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式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第九章 絡まる糸
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一 冬の兆し

 神無月(十月)が過ぎ、霜月(十一月)に入った。


 冷たく乾いた風が吹き抜けた。

 秋が、終わろうとしている。


 宮中は、冬の気配に包まれていた。


 藤原真薫(ふじわらのちかゆき)は、式部省で仕事をしながら、宮中の様子を観察していた。


 最近は、怪異雑掌(かいいざっしょう)の仕事も大人しいものだ。


 定明(さだあきら)とも十日以上会っていないが、元気にしているだろうか。

 また、塞ぎ込んでいないといいのだけれど……。



 源潔子(みなもとのゆきこ)が入内してから、一月以上が経った。


 しかし潔子は相変わらず、誰とも会っていないようだった。


 (みかど)にさえも、会っていないという噂だ。


(どうなっているのか……)


 真薫は、不安というより、心配が勝った気持ちでいた。



 麗景殿(れいけいでん)


 潔子は、一人(しとね)に座っていた。


 外を見る。


 庭の木々は鮮やかに色づいている。

 赤や黄色に色付いた紅葉が艶やかで、美しかった。

 しかし潔子の心は、どんよりと重く、暗いままだ。


 入内してから、誰ともまともに会話をしていなかった。


 左大臣派の者たちは、「誰も信じるな」と言う。

 中宮顕子にも、会うなと言われた。


(私は、何のために、ここにいるのかしら)


 潔子は、崩折(くずお)れるようにうつ伏せた。


 泣き喚きたかった。

 泣き喚いて、童のように暴れて、不満も不安も吐き出したかった。

 生まれ育った屋敷に帰りたかった。

 父が居て、母が居て。萩野が居て……。


 もう戻らない日々が、ひどく愛おしく感じられた。



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