空気に包まれていた。

廊下には色とりどりの装飾が飾られ、生徒たちの笑い声があちこちから聞こえてくる。


「朝倉くん、おはよう。」


図書室へ向かう途中、美月が声をかけた。

今日は制服ではなく、図書委員用の紺色のエプロン姿だった。


「おはよう。」


陽斗は思わず見とれてしまう。


「……似合ってる。」


口から出た瞬間、自分でも驚いた。

美月も少し目を丸くして、それから照れたように笑う。


「ありがとう。」


その笑顔だけで、朝から胸が少し温かくなった。



図書室では、二人で準備した展示がきれいに並んでいた。

『勇気が出る一冊』

『泣きたい日に読む本』

『大切な人を思い出す本』

テーマごとに並べられた本の横には、美月が書いた紹介文と、陽斗が描いた手書きのイラストが添えられている。


「イラスト、かわいいね。」


来場した女子生徒がそう言うと、陽斗は照れくさそうに頭をかいた。


「朝倉くんが描いたんですよ。」


美月が少し誇らしげに紹介する。


「えっ、意外!」

「上手!」


そんな言葉をもらい、陽斗は少し照れる。

その横で、美月は嬉しそうに微笑んでいた。



昼過ぎ。

図書室は思った以上に賑わっていた。


「このしおり、手作りなんですか?」

「はい。」


美月が笑顔で答える。


「一枚ずつ作りました。」

「かわいい!」


小学生くらいの女の子が、黄色いしおりを大事そうに受け取る。


「ありがとう、お姉ちゃん。」


その笑顔を見て、美月も自然に笑顔になる。

その光景を見ながら、陽斗は思った。

(こういう仕事、向いてるんだろうな。)

夢を話していた日のことを思い出す。

『誰かと、本をつなぐ仕事がしたい。』

あの言葉は、本気だった。



午後。

展示を見に来た他のクラスの男子が、美月に話しかけていた。


「水瀬さん、この紹介文書いたの?」

「うん。」

「すごいね。」

「ありがとう。」


楽しそうに話している。

陽斗は少し離れた場所で、本を並べ直していた。

別に、気になるわけじゃない。

そう思う。

でも。

何度も視線がそちらへ向いてしまう。


「朝倉。」


後ろから店主……ではなく、佐々木が肩を叩いた。


「どうした?」

「え?」

「さっきから本、一冊しか並べ替えてないぞ。」

「……そう?」

「そう。」


佐々木はにやりと笑った。


「分かりやすいな。」

「何が?」

「自分で考えろ。」


それだけ言って去っていく。

陽斗はもう一度、美月を見る。

男子生徒と話していた美月が、ふとこちらへ視線を向けた。

目が合う。

その瞬間、美月は「少し待ってて」というように小さく手を振った。

それだけで、不思議と胸の中のもやもやが消えていく。

(……何だったんだ、今の。)

自分でも理由は分からなかった。


文化祭が終わり、夕方。

図書室には静けさが戻っていた。


「終わったね。」


美月が大きく息をつく。


「疲れた。」

「でも、楽しかった。」

「うん。」


机の上を見ると、手作りのしおりはほとんどなくなっていた。


「全部、誰かの本に挟まるんだね。」


陽斗がぽつりと言う。

美月はその言葉に頷いた。


「そう思うと、嬉しい。」

「誰かが本を開くたびに。」

「今日のことを思い出してくれたらいいな。」


その言葉に、陽斗はふとポケットへ手を入れた。

そこには、美月が作ってくれたしおりが入っている。

(これは、俺だけの一枚なんだ。)

そう思った瞬間だった。

ようやく気づく。

自分にとって、美月はもう「クラスメイト」ではない。

「特別」な存在になっている。

でも、その気持ちに名前を付けるには、まだ少しだけ勇気が足りなかった。



その夜。

美月は日記を開いた。

六月二十八日。

文化祭が終わった。

朝倉くんが「似合ってる」って言ってくれた。

たった一言なのに、一日中嬉しかった。

私って、本当に単純だ。

でも、今日分かったことがある。

朝倉くんが笑っていると、私も笑ってしまう。

そんな一日が、これからも続いたらいいのに。

そう思ってしまった。

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