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式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第十二章 終わりの始まり
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四 中宮不在の宮中

 水無月(六月)


 顕子が里下がりして、既に半月が経っていた。

 弘徽殿(こきでん)の主は不在。


 静かだった。


 (みかど)は、時折弘徽殿を訪れた。

 しかし、そこに顕子はいない。


 わかっていても、訪ねる。


 顕子の気配を求めて。

 残り香を求めて。


 女房たちが、恐縮しながら帝を迎える。


「顕子は、元気にしているだろうか」


 帝は、誰に言うでもなく呟いた。


「はい」


 女房が答える。


「右大臣邸より、毎日のように(ふみ)が参ります」

「お元気にお過ごしとのことです」


「そうか」


 口々に言う女房たちに、帝は微笑んだ。


「それは、よかった」


 帝は、弘徽殿を出た。

 そして、麗景殿(れいけいでん)に向かった。


 顕子が不在の今、帝は麗景殿を訪れることが多くなった。

 源潔子(みなもとのゆきこ)と話す時間が、増えた。


「潔子」

「はい、主上」


 潔子は微笑んだ。


「顕子が、里下がりしている」

「はい」


「少し、寂しいな」


 帝は正直に言った。

 潔子は、優しく微笑んだ。


「中宮様は、きっと無事に御子をお産みになられます」

「そうだな」


 帝は、頷いた。


「待つしかないな」


 帝と潔子の間に、静かな時間が流れた。

 信頼と、愛情。


 二人の間には、確かにそれが育っていた。


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