六 策の中枢
右大臣邸。
藤原道顕は、息子顕実を呼んでいた。
「顕実」
「はい、父上」
「源潔子が、孤立しているそうだな」
道顕は、にやりと笑った。
顕実は、頷いた。
「......はい」
「左大臣派が、警戒しすぎて、誰も潔子に近づけないようにしているとか」
「そのようです」
「ふふ......」
道顕は、笑った。
「愚かな」
道顕は、盃を傾けた。
「自分たちで、潔子を孤立させている。我々が何もしなくても、左大臣派が勝手に自滅してくれる」
道顕は、顕実を見た。
「これが、策略だ」
道顕の目が、光った。
「相手を疑心暗鬼にさせれば、勝手に自滅する。私は、何もしていない」
道顕は笑って盃を干す。
「ただ、恐怖を与えただけだ。女房を一人害しただけで、左大臣派は怯えている。そして、誰も信じられなくなった」
道顕は、笑った。
「潔子は、孤立する。孤立すれば、帝の寵愛を受けることもない。そうなれば、潔子は無用の存在となる」
顕実は、何も言えなかった。
(父上は……)
顕実は、思った。
(どこまで計算しているのか)
(潔子付きの女房を害したのも、すべて計算のうちか)
顕実は、戦慄した。
道顕は機嫌よく続ける。
「そして、顕子が男子を産めば、すべては完璧だ」
道顕の目が、さらに光った。
「我が一族の繁栄は、約束される。源氏など、恐れるに足らぬわ!」
顕実は、頷いた。
しかし、心の中では、疑問が湧いていた。
(本当に、これでいいのか)
(多くの者が、犠牲になっている)
(萩野という女房も、潔子様も、顕子姉上も)
(そして、真薫も......)
顕実は、拳を握りしめた。




