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式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第八章 御門の内
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六 策の中枢

 右大臣邸。


 藤原道顕は、息子顕実(あきみつ)を呼んでいた。


「顕実」

「はい、父上」


「源潔子が、孤立しているそうだな」


 道顕は、にやりと笑った。

 顕実は、頷いた。


「......はい」


「左大臣派が、警戒しすぎて、誰も潔子に近づけないようにしているとか」


「そのようです」


「ふふ......」

 道顕は、笑った。

「愚かな」


 道顕は、盃を傾けた。


「自分たちで、潔子を孤立させている。我々が何もしなくても、左大臣派が勝手に自滅してくれる」


 道顕は、顕実を見た。


「これが、策略だ」

 道顕の目が、光った。

「相手を疑心暗鬼にさせれば、勝手に自滅する。私は、何もしていない」


 道顕は笑って盃を干す。


「ただ、恐怖を与えただけだ。女房を一人害しただけで、左大臣派は怯えている。そして、誰も信じられなくなった」


 道顕は、笑った。


「潔子は、孤立する。孤立すれば、帝の寵愛を受けることもない。そうなれば、潔子は無用の存在となる」


 顕実は、何も言えなかった。


(父上は……)


 顕実は、思った。


(どこまで計算しているのか)

(潔子付きの女房を害したのも、すべて計算のうちか)


 顕実は、戦慄した。

 道顕は機嫌よく続ける。


「そして、顕子が男子を産めば、すべては完璧だ」


 道顕の目が、さらに光った。


「我が一族の繁栄は、約束される。源氏など、恐れるに足らぬわ!」


 顕実は、頷いた。

 しかし、心の中では、疑問が湧いていた。


(本当に、これでいいのか)

(多くの者が、犠牲になっている)

(萩野という女房も、潔子様も、顕子姉上も)


(そして、真薫も......)


 顕実は、拳を握りしめた。



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