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七 兆しの胎動
その頃、弘徽殿では。
顕子の懐妊が、正式に確定した。
帝は、大いに喜んだ。
「顕子、よくぞ」
帝は、顕子の手を取った。
「我が子を身籠ってくれた」
顕子は、微笑んだ。
「恐れ多いことでございます」
しかし、顕子の心は複雑だった。
(男子か、女子か)
顕子は、わからなかった。
(もし、女子なら......)
(父上は、失望するだろう)
(そして、源潔子が......)
顕子は、お腹に手を当てた。
(どちらなのか)
(……わからない)
顕子は、不安だった。
そんな中、道顕が上機嫌で弘徽殿を訪れた。
「顕子様」
「父上」
顕子は、顔を上げた。
今にも声を上げて笑い出しそうな、道顕がいた。
「よくやった」
道顕は、にやりと笑った。
「男子に違いない」
断言する父に、顕子は沈黙するしかない。
「これで我が一族の繁栄は、約束されたようなものだ」
道顕は、顕子の肩を叩いた。
「よくやってくれた!」
顕子は、何も言えなかった。
(しかし、もしも、女子だったら......)
(父上は、どうするのか)
顕子は、ひとり、震えるしかなかった。




