68/100
五 善意の刃
源基隆邸。
女房から、基隆に火急の報せが届いた。
「潔子様が、帝に会いたくないと仰っているようです」
基隆は、驚愕した。
あまりの驚きに、基隆は持っていた書簡を取り落とした。
「何、だと?」
「体調が悪いと仰って、衾を被って出てこないそうです」
基隆は、頭を抱えた。
「まずい……。これは、まずい」
基隆は、慌てて側近たちに召集をかけた。
「潔子が、帝を拒んだ」
側近たちは、皆一様に青ざめた。
「それは……」
「帝の御威光が……地に落ちてしまうではないか」
基隆は、苦しそうに言った。
「そして、我々も……」
「どうなさいますか」
「潔子を、説得するしかない」
基隆は、立ち上がった。
「しかし、我々が会いに行っても、潔子は会わないだろう。
――誰も信じるなと、私が言ったのだから……」
基隆は、そこでようやく、自分の失策に気づいた。
「私が……」
基隆の声が、震えた。
「私が、潔子を追い詰めたのか……」
側近たちは、何も言えなかった。




