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式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第十二章 終わりの始まり
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三 産屋

 右大臣邸の一角に、産屋が設えられていた。


 白い幕で囲まれた、清浄な空間。

 新しい(たたみ)が敷かれ、白い帳が張られている。


 すべてが、白。


 穢れを避けるため。

 新しい命を迎えるため。


 顕子は白装束に着替えた。

 そして、産屋に入った。


 次子は常に側にいた。


「中宮様、お体の具合は如何(いかが)ですか」

「ええ、大丈夫」


 顕子は微笑んでみせた。

 しかし、不安そうだった。


 腹は、大きく膨らんでいる。

 中の子が、時折動く。


 顕子は優しく、腹を撫でた。


男子(おのこ)だろうか)

女子(めのこ)だろうか)


 顕子は、自問した。

 答えはまだわからない。


 だが、どちらであるかで未来が決まる。

 運命の子だ。


 次子(なみこ)が、顕子の手を取った。


「中宮様、大丈夫です」

合歓(ねむ)……」


「私が、お側におります。お守り致します。必ず」


 次子の手は温かかった。

 顕子は、少し安心した。


 そして同時に、自分の手が冷え切っていたことに気付いた。


(無事に生むために、私が健康であらねば――)

(強く、あらねば――)



 産屋の外。


 道顕は、産屋を遠くから見ていた。

 近づくことは、できない。


 産屋は穢れの場所。

 男子、特に位の高い者は近づいてはならない。


 道顕は、ただ待つしかなかった。


 男子が産まれることを。


 すべてが、それにかかっている。


 道顕は、拳を握りしめた。


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