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式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第十二章 終わりの始まり
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一 時の流れ

 如月(二月)が過ぎ、弥生(三月)に入った。


 春が来た。


 梅の花が咲き、(うぐいす)が鳴く。

 庭先には若草が芽吹き始め、風が少しずつ柔らかくなっていく。

 甘く淡い香りが漂う。


 しかし、藤原真薫(ふじわらのちかゆき)の心は、春の訪れを喜ぶ余裕などなかった。


 緊張していた。

 いや、緊迫していた。


 藤原道顕(ふじわらのみちあき)との、最後の戦いが近づいている。


 それを、真薫ははっきりと感じていた。


 肌が粟立つような予感。

 嵐の前の、静けさ。


 式部省で文机に向かっていても、筆先が震える。

 文字が、まっすぐに書けない。


 真薫は、何度も深く息を吐いた。


(いつか、必ず)


 そう誓ってきた日々。

 その「いつか」が、今、目の前に迫っている。



 弥生が過ぎ、卯月(四月)

 桜が散り、若葉が萌え、世界が緑に染まっていく。


 そして、皐月(五月)

 (たちばな)の花の、甘く爽やかな香りが宮中に満ちる。


 弘徽殿(こきでん)中宮顕子(あきこ)の出産が、近づいていた。


 宮中全体が、息を詰めて待っている。


 男子(おのこ)か、女子(めのこ)か。


 その答えが、すべてを決める。



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