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七 中宮、動く
弘徽殿。
中宮顕子は、大江次子——合歓の君から報告を受けた。
「中宮様、麗景殿女御様が......」
「どうしたの」
「帝に会いたくないと、衾を被って引き籠もっているそうです」
顕子は、驚いた。
「何ですって?」
「おそらくは、精神的に追い詰められてのことかと……」
次子は、悲しそうに言った。
「誰も信じられなくて。――そして、帝に会うことが、怖くて」
顕子は、拳を握りしめた。
強く、唇を噛む。
「潔子様……」
顕子は、すっくと立ち上がった。
袿の裾が翻る。
「私が、行く」
固い決意が、その眸に宿っていた。
「中宮様?」
次子が驚き、目を瞬いた。
「潔子様に、会いに行く」
顕子は宣言する。
「もう、誰かを待ってはいられない。私が、助ける」
次子は、涙を浮かべた。
「中宮様……」
「合歓、一緒に来て頂戴」
「はい! 仰せのままに」
顕子と次子は、麗景殿へ向かった。




