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式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第十章 誤差
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六 兼遠の分析

 式部省。


 藤原兼遠(ふじわらのかねとお)が、真薫を呼んだ。


「真薫くん」

「兼遠様」


「萩野殿が、回復しているそうだね」

「はい」


 真薫は頷いた。


「定明殿の診断では、もう大丈夫だと」


「そうか」

 兼遠は、微笑んだ。

「よかった」


 兼遠は、御簾の向こうに視線をやる。

 少し遠い目をしていた。


「道顕様は、萩野殿のことを忘れているだろう。もう盤上から消えたとさえ、思っているはずだ」


「......はい」

「しかし、それが誤算だ」


 兼遠は真薫を見た。


「誤算……」

「ああ」


 そして頷いた。


「萩野殿は生きている。そして、回復している。それが潔子様の心の支えにも、なっているだろう。――これは、道顕様の計算にない事態だ」


 兼遠の目が、鋭くなった。


「道顕様は、人の感情を軽視している。駒として使い、使い終われば忘れる。だが――人は駒ではない。人の繋がりは、計算できない」


 ゆっくりと噛んで含めるように、兼遠は言う。

 真薫は、息を呑んだ。

 兼遠は不敵に微笑んでみせた。


「萩野殿と潔子様の繋がり。顕子様と潔子様の友情。これらは、道顕様の計算を超える。いつか、それが道顕様を追い詰めるかもしれない」


 真薫は、兼遠の言葉に希望を感じた。


「だからこそ、記録を続けろ」


 兼遠は、真薫の肩を叩いた。


 兼遠は、言葉にする前に一度だけ目を伏せた。

 それは希望ではなく、長年耐えてきた者の確信だった。


「人の繋がりを信じろ。それが、私たちの武器であり、強さだ」


 真薫は、頷いた。



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