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六 計算通り
右大臣邸。
藤原道顕は、この状況を知り、大いに笑った。
「麗景殿女御が、帝を拒んでいるのか」
道顕は、盃を傾けた。
「ふふ……完璧だ」
息子顕実が、訊いた。
「父上、これは……」
「策略だ」
道顕は、にやりと笑った。
「私が何もしなくても、源潔子は自滅してくれる」
道顕は、盃を置いた。
「潔子の側仕えの、腹心の女房を害し、恐怖を与えた」
楽しげに、笑う。
「左大臣は、私を警戒しすぎて、潔子を孤立させた。そして、潔子は精神的に追い詰められ、帝をも拒んだ」
道顕の目が、光った。
「すべて、計算通りだ」
顕実は、戦慄した。
(父上は、ここまで……)
顕実は、拳を握りしめた。
(萩野を害したのも、すべて、この結果のためだったのか……?)
(父上は、どこまで見通しておられるのだ……)
顕実は、初めて自分の父のことが、心底恐ろしく感じられた。




