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七 定明の気付き
真薫は、定明と合流した。
式部省から朱雀門へと歩きながら、会話する。
「定明殿」
「何でしょうか」
「あなたは、呪詛の本質を見抜きました」
真薫は、定明を見た。
「それは、すごいことです」
「いやあ……」
定明は、首を振った。
「僕は、ただ見たままを言っただけです」
「呪詛は恐ろしいが、道具に過ぎない。本当に恐ろしいのは、人の心に植え付けられた恐怖だと、あなたは言った」
「はい。その通りです」
定明は、真薫を見た。
定明は、かつて自分も恐怖に縛られていたことを思い出していた。
だからこそ、萩野の眠りが他人事ではなかった。
「真薫殿、私は思います。呪詛を調べることも大切です。僕たち陰陽師の本分です。――ですが、人の心を理解することの方が、もっと大切だと……僕は思う」
真薫は、頷いた。
「その通りです」
「だから……」
定明は、微笑んだ。
「僕は、これからも人の心に寄り添いたいと願っています。無論のこと、本分である呪詛を解くことを疎かにはしません。ですが、恐怖から人を救うことも大切だと」
真薫は、定明の成長を感じた。
(定明殿は、変わった)
(光保殿と保規殿の死を乗り越えて)
(強くなった)
真薫は、微笑んだ。
「定明殿。これからも一緒に、頑張りましょう」
「はい」
定明は、力強く頷いた。




