表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第十一章 春の訪れ
91/100

九 記録する者

 夜更け。


 真薫(ちかゆき)は、再び裏帳簿を手に取っていた。

 一冊一冊、確かめるように頁を繰る。


 文字は淡々としている。

 感情は、極力排している。


 それでも――そこに記された事実は、重い。


 真薫は、最後の帳簿を閉じ、手箱に戻した。

 蓋を閉める音が、静かな部屋に響く。


(準備は、できている)


 そう思う一方で、理解している。


(まだ、動けない)


 だが、独りではない。


 定明がいる。

 逃げずに立つと、そう言った。


 顕実とも、かろうじて繋がっている。

 それが、どれほど危ういものであっても。


 真薫は、庭へ視線を向けた。


 如月の月は、冴え冴えと冷たい。

 春の気配など、まだ微塵もない。


 それでも――。


(嵐は、近い)


 風が、簀子縁を撫でて通り過ぎる。

 冷たいが、確かな手応えがあった。


 真薫は、立ち上がった。


(記録する者は、待つことも仕事だ)


 だが、その時が来たなら――

 必ず、動く。


 そう静かに誓い、真薫は夜を見据えた。


 春は、まだ来ない。

 だが、来ることだけは疑いようがなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ