一 冬の兆し
神無月が過ぎ、霜月に入った。
冷たく乾いた風が吹き抜けた。
秋が、終わろうとしている。
宮中は、冬の気配に包まれていた。
藤原真薫は、式部省で仕事をしながら、宮中の様子を観察していた。
最近は、怪異雑掌の仕事も大人しいものだ。
定明とも十日以上会っていないが、元気にしているだろうか。
また、塞ぎ込んでいないといいのだけれど……。
源潔子が入内してから、一月以上が経った。
しかし潔子は相変わらず、誰とも会っていないようだった。
帝にさえも、会っていないという噂だ。
(どうなっているのか……)
真薫は、不安というより、心配が勝った気持ちでいた。
麗景殿。
潔子は、一人茵に座っていた。
外を見る。
庭の木々は鮮やかに色づいている。
赤や黄色に色付いた紅葉が艶やかで、美しかった。
しかし潔子の心は、どんよりと重く、暗いままだ。
入内してから、誰ともまともに会話をしていなかった。
左大臣派の者たちは、「誰も信じるな」と言う。
中宮顕子にも、会うなと言われた。
(私は、何のために、ここにいるのかしら)
潔子は、崩折れるようにうつ伏せた。
泣き喚きたかった。
泣き喚いて、童のように暴れて、不満も不安も吐き出したかった。
生まれ育った屋敷に帰りたかった。
父が居て、母が居て。萩野が居て……。
もう戻らない日々が、ひどく愛おしく感じられた。




