八 寄り添う者
麗景殿。
顕子が到着すると、女房たちがざわめき、驚いた。
顕子をなんとか押し留めようにも、あまりの迫力に畏れ入って、右往左往するだけだ。
「中宮様……」
「女御様は、どこ?」
「その……御寝所の、中に……」
顕子は、局に入った。
潔子が、衾を被っている。
こんもりと、大きな猫が丸まっているようだった。
「潔子様」
顕子は、優しく声をかけた。
潔子は小さく肩を震わせる。
「……誰……?」
「私よ。顕子です」
顕子は、潔子の側にそっと座った。
「中宮様……?」
「衾を取って」
「でも……」
「大丈夫」
顕子は、優しく言った。
「会いに来たのよ」
潔子は、ゆっくりと衾から顔を出した。
涙に濡れた顔が、現れた。
「中宮様……」
潔子は、泣いていた。
顔は青白く、目は赤く腫れている。
「辛かったのね」
顕子は、潔子の手を取った。
冷たい手だった。
「はい……」
潔子は、震えながら言った。
「誰も信じられなくて……萩野にも会えなくて……そして、帝に会うのが、怖くて……」
潔子は、泣き崩れた。
「わかるわ」
顕子は、潔子を抱きしめた。
「私も、最初はそうだった」
顕子の声も、震えていた。
「入内したとき、誰も信じられなかった。父は、冷酷な権力者。だから、誰もが私を警戒した。――そして、誰もが私を利用しようとした」
顕子は、潔子の髪を撫でた。
「でも、潔子様」
顕子は、潔子の顔を見た。
「あなたは、一人ではない。私が、ここにいる。――私を、信じて」
潔子は涙に濡れた目で、顕子を見た。
潤んだ眸が頼りなげに揺れている。
「本当に……?」
「本当よ」
顕子は、微笑んだ。
「私は、あなたの味方。父がどう言おうと。あなたの叔父上様がどう言おうと」
顕子の声が少しだけ、揺れた。
「私は、あなたの味方でいるわ。――信じて」
潔子は、顕子の手を握りしめた。
「ありがとう、ございます……」
潔子は、顕子の肩に顔を埋め、声を上げて泣いた。
次子も、涙を浮かべて見守っていた。




